
意思決定における7つのプロセスとは
「決断」は別の言い方をすれば、「意思決定」とも言う。情報を収集し、取捨選択して自分なりに決定していくプロセスを「意思決定プロセス」と言うが、そのステップは7つの段階を経ることがオーソライズされている。以下のとおりである。→解決すべき問題や決定すべき事項を特定するプロセス
(2)情報の収集
→解決策や選択肢の策定に必要な情報を収集するプロセス
(3)選択肢の生成
→ソリューションとしての選択肢や解決策を考え出すプロセス
(4)評価と比較
→(3)で導いた各選択肢や解決策の利点と欠点を評価・比較しプライオリティを設定するプロセス
(5)決定
→(4)の中から最適な選択肢や解決策を選ぶプロセス
(6)実行・実施
→(5)で選んだ選択肢を実行・実施するプロセス
(7)評価
→(5)の決定、(6)の実行・実施の結果を評価し、必要に応じて修正するプロセス
この7つの意思決定プロセスは、個人や組織が効果的に問題を解決し、目標を達成するために日常的に使われている。恐らく、多くの人たちは自分では気づいていないかもしれないが、無意識のうちにこれらのステップを段階的に踏んで、日々の生活や仕事を即断即決ですっきり回しているのである。
発達障害のチェックリストからわかる“グレーゾーン”の大きさ
他方、日々の迫られる決断にこの7つのステップを上手く使えず、適切な決断ができない人たちも存在する。近年、よく耳にする「発達障害」の診断を受けた人たちだ。発達障害(自閉スペクトラム症・注意欠陥多動症・発達性学習症など)は、特定のチェックリストに一定割合の項目が該当することで診断されている。例えば、チェックリストには下記のような項目が用意されている(出典:大人の発達障害ナビ~武田薬品工業株式会社)。
【自閉スペクトラム症】※現在及び過去において当てはまるか否かを回答
●他の人と話している時に、他の人が感じていることを理解するのが難しい●他の人が気にしないような普通の感触のものが肌に触れると、とても不快になることがある
●集団で働いたり、活動したりすることがとても難しい
●他の人が自分に期待したり、望んでいることを理解するのが難しい
●社交的な場面で、どのように振る舞えばよいのかわからない
●他の人と雑談やおしゃべりをすることができない
【注意欠如多動症】※該当の有無や頻度等を回答
●物事を行うにあたって、難所は乗り越えたのに、詰めが甘くて仕上げるのに困難だったことが、どのくらいの頻度であったか●計画性を要する作業を行う際に、作業を順序立てるのが困難だったことが、どのくらいの頻度であったか
●約束や用事を忘れたことが、どのくらいの頻度であったか
●つまらない、あるいは難しい仕事をする際に、不注意な間違いをすることが、どのくらいの頻度であったか
●つまらない、あるいは単調な作業をする際に、注意を集中し続けることが困難なことが、どのくらいの頻度であったか
●直接話しかけられているにもかかわらず、話に注意を払うことが困難なことが、どのくらいの頻度であったか
ご覧のとおり、特殊な内容ではなく、誰にでも当てはまるようなチェックリストである。つまり、一般的な病気と違って、発達障害は0か100かという病気ではなくグレーゾーンが大きいのが特徴である。
「あの人は几帳面でいつも読書に没頭している」とか「あの人は忘れっぽい人だけど、人当たりはいい」などというように、人には個性がある。発達障害とは、その個性の波がいくらか強すぎるために、周りに迷惑をかけたり、自分ができないことが浮き彫りとなって生きづらさを感じていたり、うまく世の中を渡れずに困っている状態のことをいうとも言える。
発達障害の人が増える社会環境となってきたのか、医学の進歩で発達障害の人が顕在化してきたのか、医学の専門家ではない筆者にはわからない。ただ、どのようなシチュエーションにでも発達障害の人が存在し、等しく人生や仕事でつまずいているという現実は存在している。このような環境は、よりよく改善していかないと、すべての人たちが疲弊してしまうことになる。
とりわけ、彼らが所属する組織はマネジメント不能に陥ってしまう。実際、発達障害の人たちの頭の中は、健常者では理解できないほど混乱していて、先述の意思決定プロセスがうまく機能していないことが最近の研究でも分かっている。
このような状況は、本来であればドラスティックに改善されなければならない。しかし、そう簡単に解決できる方法は現在のところ見当たらない。まずは発達障害者本人とその人をマネジメントする組織が、発達障害に関する見識を深めること、そのうえで、
●「意思決定プロセスに則って決断していく」意識を双方が共有すること
●「いつもどのプロセスでつまずいているか」を双方が分析し共有すること
をスタートラインとしながら、少しでも後悔することの少ない意思決定をしていけるよう、地道に努力していく以外ないのかもしれない。
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