“60歳定年”が最多の73%も、“65歳への定年延長”は進んでいる状況
企業におけるシニア人材の割合が上昇する中、2021年4月に改正された「高年齢者雇用安定法」では、企業に対して「70歳までの就業機会の確保」が努力義務として求められている。今後も増加が見込まれるシニア人材の活用に向け、企業にはこれまで以上の意識変革が必要とも言えるだろう。では、「高年齢者雇用安定法」の改正以降、企業の人事施策としてシニア人材の活用はどのように変化しているのだろうか。はじめにプロティアン・キャリア協会は、調査対象の企業における「定年の年齢」を尋ねた。すると、「60歳」が73%で最多となり、次いで「65歳」が22%となった。現状では“60歳定年”が主流であるものの、“65歳への定年延長”も進んでいる様子が見て取れた。
この結果に対し同協会は、「この傾向は、日本の労働力不足に対する企業の積極的な対応を示唆しており、企業がシニア世代の豊富な経験や専門知識を高く評価し、組織に活かそうとしている姿勢が見られる」との見解を示している。
シニア社員に対するキャリア研修を「実施している」企業が半数以上に
次に同協会が、「シニア社員に対するキャリア研修を実施しているか?」と尋ねたところ、52%の企業が「実施している」と回答した。そこで、シニア社員に対するキャリア研修を実施しているとした企業に対し、「どのような受講者を対象としているか?」と尋ねている。その結果、「シニア社員対象者全員」が42%、「希望するシニア社員」が39%、「指名されたシニア社員」が11%となった。
キャリアコンサルタント活用状況は「金融業」や「製造業」で高く
続いて、「キャリアコンサルタント活用状況」について尋ね、回答結果を企業業種別に比較している。すると、「活用している」との回答割合が最も高くなったのは金融業で67%、次いで製造業が63%となった。この2業種においては、急速な技術革新に対応するため、従業員は常にスキルアップやキャリア転換が求められているという。こうした背景も踏まえて同協会は、「これらの企業は、短期的な研修だけでなく、長期的な視点で社員一人ひとりの成長を支援し、外部の専門知識も積極的に活用していると考えられる」としている。「定年後再雇用制度」を設けている企業は85%に
最後に同社が、「定年後再雇用制度を設けているか?」と尋ねた結果、85%が「設けている」と回答した。この結果と関連して同協会は、従業員の多様なキャリアパスを支援するため、組織内キャリア開発と並行して組織外におけるセカンドキャリアの準備をサポートする仕組みを構築することについて、「個々の従業員のキャリア目標と、企業の経営戦略の両立を図る上で、極めて有効なアプローチ」であるとの考えを示している。また、そのほかに有効な雇用創出機会として、「早期退職者向けのアルムナイ制度」や「プロジェクトベース契約」なども挙げた。