テーマパークなどで発行されている「プライオリティ・パス」についてご存じでしょうか。所持しているとアトラクションや施設の利用に際し、一般の来場者とは別のレーンで優先的に案内され、待ち時間を大幅に短縮できるサービスです。最近、就職・採用活動でも「プライオリティ・パス」という言葉を耳にする機会が増えています。
上記のとおり、このプライオリティ・パスにおいて、内定を辞退してから再応募するまでの期間は、留学や進学だけでなく、一度他社に就職している場合も含みます。自社の退職者を再び採用する「リターン雇用」「カムバック採用」が広がりを見せる中、入社前の内定者もその予備軍とする考え方です。プライオリティ・パスの有効期間は一般的に3年以内とされており、名称を「内定3年保証制度」とする企業もあります。3年以内とするのは、新卒採用の枠組みではポテンシャル重視のため、おおむね「新卒」として扱える3年が最長と考えられているからです。それ以上の期間が経過すると、経験やスキルを重視するキャリア採用に移行するため、最終面接のみで選考判断することは難しくなるという事情があります。
これまでよく見られた“圧力”による内定者の囲い込みは、今やすぐに「オワハラ」と呼ばれて非難されますが、この新たな“緩い”囲い込みの手法は企業だけでなく学生にとってもメリットが大きく、歓迎されるでしょう。優秀な人材との“縁”を少しでも保ちたい企業などは、導入を検討してもよいかもしれません。コストはゼロです。
中小企業の4割以上が「振り返り」を行っていない現状
さて、今回は、HR総研が人事採用担当者を対象に実施した「2025年&2026年新卒採用動向調査(6月)」(調査期間:2024年6月3~14日)の結果を紹介します。ぜひ参考にしてください。今回の調査では、従来とは異なる角度から質問を設計しました。まず、次年度の新卒採用活動を始めるに当たって、これまでの採用活動の振り返りがどの程度実施できているのかを尋ねています。
2024年卒採用までの振り返りによる課題抽出を実施しているかについて、全体では70%が「実施した」と回答しています[図表1]。しかし、従業員規模別に見ると、「実施した」割合は、1001名以上の大企業では85%と高い一方で、301~1000名の中堅企業では73%、300名以下の中小企業では58%と、規模が小さくなるほど課題抽出を実施している割合が低くなっています。中小企業では4割以上が前回までの振り返りを行わず、前年踏襲で次年度の採用活動に突入している様子がうかがえます。
では、振り返りにはどの程度の時間をかけているのでしょうか。振り返りを「実施した」と回答した企業を対象に、振り返りに要した時間を聞いたところ、全体で最も多かったのは「4~10時間未満」で32%、次いで「2~4時間未満」が26%でした[図表2]。「10~15時間未満」と「15時間以上」を合わせた“10時間以上”は18%と2割以下にとどまっています。