「解雇」とは何を指すのか
「解雇」とは、“会社からの一方的な労働契約の終了”のことをいいます。「解雇」と混同しやすいのが、「退職勧奨」です。「退職勧奨」は、会社が労働者に対して、「辞めてはどうか」と退職することを働きかけるものの、最終的な退職の意思決定は労働者側にあります。このように、労働関係を一方的かつ強制的に終了させるのが解雇です。労働者にとって生活に大きな影響があることから、解雇については、様々な法的な規制やルールが設けられています。
「解雇」は企業側が自由にできるものではない
「解雇」は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は無効となります(「労働契約法」16条)。つまり、解雇は常識的に納得のいく理由がないとできません。労働契約は、労働者が労務の提供を行い、使用者(会社)がその対価の支払いを約束する契約です。そのため、労務の提供が満足に行えなくなるのは、労働者の債務不履行(約束違反)となります。民法の契約の原則からすると、債務不履行による契約の解除は認められるところですが、労働者保護の要請から、特別に「労働契約法」で解雇にハードルが設けられているのです。
そもそも「解雇」が禁止されている場面もある
上記に加えて、そもそも「解雇」が禁止されている場面もあります。次のいずれかに該当する場合には、解雇ができません。(2)産前産後の女性が産休で休業する期間及びその後30日間
ただし、(1)(2)に該当する場面で合っても、天災事変などやむを得ない事由により事業の継続ができなくなった場合には、行政官庁の認定を受けることで解雇が可能です(「労働基準法」19条1項)。
この他にも、労働者が育児・介護休業などを申し出たこと、又は育児・介護休業などをしたことを理由とする解雇(「育児・介護休業法」)、労働組合の組合員であることなどを理由とする解雇(「労働組合法」)などが禁止されています。
「解雇」には予告が必要
解雇に理由があるとしても、解雇する際には、少なくとも30日前までに予告しなければなりません(「労働基準法」20条1項前段)。これを解雇予告といいます。解雇は会社からの一方的な契約解消なので、いきなり解雇すると労働者の生活に大きな影響を与えるからです。例えば、「10月31日」に解雇する場合、30日前にあたるのは「10月2日」になりますので、少なくとも10月1日までに解雇予告が必要となります。
「今日でクビ!」の場合はお金で解決する
お金で解決する、というのは少々下品ですが、30日も待っていられない場合、30日分以上の平均賃金(これを「解雇予告手当」といいます)を支払って解雇することも認められています。給料の約1ヵ月分以上を支払うことで「解雇予告」に代えることができるというわけです(「労働基準法」20条1項後段)。また、解雇予告期間が30日に満たない場合、予告期間と予告手当を合わせて30日以上にすれば解雇が認められます(「労働基準法」20条2項)。
「解雇」の種類はいくつあるのか
解雇には、「普通解雇」、「整理解雇」、「懲戒解雇」があります。●普通解雇
「普通解雇」を行うためには、前述のとおり、「客観的に合理的な理由」が必要です。客観的に合理的な理由としては、「業務を行う能力不足」、「病気などによる勤務不能」、「協調性の欠如」などが挙げられます。また、客観的に合理的な理由があったとしても、「社会通念上相当」と認められる必要があります。これは、労働者の情状(反省の程度など)、会社の対応や落ち度の程度、他の労働者に対する処分との比較などによって判断します。
例えば、同じ状況にある労働者に対して、一方は解雇、他方はお咎めなし、ということでは、社会通念上相当とは認められない可能性が高いでしょう。
●整理解雇
「整理解雇」は、経営上の理由から会社が人員整理を行うための解雇です。普通解雇の一種ですが、会社側に帰責性がある点が特徴です。そのため、通常の普通解雇の場合と比べて解雇のハードルは高くなります。具体的には、次の4つの観点から整理解雇の有効性が判断されます(参考:厚生労働省「労働契約終了に関するルール」)。
人員削減措置の実施が不況、経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいていること
(2)解雇回避の努力
配置転換、希望退職者の募集など他の手段によって解雇回避のために努力したこと
(3)人選の合理性
整理解雇の対象者を決める基準が客観的、合理的で、その運用も公正であること
(4)解雇手続の妥当性
労働組合または労働者に対して、解雇の必要性とその時期、規模・方法について納得を得るために説明を行うこと
●懲戒解雇
「懲戒解雇」は、懲戒処分としての解雇のことです。普通解雇との違いは、会社の秩序維持、制裁的意味合いがあること、そのため退職金の支給が一部あるいは全部不支給となることが多いこと、が挙げられます。また、普通解雇は、就業規則に解雇事由の記載がなくても解雇を行うことはできますが(ただし争いとなった場合に解雇の有効性は会社にとって不利になる可能性が高い)、より労働者にとって厳しい処分である懲戒解雇を行うためには、就業規則に懲戒解雇事由が記載されていることが必要です(フジ興産事件判決)。
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