株式会社帝国データバンクは2024年11月20日、全国の企業を対象に実施した「リスキリング」に関する調査の結果を発表した。調査期間は2024年10月18日~31日で、1万1,133社から回答を得ている。調査結果から、企業における現状のリスキリングの取り組み状況や内容、課題などが明らかになった。
【リスキリングの現状】「取り組んでいる」企業は1割に満たず…“取り組み意向”も2割未満に。課題はやはり“リソース不足”か

リスキリングに取り組んでいる企業は1割未満。「情報サービス業」や「金融業」で多い傾向

人的資本経営の考え方が浸透した昨今、「人への投資」による組織の生産性向上が、企業経営上の一大テーマとなっている。この人的投資の一つの形として、特にその必要性が叫ばれているのが「リスキリング」だ。2022年に政府がリスキリング支援として「5年間で1兆円を投じる」との意向を発表し、助成金などの支援策を展開し始めたことで、注目度は一層高まっている。では、企業における現状のリスキリングの取り組み状況や内容はどのようになっているのだろうか。

はじめに帝国データバンクが、「リスキリングの取り組み状況」について尋ねたところ、「取り組んでいる」との回答は8.9%と、1割に満たない結果だった。また、「取り組みたい」の17.2%を合わせても、リスキリングに積極的な姿勢を示した企業は合計26.1%と、およそ4分の1にとどまっている。

なお、「取り組んでいる」とした企業の割合を業種別に見たところ、「情報サービス」が最多の20.5%で、唯一の2割台となった。次いで、「金融」も19.5%と2割に迫り、同2業種が突出して高い結果となっている。
リスキリングの取り組み状況

企業規模によって「リスキリングの取り組み状況」に差も

同社はあわせて、「リスキリングの取り組み状況」を企業規模別に比較している。このうち、「取り組んでいる」とした企業の割合を見ていくと、大企業が15.1%で最も高く、中小企業は7.7%、小規模企業では6%にとどまった。また、「取り組みたいと思う」とした企業についても、企業規模が大きいほどその割合は高かった。
リスキリングの取り組み状況(企業規模別)

取り組み内容は「従業員のスキルの把握、可視化」が52.1%で最多に

次に同社は、はじめの質問でリスキリングに積極的な姿勢を示した(「取り組んでいる」または「取り組みたいと思う」とした)企業に対し、具体的な「取り組みの内容」を尋ねた。その結果、最多となったのは「従業員のスキルの把握、可視化」で52.1%だった。なお、他のほとんどの項目でリスキリングに「取り組んでいる」企業の方が高い割合を示したものの、「従業員のスキルの把握、可視化」については「取り組みたいと思う」企業の方が高い割合になったという。同社はこの結果について、「従業員の技術習得のために講習の受講や資格取得を促している」(電気機械器具修理、千葉県)とのフリーコメントを挙げ、「まずは従業員の状況を把握したうえで、コメントのような進め方をしているようだ」としている。

他方、2位となったのは「eラーニング、オンライン学習サービスなどの活用」で、47.5%と半数に迫った。そのほか、「給付金・助成金などの申請・受給」は17.5%と低い結果になっている。
取り組みの内容

取り組む上での課題は「時間」や「人材」などの“リソース不足”が目立つ

最後に、全企業に対して「リスキリングに取り組む際の課題」について尋ねた。その結果、「対応する時間が確保できない」が42.1%で最多となり、次いで「対応できる人材がいない」が38.9%となった。

また、「取り組んでいる」企業と「取り組んでいない」企業それぞれの課題の傾向を同社が分析すると、「取り組んでいる」企業では“従業員のモチベーション維持”に課題がある企業が多く見られたという。一方、「取り組んでいない」企業では時間・人材・ノウハウ・費用などにおける“リソース不足”が大きな課題となっていたとのことだ。
リスキリングに取り組む際の課題
本調査では、現時点でリスキリングに取り組んでいる企業は1割に満たず、取り組み意向のある企業を含めても、リスキリングの取り組みに前向きな企業は全体のおよそ4分の1にとどまる結果となった。また、リスキリングに取り組む際の課題としては「時間がかくほできない」や「対応できる人材がいない」など“リソース不足”が目立ち、これは特にリスキリングに取り組んでいない企業において顕著だった。リスキリングは労働生産性を高める効果に期待できることから、人手不足解消の有効打にもなり得る。現状では取り組みが進んでいるとは言えない日本企業におけるリスキリングは、今後どのように発展していくのだろうか。

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