離職理由トップ3は「労働条件が悪い」、「人間関係がいまいち」、「賃金が低い」
厚生労働省の「令和4年雇用動向調査」によると、2022(令和4)年1年間の“転職入職者が前職を辞めた理由”は、「その他の個人的な理由」(全体19.6%)を除くと、次のとおりです。●第2位:職場の人間関係が好ましくなかった(男性8.3% 女性10.4%)
●第3位:給料等収入が少なかった(男性7.6% 女性6.8%)
そこで、離職原因の「労働条件」、「職場の人間関係」、「賃金」それぞれに対する解決方法を考えてみたいと思います。
1)労働条件への不満:見直しは「休日」から
「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が、離職理由の第1位。これを解決するためには“労働条件を向上させればよい”ということになります。労働条件には、「労働時間」、「休日」、「休暇」、「契約期間」、「賃金」、「福利厚生」、「定年制」、「退職」などがあります。離職者によって、不満をもつ労働条件は異なりますが、最近の傾向として、私は「休日」がポイントになると考えています。なぜなら、求職者の58.5%が“仕事を探した時に重視した内容(絶対条件)”として「勤務日数(休日・休暇)」を挙げており、最も高い結果がでているからです(ジョブズリサーチセンター『求職者の動向・意識調査2023基本調査報告書』)。
背景には、ワークライフバランスの広がりによって、休日に対する労働者の意識が高まっていること、また労働時間については「残業時間の上限規制」もはじまり、長時間労働を解消する動きが多くの企業で見られること等があると考えられます。
そこで、離職対策として行うことは、「週休2日制」にすることです。業種や職種によっては、「それは難しい」という声も聞こえてきそうですが、時代的に週休2日は最低ラインだと考えます。
ちなみに、政府の「骨太方針2022」には“選択的週休3日制”という言葉も出てきています。また、楽天インサイト株式会社の『休暇に関する調査』(2023.05.19)によると、希望の休日数は「週3日」が最も多いという結果も見られます。
すでに「完全週休2日」や「年間休日数が130日」など、休日がある程度充実している会社は、週休3日制へのニーズを調査してみるのはどうでしょうか。働き方の選択肢が増えることで、離職を防ぐことができるかもしれません。
また、「休日を増やしたら副業しないか心配」という経営者の声も聞くのですが、上記調査によると、“今よりも休日が増えてほしい”と希望する人にその理由を聞くと、「趣味の時間を増やしたいから」(49.6%)が第1位で、「副業の時間を増やしたい」(13.4%)は第10位という結果となっています。このことから、あまり副業を心配する必要はないと思われます。
2)人間関係の悩み:職場の心理的安全性をを高めるためにどうする?
心理的安全性研究の第一人者であるエイミー・C・エドモンドソン氏によると、心理的安全性とは、「みんなが気兼ねなく意見を述べることができ、自分らしくいられる文化」と定義されています。私は、職場において「人間関係が良好な状態」とは、まさに、この「気兼ねなく自分の意見や気持ちが言い合える状態」だと考えます。「上司に意見を言うと怒られる」、「社長には何を言っても無駄」、「私の立場ではこれ言ったら失礼かな」、「人手不足なのに育児休業なんて言いにくいなあ」という職場だと、エドモンドソン氏がいう恐怖と諦めに支配された職場となります。場合によってはパワーハラスメント(パワハラ)などのハラスメントとなる可能性もあるでしょう。
では、どうすれば気兼ねなく自分の意見や気持ちが言い合える状態を作れるのでしょうか。次のような対策を行ってみてください。
(1)ハラスメントに対しては厳格な態度で臨む
パワハラ、セクハラなどのハラスメントは人権侵害行為。「人間関係を構築する」という前提が壊れてしまいます。厚生労働省の「パワハラ指針」でハラスメント防止措置の内容を確認し、定期的に管理職、一般職に対してハラスメント防止研修を行いましょう。また、ハラスメント行為者に対しては、適切な処罰を与えることも必要です。社員はそのような会社の姿勢を見ているものです。(2)感謝を示す
意見を言う、気持ちを伝える、というのは勇気がいることです。そのため、その行為に対しては、まずは素直に「ありがとう」という言葉を掛け合うようにします。「的外れだなあ」、「忙しいのに今言うなよ」などと思うことはあるでしょうが、それを言うとしても、まずは感謝の言葉の後に伝えるようにしてみてください。また、サンクスカードの導入なども効果的でしょう。(3)アサーティブコミュニケーションを学ぶ
相手のことを尊重しながら自分の意見や気持ちを伝えることを、アサーティブコミュニケーションといいます。職場の全員が学び、社内におけるコミュニケーションの共有言語にすると効果的です。3)賃金への不満:“内発的な動機付け”を含めてどう解決するか
まずは、みなさんの業界や地域における賃金水準を調べてみましょう。求人広告やハローワークの求人票を見ると、大体の水準が分かると思います。そのうえで、あまりにも劣っていたら賃金のベースアップを検討した方がよいでしょう。しかし、賃金アップは外発的な動機付けであって、不満解消の効果は一時的で持続しないという心理的研究があります。「仕事の報酬は仕事」という言葉もあるとおり、賃金以外に社員のモチベーションがあがるような内発的な動機付けが必要です。
例えば、「新しい仕事にチャレンジさせてみる」、「裁量を与える」というものです。仕事へのやりがいを感じることで、賃金の不満が解消されるかもしれません。ただ、“やりがい搾取”とならないように、ある程度賃金とのバランスを考慮する必要はあるでしょう。
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