日本には長時間労働や雇用形態による格差といった悪しき慣習があり、長らく問題視されていた。こうした状況を改めるための各種法案が成立し、「働き方改革」として国家的な規模の取り組みが進められている。本稿では「働き方改革」が必要とされる背景、法改正の内容や具体的な施策例などについて解説する。
働きか改革

「働き方改革」とは? ~多様な働き方を実現するための国家的取り組み

「働き方改革」とは、国が提唱・推進する労働環境の改善に関する取り組みであり、厚生労働省の『働き方改革 特設サイト』では「働く方々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で『選択』できるようにするための改革」と定義されている。具体的には「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が成立、2019年4月から順次施行されている。

また国は“一億総活躍社会の実現に向けて”というスローガンを掲げている。そのための方策が「働き方改革」であり、過酷・不合理な労働条件の排除や働きやすい環境整備を実現し、より多くの人が労働に参加してくれる社会を作ることが「働き方改革」の目指すところである。

「働き方改革」が必要とされている背景

●労働人口の減少

国立社会保障・人口問題研究所の『日本の将来推計人口』(令和5年推計)では、我が国の総人口は2056年に1億人を下回ると推計されている。当然、生産年齢(15~64歳)の人口も減少の一途、2062年には5000万人を割るとの予測が出されている。

生産力の低下を食い止めようと思えば、労働量の維持と労働の質向上が不可欠だ。女性、高齢者、子育てや介護に追われて働く意思がありながら働けずにいる人などの労働参加率を高める施策、長時間労働をはじめとした効率性と合理性に欠ける悪しき労働環境の改善、それらの重要性を理解する意識改革……などへとつながる「働き方改革」が必要とされているのである。

●長時間労働や過労死

日本では生産性の維持・向上を長時間労働に頼ってきた面がある。この価値観は労働者の健康を損ね、心身の病や過労死を招き、かえって日本の労働生産性を低下させる原因となっている、との指摘がある。労働時間の短縮など働き方を大きく見直すことで、生命・健康・家庭生活への悪影響を排し、労働者の幸福度を上げ、結果的に生産性を向上させることが「働き方改革」の狙いの一つである。

●ライフスタイルと価値観の多様化

少子高齢化や生涯未婚率の上昇などにより、多彩な家族構成・世帯構成・生活様式が見られるようになった。ワークライフバランス重視、あるいは社会貢献重視など仕事に対する人々の姿勢も変化。都心部と地方の差、世代間の考え方の差など、画一的だった昔とは異なり、あらゆる点で“違い”が表面化しているのが現代の日本だ。

ライフスタイルや価値観が多様化すれば、仕事や労働環境に求める条件もまた多様化する。柔軟な勤務時間や場所に縛られない労働など、まさに「個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で『選択』できるようにする」ための「働き方改革」推進は、必須といえる取り組みなのである。

「働き方改革」の3つの柱

2019年4月1日から順次施行されている各種の「働き方改革関連法」案は、以下の3つの柱で成り立っているといえる。

●長時間労働の是正

“サービス残業”という言葉が日常的に使われるほど、日本では長時間労働が常態化し、深夜まで骨身を削って働くことや体調不良を押してでも出勤することが美徳とされてきた。だが、こうした状態は多くの健康被害を生み、過労死が増加。国連の社会権規約委員会から是正勧告が出されるまでになった。また長時間労働によって、女性にとっては育児と仕事の両立が難しくなり、男性も育児・家事に参加しにくくなる。そのため子どもをもうけることに躊躇する人が増え、出生率低下の原因ともなっていた。

こうした状況の是正を目的とする改正が、働き方改革関連法案には数多く盛り込まれている。

●多様で柔軟な働き方の実現

女性の労働力に期待するのであれば、育児や家事と仕事を両立しやすい環境作りのほか、「育児や家事は女性の仕事」という旧来的価値観を改め、男性の家事への参加・育休の取得などを推進しなくてはならない。高齢者の就労を増やすのであれば、体力的なハンデへの配慮や、長年培った経験・知見を十分に生かしてもらうための環境整備が求められる。生産年齢人口のコア層に対しても、フレックスタイム制や、仕事の成果と収入を連動させる制度の導入など、柔軟な働き方を普及させる必要がある。

