大企業では「採用数の根拠・キャリア採用との配分」がテーマに

振り返り内容について複数回答で尋ねたところ、大企業では「採用数の根拠・キャリア採用との配分」が52%で最多であり、半数以上を占めています[図表3]。次いで「母集団形成」(45%)と「採用媒体・手法」(42%)の2項目が4割以上を占め、比較的高い割合となっています。一方、中堅企業と中小企業では、「採用数の根拠・キャリア採用との配分」はそれぞれ25%、20%と大企業の半分以下にとどまっています。労働施策総合推進法等の一部改正に伴い、常時雇用する労働者が301人以上の企業に対して、2021年4月から中途採用比率の公表が義務化されたものの、公表しなかった場合の罰則規定は定められておらず、大企業と比べて中堅企業では公表が進んでいるとは言い難い状況です。大企業においては、当初は公表しないことが社会や求職者にネガティブに受け止められるのではないかとの懸念から公表に踏み切ったところもあります。しかし、折からのDX化推進の波や事業構造変革の動きの中で、既存社員でカバーできないスキル・知識を持った人材を外部から獲得することが求められ、中途採用比率の公表義務化の時期とちょうどタイミングが合致しました。採用について、かつてはほぼ新卒に限定していた企業でも、年間の採用計画で新卒採用と中途採用の割合を同程度にするケースが増えています。
[図表3]振り返りの内容(複数回答)
中堅企業で最も多かった振り返り内容は、「母集団形成」で71%、「採用媒体・手法」も67%と高い割合を占めています。その他、「各選考フローの遷移率」(50%)、「内定者フォロー」(42%)も4割以上となっています。

中小企業では、「採用媒体・手法」(53%)が半数以上で最も多く、次いで「ターゲット層の見直し」(43%)、「母集団形成」(40%)が4割以上となっています。「母集団形成」と「採用媒体・手法」は、規模に関係なく振り返りの内容として重要視されていることが分かります。

中小ではKPIの定量評価を行わない企業が多い

振り返りの方法についても見てみましょう。複数回答で尋ねたところ、大企業では「KPIの定量評価を基に、新卒採用の担当者間で意見交換」が42%で最も多く、次いで「事前に設定したKPIの数値で現状把握・定量評価」が33%となっています[図表4]。一方、中堅企業と中小企業では、「KPIの定量評価を基に、新卒採用の担当者間で意見交換」はそれぞれ29%、27%であり、それに代わって中堅企業では「振り返り報告資料の作成」(46%)が最も多くなっています。KPIの定量評価に基づいて振り返りを行う企業は規模が小さいほど少なくなり、中小企業では「KPIの定量評価は使わず(実施せず)、新卒採用の担当者間で意見交換」(40%)が最多で、他の規模を十数ポイント上回っています。また、中小企業では「外部パートナー(営業等)との意見交換」が23%と、大企業の9%、中堅企業の8%に比べて比較的高い割合となっています。これは、新卒採用担当者が1人しかおらず社内での意見交換が難しいケースなど、外部パートナーから知見等を得ることが必要になるためでしょう。
[図表4]振り返りの方法(複数回答)
次に、定量評価したKPIはどのようなものかを聞きました(複数回答)。最も多かったのは「選考辞退率」と「内定数・内定率」で60%、次いで「セミナー・会社説明会参加者数・参加率」(55%)、「内定承諾数・内定承諾率(内定辞退率)」(53%)、「エントリー数・エントリー率」(50%)も半数以上となっています[図表5]。気になるのは、「前年または数年前までの新入社員の定着率」が13%しかないことです。新入社員の定着率には、配属先の上司や仕事内容との相性も関係しますが、採用時のミスマッチがなかったのかの検証が求められます。新卒採用は入社をゴールとするのではなく、入社後の少なくとも3年間程度はフォローすべきです。仮に、求める人材につき計画どおりの人数を採用できたとしても、入社後3年以内に辞めてしまう、または期待したパフォーマンスを発揮できない場合、企業の持続的成長は厳しく、採用が成功したとはいえません。採用後に期待どおりの活躍をしてもらうためには、採用と育成をより連携させる必要があります。経営計画に合わせて、採用計画の段階から入社後の人材育成プランまで考え、一貫性のある取り組みを目指したいものです。
[図表5]定量評価したKPI(複数回答)

振り返りにKPIの定量評価は不可欠

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