ソフトバンク株式会社
情報システム統括 業務改革統括部 統括部長
(元SBアットワーク株式会社 取締役COO)
正岡 聖一 氏
2015年5月1日付けでソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社) 情報システム統括へ異動、7月1日より現任
ソフトバンク株式会社 情報システム統括 業務改革統括部 統括部長
(元SBアットワーク株式会社 取締役COO)
正岡 聖一 氏
我々が目指すのはモバイルインターネットNo.1のコア企業になることです。そのための方針として、全社員が最新のICTを活用し、新たな価値を生み出す、「スマート経営」を掲げ、取り組んでいるところです。
「スマート経営」には4つの戦略があります。「営業開発戦略」「事業開発戦略」「コスト削減戦略」「オープン組織戦略」です。我々管理部門は特に「コスト削減戦略」と「オープン組織戦略」の2つに取り組んでいます。スマート経営実現に向けては、3つの視点をおきました。「ユーザーファースト」「管理職の時間負担の軽減」「いつでも・どこでも」、この3つです。こちらについては後ほどご説明します。
まず、私が取締役COOを務めていたSBアットワークについて説明したいと思います。同社はもともとはソフトバンクの総務人事部門でした。1999年にソフトバンクの4つの主要部門──流通事業部門、出版事業部門、情報システム部門、財務経理部門が分社独立した際、総務人事部も分社するのが戦略的にいいだろうということになり、誕生したのがSBアットワークです。
SBアットワークが、何をやっているかといいますと、国内のグループ企業50社、約3万人に対して給与、社会保険、福利厚生、安全衛生などの分野を軸に人事業務の仕組みやサービスを提供しています。外からグループ全体の人事サポートをしている会社ということになります。
それでは、本日のテーマである新しいマネジメントのあり方と人事イノベーションの話に入っていきたいと思います。
SBアットワークが運用している人事システムは「人事業務の低コスト運用」「エンドユーザーの使いやすさ」の2つを主眼に設計されています。エンドユーザーというのは社員です。一般社員もいれば管理職もいます。システムを運用するSBアットワークの社員も含まれます。そういった人達を総合的に捉えてエンドユーザーといっています。
まずは「人事業務の低コスト運用」について説明します。 当社は、グループ各社から費用をいただいてサービスを提供しています。コストを削減して欲しいという声はグループ各社から毎年のように上がります。 一方、会社の新設・再編・買収の時には、1か月後には社員がいるので給与を支払えるようにして欲しいといった声が上がり、迅速な対応が求められます。 また、我々のグループは事業が多岐に渡り、人事制度もさまざまです。そのため、多制度への対応も求められます。 多制度への迅速な対応という要求と、コスト削減という要求は、当然、相反するものとなります。
もともとSBアットワークは7,000人くらいを対象にサービスを提供していましたが、グループが急成長して今では約3万人を対象にサービスを提供しています。 対象者が少ないうちは、もとからあったソフトバンクの大きなシステムをうまく活用し、それにSBアットワークの小さなシステムを加え、2系統で運用していました。 一時はそれでよかったのですが、大きなシステムは大きなシステムで融通が利かなくなってきました。たとえば、1社スタートアップするのに費用が600万円くらいかかるわけです。一方、小さいシステムは小さいシステムで、多制度に対応するのが難しく、両方とも使いにくいという状況が見られるようになってきました。 それに2系統ですから、そもそも運用費用が2倍かかります。やはりシステムを一本化していくしかないということになりました。
新しいシステムを導入するに当たって、3社ほどコンペをしました。
導入するに当たっては、3つのポイントを考慮しました。まず第一には、もちろん、エンドユーザが使いやすいこと。第二に、他のシステムと連携しやすいこと。人事システムは、給与や人事マスタなどさまざまなアプリケーションが繋がっており、そこから人事以外のシステムとも繋がっていますので、ここもポイントになりました。そして第三に、導入・運用費用です。切替えの費用だけではなく、その後の保守費、運用費がどの程度になるかということもポイントでした。
こうして、新しいシステムに切替えた結果、2つのシステムを1つにしたので、そもそも運用費は半分になり、効率的な業務の組み換えにより、さらにその半分になりました。
また、新企業設立時などのサービスインまでの期間についてはそれまで3か月以上かかっていたものが最短1か月で済むようになりました。初期費用も100万円まで下がりました。今、50万に下げることを目標にさらに改善しているところです。
当初の狙いどおり、エンドユーザーの使いやすさという点でも、満足のいくものになりました。
エンドユーザーの使いやすさを考える際、「いつでも、どこでも」は避けて通れないキーワードです。 第一に、システム稼働時間を限りなく24時間に近付けました。人事システムは大元になる情報を持っていることもあり、他のシステムとの連携もありますので、24時間稼働させるのは非常に難しいことです。2012年の導入当初は、コスト面も考慮し、午前0時から8時までは利用不可として、ここでバッチ処理をしてデータを連携させていましたが、ソフトバンクの米国進出をきっかけに、時差のある勤務地のスタッフのニーズにも応えなければならない、と考え、2014年からは午前1時からの15分間だけ止める形にもっていきました。これは相当工夫しました。裏でバッチ処理をしてデータを連携させ、フロントのシステムは動いている、つまりエンドユーザから見ると常時稼働している、という様にして使い勝手を良くしたのです。もちろんコストは増やしていません。
次に、スマートフォン・スマートパッド対応による隙間時間の有効活用を考えました。 グループ内にはさまざまな職種の方がいます。それぞれ移動時間や待ち時間などの隙間時間があります。しかし、それまでは休暇申請などの入力や、それに対する承認といったものは会社に戻り、イントラネットで行うしかありませんでした。場所が、そして付随的に時間も限定されるわけです。スマートフォン・スマートパッド対応にすることで、どこでも、そしていつでも、入力・承認が可能になり、社内では本来の業務に集中できるようになりました。
これによる効果を検証してみたのですが、利用率が6割程度としても、43万件/月のトランザクションが隙間時間で完了しています。これは2,583時間/月の効果ということになります。社員の平均人件費が700万円くらいの会社なら年間約1億円の生産性が向上している計算になります。
2015年5月1日付けでソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社) 情報システム統括へ異動、7月1日より現任