こうした“多様で柔軟な働き方の実現”を目指すことも、働き方改革関連法案の重要な主旨である。

●雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保

育児・介護と仕事との両立、あるいは体力的なハンデのある高齢者の就労においては、フルタイムの正規雇用が困難な場合も多い。だが正規雇用・非正規雇用の賃金格差は大きく、この処遇格差が就労意欲を削ぎ、モチベーションの低下を招いている面があった。

雇用形態にかかわらず労働内容が同じなら同等の給与を支払わなければならない「同一労働同一賃金」の原則など、就労意欲に応え、モチベーションの維持と生産性向上につなげるための法整備が、3つ目の柱である。

「働き方改革関連法」による11の変更点

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」には、労働基準法、労働安全衛生法、労働者派遣法、労働契約法など多様な法律が含まれる。主な成立・改正・変更内容は下記の通りである。

(1)時間外労働の上限規制導入

労働基準法第32条では、労働時間の上限が「1日8時間/週40時間」と定められている。いわゆる“36協定”の締結・届出により、これを超えて労働させることも可能だが、「特別条項」を設定すれば労働時間を無制限に延長できることが問題視されていた。そのため法改正によって以下のような上限規制が導入された。

【原則として】
・月45時間
・年間360時間

【特別な事情があり労使の合意がある場合】
・月100時間未満
・年間720時間以内
・複数月平均80時間以内
・月45時間を超えられるのは年間6回まで


(2)「勤務間インターバル制度」の導入促進

過労死を防ぐことなどを目的として、勤務終了から次の勤務開始までの間に、一定時間以上の休息を確保することが雇用主の努力義務となった。休息時間の長さは明示されていないが、厚生労働省などでは「11時間」を推奨している。

(3)年5日の年次有給休暇

年間10日以上の有給休暇がある労働者に対し、年5日の有給休暇を取得させることが、雇用主・使用者に義務づけられた。職場への遠慮などから消化されないケースも多い年次有給休暇の確実かつ計画的な取得を推進することが狙いといえる。

(4)月60時間を超える残業に対する割増賃金率引き上げ

月60時間を超える残業(時間外労働)の割増賃金率は、それまで大企業50%・中小企業25%とされていたが、法改正により、中小企業も50%に引き上げられた。

(5)労働時間の客観的把握

労働安全衛生法が改正され、企業には従業員の労働時間を客観的かつ正確に把握することが義務づけられた。長時間労働の抑制、労働者の健康管理などが目的である。

(6)フレックスタイム制の清算期間延長


フレックスタイム制における清算期間(労働すべき時間を定める期間)が、従来の「最大1カ月」から「最大3カ月」に延長された。長いスパンで勤務時間・勤務体系を調整できるようになり、ピーク時/オフピーク時などに合わせて、より柔軟な働き方が可能となる。働き方の多様化に対応した法改正といえる。

(7)高度プロフェッショナル制度の導入

高度な知識が求められ、職務範囲が明確である特定の専門業務に関しては、労働時間・休憩・休日・深夜割増賃金に関する規定から除外し、柔軟な働き方を可能とする「高度プロフェッショナル制度」が導入された。対象となるのは下記5つの業務で、年収1075万円以上という要件も満たさなければならない。またこの制度の適用には労使委員会の決議と本人の同意が必要で、企業側には休日の確保など労働者の健康管理措置が求められる。

【高度プロフェッショナル制度の対象業務】
・金融商品の開発業務
・金融商品のディーリング業務
・アナリスト業務
・コンサルタント業務
・研究開発業務

(8)産業医・産業保健機能の強化

企業に対し、従業員の健康管理とメンタルヘルスケアを強化するよう求める法改正がなされた。「従業員の健康管理に必要な情報を産業医に提供する」ことや「時間外・休日労働時間が月80時間を超過し、かつ疲労の蓄積が認められる者に対する医師の面接指導」が義務づけられるなど、産業医の活動環境や健康相談体制の整備が求められている。

(9)不合理な待遇差の禁止

非正規雇用労働者(非正社員)の賃金は正規雇用労働者(正社員)の6割とされる状況を是正するため、雇用形態に基づく不合理な待遇差が禁止された。「同一労働同一賃金」の考え方に基づき、同一の労働をした場合には、正規雇用と非正規雇用にかかわらず同一の賃金を支払うことが企業の義務となった。

