労働時間の削減に要した費用の一部を助成
『働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)』とは、2024年4月1日から時間外労働の上限規制が適用された各業種を営む中小企業を対象に、労働時間の削減等に向けて環境整備に取り組んだ費用の一部の助成を受けられる制度である。具体例で考えてみよう。例えば、運送業を営む中小企業が、運行データの記録方式を従来のアナログ式運行記録計からデジタル式運行記録計に変更し、労働時間を削減したとする。このようなケースでは、デジタル式運行記録計の導入にかかわる費用の一部の助成が受けられるものである。
上記を含め、「費用が助成される取り組み」は次のとおりである。
2)労働者に対する研修、周知・啓発
3)外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士等) によるコンサルティング
4)就業規則・労使協定等の作成・変更
5)人材確保に向けた取り組み
6)労務管理用ソフトウェアの導入・更新
7)労務管理用機器の導入・更新
8)デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
9)労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
『時間外・休日労働の上限設定』の最大助成額は250万円
本助成金を受けるには、所定の成果目標の中から自社の目標を選択し、選択した目標の達成に向けて前述の「費用が助成される取り組み」を実施しなければならない。2024年4月からの規制適用に対応するために『時間外・休日労働の上限設定』を行う場合には、36協定の「延長できる労働時間数の上限(時間外労働と休日労働の合計時間数)」を月80時間以下に短縮して設定し、所轄労働基準監督署長に届け出ることが成果目標と定められている。この目標を達成した場合、実施した取り組みに関する費用の合計額の4分の3が助成される。取り組みに合計100万円を要したのであれば、75万円の助成を受けられるわけだ。時間外労働の上限規制に対応するための100万円相当の取り組みが、25万円ほどの企業負担で行えることになるのである。
加えて、常時使用する労働者数30人以下の中小企業が前述の取り組みの6から9を実施した場合に限っては、費用の合計額が30万円を超えるのであれば助成割合が5分の4に引き上げられることになっている。100万円相当の機器等の導入に対し、80万円の助成を受けられるわけである。
なお、『時間外・休日労働の上限設定』を実施した場合の助成金の最大額は、36協定に設定した「延長できる労働時間数の上限(時間外労働と休日労働の合計時間数)」によって異なっている。例えば、取り組みを実施する前の上限が月80時間超、取り組みを実施した後が月60時間以下であれば、受け取れる助成金の最大額は250万円となる。詳細は下表のとおりである。
利用できるのは労働者数300人以下等の中小企業のみ
『働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)』は、『時間外・休日労働の上限設定』以外にも、以下のようなケースで利用可能である。●「時間単位の年次有給休暇制度」を新たに導入し、あわせて次の特別休暇を1つ以上新たに導入する。
・病気休暇
・教育訓練休暇
・ボランティア休暇
・その他特に配慮を必要とする労働者のための休暇(不妊治療のための休暇、時間単位の特別休暇等)
●業種等に応じ、9時間以上または10時間以上の「勤務間インターバル制度」を導入する。
●建設業で4週における所定休日を1日~4日以上増加させる。
●病院等で医師の働き方改革の推進として「労務管理体制の構築等」「医師の労働時間の実態把握と管理」を行う。
ただし、建設業・運送業・病院等・砂糖製造業を営む企業であれば、必ず本補助金を利用できるわけではない。利用が可能な企業は、「常時使用する労働者数が300人以下もしくは資本金または出資額が3億円以下(病院等については5,000万円以下)」の中小企業に限定されている。
労働者数と資本金・出資額のいずれの条件も満たさない企業は、利用が認められない。また、本補助金の利用に当たっては「労災保険が適用されていること」、「年5日の年次有給休暇取得について、就業規則等が整備されていること」も必要である。
『働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)』の申請受付は、2024年11月29日(金)までである。今からでも利用が可能なので、対象企業は本補助金を活用した取り組みを検討してはどうだろうか。
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