今春入社の新入社員、エントリー社数は10年前の約半分。 内定獲得社数は微増しており、“売り手市場”傾向が鮮明

就職活動にて「エントリーした社数」「選考に参加した社数」「内定を獲得した社数」を訊ねたところ、エントリー社数は平均26.7社(2013年卒比▲25.4社)、選考参加社数は平均14.7社(同▲8.4社)、内定獲得社数は平均2.5社(同+0.5社)。10年前の就職活動生(2013年卒)に比べ、エントリー社数は半減している一方で内定獲得社数は微増しており、応募者優位のいわゆる“売り手市場”の傾向を示している。
(就職活動量(平均) [2013年卒と2023年卒の比較] 参照)

就職活動のキックオフは、「就職情報サイトのオープン→合説参加」から 「夏インターン」へ

今春入社の新入社員(2023年卒)と10年前(2013年卒)では、就職活動のスタート時期についても明確な差がみられた。ニュース等では、企業の採用広報活動の開始日=就職活動が本格的に始まる日として報じられているが、「いつから就職活動を始めたか?」を訊ねた結果が以下となる。

10年前(2013年卒)は、企業の採用広報が始まってから就職活動を始めた学生が6割近く(56.3%)を占めるが、今春入社の新入社員(2023年卒)では、約9割(85.4%)が企業の採用広報が始まる2ヶ月以上前から就職活動を始めており、現在では、企業の採用広報活動の開始日=就職活動が本格的に始まる日ではないことがわかる。
(就職活動を始めた時期 [2013年卒と2023年卒の比較] 参照)


弊社の考察 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2013年卒の新卒採用は、金融危機~世界的な経済の後退から回復へ向かう直前におこなわれ、大卒求人倍率*1は1.27倍。他方、2023年卒の新卒採用は、コロナ後を見据えて各社の採用意欲が回復し、大卒求人倍率は1.58倍。就職活動量の差には、いわゆる“買い手市場”か“売り手市場”かの違いが明確に表れていますが、さらに、この10年で就職活動が大きく様変わりしたことも影響していると思われます。

10年前、「就職情報サイトのオープン」と、その後すぐ開催される「合同企業説明会に参加すること」が、就職活動の“キックオフ”の位置づけでした。その後、幅広い業界の企業にエントリーし、オープンセミナー(選考に関係のないイベント)に参加し、徐々に志望業界を絞り込んでいく――本格的な採用活動が始まったあとに、就活を通じて自身の志向を考え、志望業界を変更する時間的な余裕があったといえます。対して、現在の学生にとっては、夏・秋に数社のインターンシップに参加することが就職活動のキックオフ。本格的な採用活動が始まる前に志望業界を絞り込み、その業界の選考にのみ参加する“狙い撃ち”の就活が一般的となっています。

入社式から10日ほど経ち、そろそろ各部署にて新入社員を迎える頃かもしれません。今春入社の新入社員には、コロナ禍の影響で、企業とのリアルな接点が少ないまま入社している方も多くいらっしゃいます。先に述べたように“狙い撃ち”の就職活動ゆえ、入社後のギャップがあった際、より不安や迷いが生じやすいという懸念もあります。新しい仲間として、一人ひとりの入社者に対し、成長をサポートする指導や声掛けを丁寧におこない、入社後の定着、そして活躍のための取り組みが求められるといえそうです。


《就職活動のイメージ(単純化したもの)》
10年前(2013年卒)
▼12月1日に就職情報サイトがオープン
▼合同企業説明会に参加(就活のキックオフの位置づけ)
▼企業が開催するオープンセミナー(選考に関係のないイベント)に参加し、幅広い業界にエントリー
▼選考を通じて、徐々に業界・企業を絞り込んでいく

今春入社(2023年卒)
▼夏・秋に開催されるインターンシップ(1dayインターンシップ等)にいくつか参加(就活のキックオフの位置づけ)
▼3月1日より前に、志望業界・志望企業を絞り込む
▼ある程度絞り込んだ企業にのみエントリーし、選考に参加


*1 リクルートワークス研究所「ワークス大卒求人倍率調査」より
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調査概要;
内容 就職活動に関するアンケート
対象 ヒューマネージが提供する採用管理システム『i-web』ご利用企業様の内定者の方々
有効回答数 2013年卒:4,505名 2023年卒:8,447名
就職活動は10年で様変わり。「スタート後に幅広く見て絞り込む」から「スタート前に絞り込んで狙い撃ち」へ