(10)非正規雇用労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

非正規雇用労働者から求めがあった場合、労働条件や待遇の内容などを説明することが企業に義務づけられた。契約期間、労働時間、休暇、給与計算の基準といった雇用条件の開示を進めることで、正規雇用と同等の透明性を保証し、待遇格差のない公正な扱いを促すものとなっている。

(11)行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続の規定の整備

社員の雇用に問題があった際などに行政から事業主に助言・指導できる「行政による履行確保措置」の対象は、これまでパートタイム労働者と派遣労働者のみだったが、有期雇用労働者も追加された。また事業主と労働者との紛争について、裁判をせず解決する裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定が整備された。これらも正規雇用と非正規雇用の待遇差解消を目的としているといえる。

「働き方改革」の取り組み例

「働き方改革」では「長時間労働の是正」、「多様で柔軟な働き方の実現」、「公正な待遇の確保」といった目的の達成を主眼に置いて具体的な取り組みを進めていくことが必要となる。

●労働時間の管理/残業の抑制

勤務時間、休日、従業員に与えられているタスクの可視化によって長時間労働を是正するために、まずは勤怠管理システムの導入・活用を検討したい。また管理職には残業や休日出勤を要しないチームマネジメントの能力を身につけてもらう必要がある。不要な会議や慣例だけで続けている業務の削減、効率的な働き方が称えられる評価制度の導入、現場の意識改革につながる研修の実施などにも取り組みたい。

●定時退社の励行

定時退社日や「ノー残業デー」を設けることで、従業員が早く帰宅できる機会を定期的に提供したい。上長が会社に残っていると部下は退社しにくいため、管理職が率先して定時に仕事を終えるような配慮(当然、効率的な業務遂行が必要となる)も示すべきだ。定時退社の励行により、長時間労働の抑制、勤務間インターバルの確保、従業員のリフレッシュ促進、仕事とプライベートの良好なバランス実現など、さまざまな効果を得られるはずである。

●フレックスタイム制や時短勤務の導入

フレックスタイム制の清算期間が3か月に延長されたため、月をまたいだ労働時間の調整が可能となった。育児、ラッシュアワー回避、取引先の業務時間など、さまざまな事情やライフスタイルに基づいて出勤・退勤時間を決めたい従業員も存在するはずで、これを機にフレックスタイム制や時短勤務の導入を検討する価値はある。

●テレワークの推進

新型コロナウイルス感染症の蔓延にともなう外出自粛要請を受けて、オンライン勤務/テレワークが急速に普及したものの、状況が落ち着くにつれて“出社”への揺り戻しが起こった。ただ、ペーパーレス化やテレワークに対応した勤怠管理の導入など企業の投資は少なくなかったはずだ。個々の従業員もそれなりの出資や生活スタイルの見直しを迫られたものと思われる。

これらの投資や経験を無駄にしないためにも、現場の状況に応じてテレワークを継続させ、あるいはテレワークと出社を適宜組み合わせた「ハイブリッドワーク」を定着させる試みに取り組みたい。従業員のストレス軽減、業務効率化、育児・介護と仕事の両立、働く場所に縛られない柔軟な働き方の実現など、複数の成果が期待できるだろう。

●育休の推奨

育児・介護休業法の改正により、新たに「産後パパ育休(出生時育児休業)」制度が創設された。これは「産後8週間以内に4週間(28日)を限度として2回に分けて取得できる休業」で、1歳までの育児休業とは別に取得できる制度である。また「子の看護等休暇」(2025年4月1日から段階的に施行)では、感染症にともなう学級閉鎖、入園・入学式や卒園式を理由とした休暇取得が小学校3年生修了まで可能となっている。

これらを積極的に活用して男性の育児休業取得を促進するほか、労働基準法や育児・介護休業法に基づく産前産後休暇、育児短時間勤務制度、介護休業制度、介護短時間勤務制度などの運用にも取り組みたい。

●有給休暇の取得促進/特別休暇の付与

休暇日を指定する「有給休暇の計画的付与」(労使協定の締結が必要)や有給奨励日の設定など、業務に支障をきたさず、かつ有給休暇を取得しやすい、という環境と制度の整備に取り組みたい。

