株式会社すかいらーく 執行役員
人財本部 マネージングディレクター
櫻井 功 氏
櫻井功氏は、株式会社三和銀行、日本GE株式会社、シスコシステムズ株式会社(当時)、HSBC Japan など、内外資大手複数企業の人事において人事制度改革、タレントマネジメント、組織開発などのプロジェクトをリードしてきた。現在はすかいらーくにおいて大規模な人事制度改革、人事プロセス改革を推進している。
株式会社すかいらーく 執行役員 人財本部 マネージングディレクター 櫻井 功 氏
モデレーター 中央大学大学院 戦略経営研究科(ビジネススクール)客員教授 楠田 祐 氏
(協賛:コーナーストーンオンデマンドジャパン株式会社)
激化する外食産業において時価総額がトップのすかいらーく。MBOで上場を廃止した2006年9月以来、約8年8カ月ぶりに再上場したすかいらーくグループはこの数年来、勝つための戦略人事に取り組んでいます。
従来の日本型の人事採用システムを活かしながら、新たにグローバルで戦うための視点を取り入れて人材採用をおこなってゆく。そこで考えられる独自の評価ポイントの導入やモチベーションアップのための施策、そしてリテールビジネスにおける成果のある人材の配置をおこなうにはなにをどのようにしていけばいいのでしょうか?
人事部門として客観的にグループ全体の課題を把握し、また最終的に実際に来店する顧客の笑顔を見るために。的確かつ総合的に、今後の課題を見極めてゆく視点を理解していただきたいと思います。
戦略人事という大げさなことをいうよりも、まずはすかいらーくという会社がどういったことをやっているかということについてお話をさせていただきたいと思います。すかいらーくという名前よりは、ガストとかジョナサンというブランドで我々を知っていただいているかなと思いますし、ある程度年配の方であれば、昔、すかいらーくというブランドのレストランも多数持っていましたので、すかいらーくという名前の認知度は高いのかと思っております。すかいらーくという会社は上場会社でしたが、一旦は上場廃止をして、昨年の10月9日にめでたく再上場させていただいた、その道のりと、これからの先をお話させていただいたうえで、人事の施策のお話をさせていただきたいと思います。
すかいらーくは、昔はファミレス御三家として有名な会社でございました。デニーズ、すかいらーく、ロイヤルホスト、この三つがほとんど同時期に創設されまして、日本の道路網の整備とモータリゼーション、核家族化、食の欧米化などを背景に、同じタイミングで拡大していったのがファミレスの歴史でございました。ロイヤルホストさん、デニーズさんは単価の高いほうに進んでいかれましたし、我々はガストを中心としたバリューゾーンと呼ばれているところに特化した戦略で、差別化をしてまいりました。当初、欧米から学んで広げたビジネスであったのですが、残念ながら規模を拡大していく中で業績が悪化していったというのが2008年以前のことです。店舗を開けば開くほど、一時的な売り上げは増えるけれど、製品・サービスの品質が追い付かず、結果的には赤字店舗も発生し全体収益を圧迫する。そして不採算店舗を多く抱えるということが起こってまいりました。同時に、窮地を脱するためにおこなったM&Aで買収した事業もうまくいかず、不採算事業を全部売却処分したというのが2008年〜2012年の谷社長に変わってからの時代でございました。2007年には3300店を超える店舗があったのですが2011年には3000店にまで削減いたしまして、その後も整理と新規開店を並行し、一時は3000店以下になり現在では3000店を若干超える程度にまで回復してきております。
不採算店舗を閉じれば売り上げは一時的に下がりますが、利益率は急激に向上します。その後メニューの充実や店舗の改装による既存店成長を堅実に行い、さらに新店出店、新業態の開発などにより売り上げが大きく伸び始め、かつ収益力が高まってきたなかで、今回、晴れて再上場させていただいたわけです。
レストランというとどこも同じように感じられると思いますが、ファーストフードとは一線を画しております。ファーストフードさんはカウンターで食事をお渡しして、あるいみ「終わり」です。我々はテーブルサービスレストランですので、平均して1時間ほど滞在されるお客様にテーブルでサービスするのが本質でございます。
一部、ファーストフード業態も持っておりますが、基本は120席程度の座席を持っている店舗が中心で、クルーと呼んでいるアルバイトおよび社員の店員が実際に商品をお客様のテーブルまでお届けして召し上がっていただくというのが我々のビジネスの本質でございます。
ファミレスというカテゴリではありますが、我々が自らに関して特に強調したいことは、和洋中イタリアンといったように、幅広くお客様のニーズに対応が出来るブランドポートフォリオをほぼ直営で営業しているということが、他社さんと一線を画しているポイントだろうと思います。
この経営スタイルはこの規模の外食産業では異色であろうと思いますし、このスタイルで売り上げは3400億の規模を維持しているのは非常に驚くべき数字なのかなと思っております。
ファミレスというと若者たちの間では最近までオワコン(終わったコンセプト)などと言われていたようですが、ここにきて我々のようなカジュアルダイニングレストランというものが大きく息を吹き返しております。アベノミクスによる経済の拡大期待の中での内需依存ビジネス全体の成長という側面ももちろんありますが、現代の若者がお酒を飲まなくなったことによって、居酒屋ではなく我々のところで、きちんとした食事をしながら軽く飲むようになったとか、また購買年齢が全体的に上ってきたことによる顧客単価の上昇や、女性が主になってきたことによる居心地の良さの追求と店舗改装がマッチしたとか、もちろん季節や時代を映したメニューの開発努力などがその原因と考えております。
櫻井功氏は、株式会社三和銀行、日本GE株式会社、シスコシステムズ株式会社(当時)、HSBC Japan など、内外資大手複数企業の人事において人事制度改革、タレントマネジメント、組織開発などのプロジェクトをリードしてきた。現在はすかいらーくにおいて大規模な人事制度改革、人事プロセス改革を推進している。
中央大学大学院戦略経営研究科 客員教授 戦略的人材マネジメント研究所 代表 東証一部エレクトロニクス関連企業3社の社員を経験した後にベンチャー企業社長を10年経験。2009年より年間500社の人事部門を6年連続訪問。人事部門の役割と人事の人たちのキャリアについて研究。多数の企業で顧問及び日本テレビNEWS ZERO コメンテーター、特定非営利活動法人 女性と仕事研究所 理事なども担う。
◇主な著書 「破壊と創造の人事」(出版:ディスカヴァー・トゥエンティワン)2011年は、Amazonのランキング会社経営部門4位(2011年6月21日)を獲得した。最新の著書は「内定力2016〜就活生が知っておきたい企業の『採用基準』」(出版:マイナビ)