「子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充」を念頭に近年目まぐるしい法改正を経ている「育児・介護休業法」は、2025年の4月・10月にも更なる改正を予定しています。端的には、この改正は“労働者目線”ではプラスの法改正であり、注目度も高いことから、当然、人事労務担当者も就業規則の改定をはじめ、一定の習熟が求められます。今回は2025年4月以降に改正される「育児・介護休業法」について、施行日順に段階的に解説します。

【2025年4月・10月改正:育児・介護休業法】改正される7項目により企業と人事には何が求められる?

2025年に行われる「育児・介護休業法」改正とは

平成時代に創設された「育児・介護休業法」も時代は令和へと移り変わり、様々な変化が到来しています。創設当時と現代では働き方の根幹が変化しており、より時代に合致した働き方と、それらを踏まえた法令のあり方が模索され続けています。そこで、前述の「子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置」の拡充や、「介護離職の防止を図るための措置」等、複数項目の法改正を控えています。

「育児・介護休業法」改正で企業側に求められること

まずは後述する具体的な法改正内容の概要を理解し、企業規模に応じて、具体的に対応が必要なタスク(併せて担当者のアサイン)に落とし込んでいく必要があります。

また、近年では様々な情報デバイスによって情報発信が行われており、そのこと自体は時代の恩恵ではあるものの、(「育児・介護休業法」に関わらず)労使間で複数の論点にわたって認識齟齬が生まれている場面に多く遭遇します。一度認識した「認識の書き換え作業」は時間を要することから、そのような事態になる前に企業側から先行的に改正内容の周知啓蒙を行うことが重要と考えます。

我が国の99%を占める中小企業であっても、後述する「残業免除の対象範囲の拡大」、「休暇制度」の対応は避けて通ることはできず、人手不足ではあっても、仕事の分担について一度膝を突き合わせて検討する必要があります。

2025年4月の「育児・介護休業法」改正内容(2025年4月1日施行)

●所定外労働の制限の拡大

これまでは「3歳に満たない子を養育する労働者」が請求することで、所定外労働の制限(いわゆる残業免除)を受けることが可能でしたが、法改正後は対象範囲が「小学校就学前の子を養育する労働者」まで拡充され、残業免除を請求することが可能となります。

●育児のためのテレワークの導入の努力義務化

コロナ禍で脚光を浴びたテレワークについても、「3歳に満たない子を養育する労働者」がテレワークを選択できるように、一定の措置を講ずるよう事業主に努力義務化として課されることとなります。

●子の看護休暇の見直し

名称そのものが「子の看護休暇」から、「子の看護等休暇」となります。また、取得事由について、これまで病気や怪我、予防接種や健康診断に限定されていたところ、入園(入学)式・卒園式も追加されることとなります。

また、“労使協定の締結によって除外できる労働者”については、以前は「引き続き雇用された期間が6ヵ月未満」と「週の所定労働日数が2日以下」でしたが、法改正後は「週の所定労働日数が2日以下」のみなります。

●育児休業取得状況の公表義務の拡大

これまでは「従業員数が1,000人を超える企業」に公表が義務付けられていましたが、法改正後は「従業員数が300人を超える企業」にまで拡大されます。

●介護離職防止のための個別の周知・意向確認、並びに雇用環境整備等の措置の義務化

介護離職の問題は我が国の喫緊の課題であり、今後も介護に関わる相談は増えることはあっても減ることは想像し難い状況です。介護に直面した旨を申し出た労働者に対しては、「個別の周知や意向確認」が必要となることから、より早い段階で「両立支援制度に対する情報提供」、「仕事と介護の両立支援制度を利用しやすい雇用環境の整備を進める」等の準備が必要です。

そして、介護休暇は、労使協定において「引き続き雇用された期間が6ヵ月未満の労働者」を除外する仕組みがありましたが、これを廃止することとなります。

公布後1年6ヵ月以内の政令で定める日(2025年10月1日)とする「育児・介護休業法」改正内容

●柔軟な働き方を実現するための措置等

3歳以上、小学校修学前の子を養育する労働者に関して、「柔軟な働き方を実現するための措置」が義務付けされます。併せて、事業主が選択した措置について、「労働者に対する個別の周知・意向確認の措置」が必要となり、具体的には次の項目が挙げられます。

●始業時刻等の変更
●テレワーク等
●保育施設の設置運営等
●新たな休暇の付与
●短時間勤務制度

上記の選択肢の中から2つ以上の制度を選択して設置する必要があります。なお、テレワークについては月10日、新たな休暇の付与については年10日が水準となります。

●仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取

「介護離職防止のための意向確認」等と同様に、妊娠や出産の申し出や、子供が3歳になる前に、労働者の「育児と仕事の両立」に関する個別の意見聴取や配慮が事業主に義務付けられます。具体的な配慮の例としては、勤務時間帯や勤務地等の配慮や調整、両立支援制度の利用期間の見直しや、労働条件の見直し等が盛り込まれる予定です。
出典:厚生労働省:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律の概要(令和6年法律第42号、令和6年5月31日公布)

出典:厚生労働省:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律の概要(令和6年法律第42号、令和6年5月31日公布)

最後に

法改正までに既に1年を切っており、実務上は「就業規則の改正」と「労働者からの相談対応」に多くの時間を要すると考えます。人事労務担当者としての他の通常業務もあるので、施行日から逆算した計画的な改正対応が必要となります。
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