また近年は法令で定められた休暇以外に「リフレッシュ休暇」や「推し活休暇」など独自の休暇制度を付与する企業、週休3日制度を導入する事業所も増えている。こうした施策はワークライフバランスの向上に寄与し、従業員満足度や定着率の上昇にもつながるはずである。

●定期的なストレスチェックの実施

50人以上の従業員を雇用する事業所には、年1回以上のストレスチェックが義務づけられている。また高いストレスを抱える者に対しては医師による面接指導が義務づけられた。ストレスにより従業員のパフォーマンスは低下し、離職リスクも高まるため、法令遵守の精神にとどまらず積極的にストレスチェックを実施し、カウンセリングや医療の提供、メンタルヘルス研修の実施などにも取り組みたい。

●業務のDX化

長時間労働の是正および柔軟な働き方の実現を目指すためには、DX化による業務効率化が不可欠である。従業員へのモバイル端末の貸与、電子決裁システムなどによるペーパーレス化、ルーティンワークを自動化するRPA、AIツールなどの導入と活用により、従業員の負担削減と業務効率化に取り組むべきである。

●働きやすいオフィス環境の整備

近年ではオフィスの設計から働きやすさを追求する動きが加速している。クラウドシステムの導入+フリーアドレス化による「社内のどこで作業してもいい」という環境作り、人間工学に基づいた作業しやすいデスクや椅子の設置、部署をまたいだ出会いから起こるシナジーにも期待できるオープンスペースの設置などが代表的な取り組みである。

●現場での待遇や福利厚生の見直し

賃金だけでなく現場での待遇についても不合理な格差を排除しなければならない。安全や働きやすさに関わる用具の支給範囲、福利厚生制度の適用範囲などの見直しも進めるべきである。

「働き方改革」の企業事例

実際に「働き方改革」の企業事例を3つ紹介していこう。

●ベネッセホールディングス

ベネッセホールディングスは、多様な働き方を推進する「働き方改革」に積極的に取り組んでいる。同社の特徴的な取り組みとして、有給休暇取得の促進がある。具体的には、年間の有給取得奨励日を設定し、祝日と土日の間に挟まれた平日を有給休暇で休むことを奨励している。

また、男性の育児参加を促進するため「男性育休100%」を宣言し、社内だけでなく他企業にも参加を呼びかけることで、ワークライフバランスの向上と従業員の多様なライフスタイルの支援を図っている。

●双日

双日は、社員の心身の健康増進と生産性向上を目的に、多様な休暇制度を整備している。入社次年度以降の社員には年間20日の有給休暇に加え、夏期休暇として5日間の特別休暇を付与。さらに、勤続10年、20年、30年目の節目に5日間の特別休暇を付与する長期勤続者向け休暇制度があり、有給休暇や夏期休暇を組み合わせることで、最大2週間の連続休暇取得が可能だ。

また、年次有給休暇を12日以上取得した社員を対象に、配偶者の出産付添や学校行事参加、親の看病などを目的とした「ファミリーサポート休暇」を5日間付与し、家庭の事情に配慮した取得しやすい休暇制度を実現している。

●ソフトバンク

ソフトバンクは、「日経Smart Work大賞2023」の大賞を受賞するなど、先進的な「働き方改革」を推進している。2017年4月から導入された「スーパーフレックスタイム制」では、コアタイムを撤廃し、社員が業務状況に応じて始業・終業時刻を柔軟に変更できるようにした。これにより、子育て中の社員が家族との時間を確保したり、自己成長に充てたりと時間の有効活用が可能となった。

また、在宅勤務やサテライトオフィスの活用、外出先への直行・直帰を制限なく組み合わせられる柔軟なワークスタイルを導入し、オフィス出社人数を5割以下に維持しているほか、社員の成長支援として、毎月1万円の「自己成長支援金」を支給し、スキルアップや知識習得を奨励。さらに、「Workstyle支援金」として月4,000円を全社員に支給し、在宅勤務環境の整備などをサポートしている。

