「3人のレンガ職人」に見るモチベーションの違い
引用してみよう。(途中省略)
最後に、下図は筆者がセミナー等でよく使用する「3人のレンガ積み職人の話」である。「モチベーションアップ」に関するものであるが、これを事業主側・従業員側ともに理解するようにしよう。
【HRプロ関連記事】
●「定年再雇用制度」の問題点とは。企業の考え方が“再雇用者のモチベーション”を削ぐ理由
まず、簡単にこの寓話のおさらいをしておこう。旅人が、とある街を旅していると3人のレンガ職人がレンガ積みの仕事をしていた。そこで、旅人はその3人に「何をしているのですか?」と質問した。その答えは次のとおりであった。
●2人目のレンガ職人「レンガの壁を作っています。1ヵ月働けば銀貨10枚稼げるし、面白くないけど家族を養わないといけないからね。」
●3人目のレンガ職人「街中の人が喜ぶ大聖堂を作っています。自分が亡くなってからも、子供や孫たちが私の仕事を誇りにしてくれるようにね。」
つまり、一人目のレンガ職人は、レンガ積みに目的意識などなく、ただ目の前の仕事を嫌々ながらやるだけに終始している。仕事と言いながら、それは作業といえるだろう。
そして、2人目のレンガ職人であるが、彼はサラリーマン的な考え方で働いている。家族を養うために働いているのだが、レンガを積む仕事ができていることに一定の感謝の気持ちを持っている。また、ある程度の目的意識を持って働くことができている。つまり、レンガ職人の仕事にありつけたことに感謝し、自分の仕事に納得して働いているタイプである。
3人目のレンガ職人は、自分の仕事に誇りをもち、明確な目的意識と将来を見据えてレンガ積みをしている。高いモチベーションを維持しながら、仕事が自分の夢と一致している働き方である。一番理想的な働き方であり、一番自己成長できる働き方とも言えよう
このように、意識高く仕事をしているのは、3人目の職人である。目的がしっかりしていて、その目的を果たすために自分がどのような貢献ができるのか、世のために尽くすことで得られる達成感・充実感を自ら考えるからこそ、仕事に積極的に関わる姿勢が見て取れる。良い仕事をするために、アイデアや改善策が次々と出そうな働き方である。
彼ら3人のレンガ職人の後日談は以下のとおりである。
●2人目のレンガ職人はレンガ積みよりも収入のいい仕事に転職したが、危険を伴う屋根の上での仕事をしていた。
●3人目のレンガ職人は出世し、現場の施工管理者として仕事を任されるようになり、大聖堂には彼の名前が刻まれ、称賛を浴びた。
読者の皆さんが想像したとおりだろう。1人目はともかく、2人目のレンガ職人のような人は現代社会の会社員でも多数を占めている可能性がある。そうであれば、経営者あるいは管理職は、社員のマネジメントとして何をどうすれば良いのだろうか?
経営者や管理職は「3人目のレンガ職人」を育てるために何をするべきか
2人目のレンガ職人のような社員たちが多数派を占めているような会社であれば、このレイヤーが活躍できれば会社は活性化する可能性は高まる。しかも、この集団は離職・退職・転職予備軍であることが多い。従って、経営者・管理職にとって、このレイヤーの底上げ、つまり3人目のレンガ職人づくりが急務であるはずだ。ならば、何をどうすれば良いのか? それにはまず、企業の「あるべき姿・なりたい姿・目的・目標・夢・志・方向性」などをビジョンとして明確にし、社内研修や社内告知でこれらを徹底的に現場レベルまで落とし込むことが必要だ。そして、目的達成のための模範的行動に誘う人事制度を構築・運用し、ビジョンに共感する人財の戦略的採用・配置などを行う必要があるだろう。
また、事業計画・戦略策定への社員の参画を促し、中間管理職に裁量権を与え、権限委譲をドラスティックに行うことも、目的意識向上に効果的である。つまり、自分の意思意向が会社に必要とされていると思わせると「やらされ仕事」が「自分の仕事」に変わり、仕事に価値を見出すことができるようになるわけだ。このような企業文化が醸成されてはじめて、目を輝かせて、意欲的に働くことのできる3人目のレンガ職人が育つようになるだろう。
- 1