更年期症状・障害とは?~厚生労働省の調査から~
厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査基本集計結果(以下、調査結果)」では、『更年期症状・障害』を次のように定義づけています。更年期に現れる様々な症状(※)の中で他の疾患に起因しないもの。
※ほてり、のぼせ、発汗、動悸、頭痛、関節痛、冷え、疲れやすさなどの身体症状及び気分の落ち込み、意欲低下、イライラ、不眠などの精神症状
●更年期障害
こうした症状により日常生活に支障を来す状態を指す。なお、男性の更年期障害については、概ね40歳以降に男性ホルモン(テストステロン)の減少により、女性更年期障害と類似した症状を呈するが、病態が複雑で、まだ十分に解明されていない。
<厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査基本集計結果」より引用>
そして、女性の更年期症状の状況を示す一つの指標として「SMIスコア」というものがあります。次に示す(1)~(10)の項目について、強・中・弱・無で得点を付け(項目によって配点は異なる)、その合計点によって自己評価をするものです。
(1) 顔がほてる
(2) 汗をかきやすい
(3) 腰や手足が冷えやすい
(4) 息切れ、動悸がする
(5) 寝つきが悪い、または眠りが浅い
(6) 怒りやすく、すぐイライラする
(7) くよくよしたり、憂うつになることがある
(8) 頭痛、めまい、吐き気がよくある
(9) 疲れやすい
(10)肩こり、腰痛、手足の痛みがある
なお、スコアの高さ自体が更年期障害を示すものではなく、「医療機関を受診する目安」などの場面で活用されています。調査結果では、医療機関受診の目安となるSMIスコア51点以上が、40代女性で「17.7%」、50代女性で「20%」となっています。
~課題~男性は“更年期”への理解が低い傾向
更年期症状は、女性に現れやすいものですが、男性にも現れます。調査結果では「女性ホルモンや男性ホルモンの変化が健康に影響を与えることについて知っているか」という質問に対し、「よく知っている」と回答した男性の割合は概ね1割程度でした。その認知度を女性と比較した場合、50代男女の回答に絞ると「よく知っている」の割合は、男性が「10.5%」に対して、女性が「36.2%」でした。また「男性にも更年期にまつわる不調があることについて知っているか」という質問に対し、50代男女の回答で「よく知っている」の割合は、男性が「15.7%」に対して、女性は「42.4%」でした。
男性は「女性の健康課題」を理解する上で“更年期”への理解を深めることが大切であるとともに、「男性自身の健康に留意する」視点からも“更年期”を知っておく必要があります。しかし“男性の更年期”を「よく知っている」と回答した50代が、当事者である男性より、女性が3倍近く多い現状からも、いかに男性の理解が低いかをうかがい知ることができます。
なお、男性の更年期症状の指標としては「AMSスコア」というものがあります。全部で17の項目があり、女性の「SMIスコア」とは異なる内容となっています。
~ヒント~『Femtech(フェムテック)』から「女性の健康課題」を探っていく
経済産業省では「フェムテック等サポートサービス実証事業ホームページ(以下、フェムテックホームページ)」を開設しています。「Female(女性)」と「Technology(テクノロジー)」をかけ合わせた造語が『Femtech(フェムテック)』です。“更年期”だけでなく、月経、不妊、産後ケアなど女性の健康課題に向き合う取組を実施する企業などに対し、経済産業省が補助金交付事業などの施策を通じてサポートするものです。フェムテックホームページでは、『フェムテック事業からつながる3つのこと』として、次のことを掲げています。この内容に、会社が『女性の健康課題』と向き合うためのヒントが凝縮されています。
●気づく、知る、受け入れる
女性の健康課題は当事者である女性自身が、正確な情報や知識を有していないことも多いです。女性と女性を取り巻く人々が、女性の健康に関心を持ち、正しく理解し、必要に応じてサポートを利用する。そうやって健康課題と上手に向き合い解決することを、新たな当たり前にしていきたいと考えます。本事業では、そんな新たな当たり前に目を向けさまざまな方法でチャレンジする実証事業を支援しています。
●女性の健康課題解決には企業や自治体との連携が不可欠
女性の健康課題を解決するには、フェムテック企業の製品やサービスの提供だけでは足りません。企業や、居住する自治体が協力し、ライフステージや生活環境にフィットしたサポートができれば、多くの女性の悩みをより軽減・解消できるのではないでしょうか。本事業では、フェムテック企業と一般企業、自治体との連携が生まれるきっかけを提供し、支援しています。
●女性の健康課題から働き方を考える
女性が直面するライフイベントや心身の健康課題は、女性だけの話ではありません。周りの人も、その健康課題を知り、気遣うことで、職場のマネジメントが改善し、パートナーとの関係がより良くなります。また、住民の健康に関する満足度も高まります。お互いを配慮する気持ちは、多様な働き方を考えることにつながり、誰もが働きやすい環境づくりに向かうはずです。本事業では、フェムテックを手段として、全ての働く人々が生き生きと能力を発揮できる状態を目指していきます。
<経済産業省「フェムテック等サポートサービス実証事業ホームページ」より引用>
フェムテックホームページには、企業の実証事業として実践された取組も掲載されています。『女性の健康課題』の解決は、製品やサービス提供だけでできるのではなく、そこから生まれる連携、そしてその連携から生まれる企業風土・組織風土が大切になっていくのです。
育児や女性活躍に関しては、一般事業主行動計画などで、会社の方針が明確になっているかもしれませんが、ぜひ『女性の健康課題』に関しても会社の方針を考えてみてはいかがでしょうか。
例えば、今回ご紹介した“更年期”について『会社が“更年期”について何ができるか』を明確にしてみましょう。それは『フェムテック』が注目を集めている今だからこそ、「生涯にわたって働く女性を支える」という強いメッセージ性を持つことへとつながるのです。
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