「働き方改革」で活用できる助成金

「働き方改革」を進めるために活用できる3つの助成金制度について解説していこう。

●働き方改革推進支援助成金

働き方改革推進支援助成金は、中小企業の働き方改革を支援するための助成金制度だ。労働時間の短縮や年次有給休暇取得の促進、勤務間インターバル導入など、労働環境改善に取り組む企業に対し、その費用の一部(原則として対象経費の3/4)を助成する。「労働時間短縮・年休促進支援コース」、「勤務間インターバル導入コース」、「業種別課題対応コース」、「団体推進コース」の4つのコースがあり、企業の課題に合わせて選択できる。

●業務改善助成金

業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者が事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げながら、生産性向上のための設備投資を行う際に、その費用の一部を国が助成する制度だ。2025年現在では、事業場内最低賃金を30円以上引き上げることを条件に、機械設備導入、コンサルティング、人材育成などの費用に対して最大で600万円まで助成を受けることができる。助成率は最大で90%となり、賃金引上げ額や対象労働者数によって助成上限額が変わる。

●キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、パート・アルバイト、派遣社員などの非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため制度だ。「正社員化支援」と「処遇改善支援」の2つに大別され、非正規雇用労働者を正社員に転換したり、賃金規定の改定、賞与・退職金制度の導入などの処遇改善に取り組む事業主に対して支給される。助成を受けるには、事前に「キャリアアップ計画」を作成・提出する必要があるが、この制度を活用することで、人材確保や生産性向上を図りながら、労働者のモチベーションと能力向上を促進することができる。

まとめ~「働き方改革」がもたらすメリットは絶大

長時間労働の是正、柔軟な働き方の実現、格差の解消は、従業員のストレスと疲労の減少、従業員満足度の向上、業務効率化、さらには生産性の向上へとつながるはずだ。

堅実かつ先進的な「働き方改革」の推進が社会に認められれば企業のブランドイメージも高まる。従業員や株主などステークホルダーからの支持・信頼は強くなり、市場や消費者から応援してもらいやすくもなる。求職者から就職希望先として選ばれる、あるいは投資家から投資対象として選ばれる、といった効果も期待できる。

労働力の4割を占めるともいわれる非正規雇用の待遇改善(賃金上昇)が消費促進・デフレからの脱却につながることや、仕事と育児を両立しやすい環境を整備すれば出生率の向上=人口の維持を果たせる、といった点においても「働き方改革」は大きな期待を寄せられている。

「働き方改革」は、単に法令遵守という側面から考えるだけでなく、企業と労働者にとって多くのメリットをもたらす取り組みだと捉え、積極的に推進していくべきものといえるだろう。企業規模の大小を問わず、経営層、人事担当者、中間マネジメント層、そして現場に至るまで、「働き方改革」の重要性をしっかりと認識し、各種制度の導入と活用に取り組みたいものである。



よくある質問

●「働き方改革」とは具体的に何?

「働き方改革」とは、国が推進する労働環境改善の取り組みで、個人の事情に合わせた多様で柔軟な働き方を自分で選択できる社会を目指すものである。2019年4月から順次施行されている関連法律に基づき、過酷・不合理な労働条件の排除や働きやすい環境整備を通じて、「一億総活躍社会」の実現を目指し。より多くの人が労働市場に参加できる社会づくりを推進している。

●「働き方改革」の3つの柱は?

「働き方改革」の3つの柱は、「長時間労働の是正」、「多様で柔軟な働き方の実現」、「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」だ。まず「長時間労働の是正」は、日本の常態化した長時間労働による健康被害や過労死の増加、出生率低下などの問題を解決するための施策だ。次に「多様で柔軟な働き方の実現」では、育児・家事と仕事の両立支援や高齢者の就労環境整備、フレックスタイム制などの柔軟な働き方の普及を目指している。最後に「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」では、正規・非正規雇用間の処遇格差を是正し、「同一労働同一賃金」の原則に基づいた公平な労働環境の実現を図っている。

●「働き方改革」の11項目とは?

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」における主な成立・改正・変更内容は下記の通りだ。
(1)時間外労働の上限規制導入
(2)「勤務間インターバル制度」の導入促進
(3)年5日の年次有給休暇
(4)月60時間を超える残業に対する割増賃金率引き上げ
(5)労働時間の客観的把握
(6)フレックスタイム制の清算期間延長
(7)高度プロフェッショナル制度の導入
(8)産業医・産業保健機能の強化
(9)不合理な待遇差の禁止
(10)非正規雇用労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
(11)行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続の規定の整備
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