不妊治療/産後うつ/乳がんなど、女性特有の健康課題は数多くあります。女性の職業生活を支え続けるために、このような健康課題に対して会社がどのように向き合っていくかが大切です。2022(令和4)年3月に実施された厚生労働省調査から、「会社として“更年期症状”について、具体的に何ができるか」を考えていきます。
女性の職業生活を支え続けるために、会社が従業員の「更年期」のためにできることとは

50代女性の約5割近くが「更年期」と向き合っている

まず、厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査基本集計結果(以下、調査結果)」では、50代女性については次のような結果が得られています。

50代女性の「更年期障害の可能性について」

●医療機関への受診により、更年期障害と診断されたことがある/診断されている:9.1%
●医療機関を受診はしたことがないが、更年期障害を疑ったことがある/疑っている:34.5%
●自分では気づかなかったが、周囲から更年期障害ではないか、といわれたことがある:3.6%
●別の病気を疑って医療機関を受診したら、更年期障害の可能性を指摘された:0.2%
合計:47.4%

※厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査基本集計結果」より

上記調査結果の4つの項目の合計について、50代男性では『15.9%』、そして30代女性では『9.5%』、40代女性では『31.9%』となっています。「更年期」は性別を問わず、また幅広い年齢において症状が現れるものですが、やはり女性に多い健康課題であり、50代をピークに、年齢を重ねるにつれて症状が現れやすいのも事実です。

「更年期症状」の緩和のために、実際にとっている手段は?

次に「更年期症状緩和のための手段」に関する質問です。こちらも50代女性に絞った結果をお伝えします。

50代女性が「更年期症状の緩和のためにとった手段」
※更年期症状が一つでもある回答者が対象、複数回答

●ストレスを溜めないように心がける:22%
●食事内容・栄養バランスに気をつけている:18.7%
●運動(ヨガなどを含む)をする:16.7%
●サプリメントを摂取する:13.7%
●医療機関で処方された薬の服用:13.6%
●リラックスできることをする(アロマテラピーなどを含む):12%
●市販薬の服用:9.4%
●マッサージやお灸などを受けに行く:8.2%
●漢方薬の服用:5.6%
●その他:1.2%
●特に何もしていない:41.7%

※厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査基本集計結果」より

まず、「特に何もしていない」の回答が『41.7%』と最も多いことが特徴です。女性の更年期の症状の代表的なものとして、汗をかきやすい/息切れ/動悸/眠りが浅い/めまい/疲れやすい/肩こりなどさまざまですが、その症状は一律ではなく、個人差もあります。そのため「何かをする必要まではない」と思っている人が多いことも考えられ、実際に調査結果では、50代女性の「症状があっても医療機関を受診していない理由」への回答のうち『70.2%』が、「医療機関に行くほどのことではないと思うから」と回答しています。

しかし、厚生労働省サイト「働く女性の心とからだの応援サイト(以下、厚生労働省サイト)」でも紹介していますが、『更年期は治療をすることが大切』です。サイトでは、仕事の能率が落ちる、体調が悪い、といった理由で仕事を継続できなくなって離職などをするおそれについて触れられており、その治療として、婦人科への受診やカウンセリングなどを勧めています。

会社がいかに「更年期」に関する情報を発信できるかがポイント

最後の調査結果として「更年期に関する情報」についてお伝えします。同じく50代女性に絞った結果となります。

50代女性「更年期に入る前にどのような情報がほしい(ほしかった)か」
※複数回答

●主な更年期症状に対する対処法:33.9%
●主な更年期症状の内容や程度:28.7%
●医療機関(婦人科等)を受診する目安:15.2%
●受診すべき診療科の情報:12.4%
●更年期症状について、相談できる先:10.4%
●医療機関(婦人科等)の特色や評判・口コミ等の情報:7.9%
●医療機関(婦人科等)での自身の症状の伝え方:6.3%
●医療機関(婦人科等)の診察内容(問診、触診、内診等)や受診にかかる費用:6.1%
●更年期症状について家族、学校、職場等への伝え方:3.5%
●その他:0.1%
●特にない:50.7%

※厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査基本集計結果」より

まず「特にない」が半数以上の回答ですが、逆に残り半数は「何かしらの情報がほしい(ほしかった)」ということにもなります。その中で多かったのが『主な更年期症状に対する対処法』、『主な更年期症状の内容や程度』といった更年期に関する基礎的な情報です。まずは会社として、「厚生労働省サイトを紹介する」、「社内報などで更年期に関する情報を発信する」などの対応をすることが考えられます。

次に、“医療機関に関わる回答”に関しては、会社として対応が難しいものも含まれていますが、例えば『医療機関(婦人科等)を受診する目安』や『医療機関(婦人科等)での自身の症状の伝え方』などは、会社だからこそ対応できる内容ともいえます。例えば「産業医と更年期に関しての知見を共有する」、「衛生委員会で更年期を取り上げる」などの取り組みは、更年期に関しての受診を勧める指針を示すことにもつながります。

さらに『更年期症状について、相談できる先』や、回答数こそ少ないですが『更年期症状について家族、学校、職場等への伝え方』については、更年期に関しての環境づくりが大切になっていきます。例えば「育児休業に関する取り組みを積極的に行う」だけでも、ワークライフバランスを推奨する組織風土が生まれ、それが間接的に仕事と更年期との両立をはかることができる組織風土にもつながります。

そして「女性活躍に関する取り組みについて、更年期に関しての方針を盛り込む」こともできれば、会社として女性の職業生活を支え続けることがより明確になっていくのです。

このように会社として幅広く「更年期」に関する情報を発信できるかが大切になります。

最後に、今回のテーマのまとめにもつながりますが、厚生労働省サイトでは「事業主の皆さまへ」として、次のように掲載されています。ぜひご一読ください。

事業主の皆さまへ

40~50代の更年期世代の女性は、キャリアも長く知識も経験も豊富な貴重な人材であると思います。以前は女性の早期退職が多かったため、あまりこの問題に直面することがなかったかもしれませんが、更年期症状の健康課題は職場にとっても重要なテーマとなってきました。 職場としてはまずは、更年期について基本的な情報を共有することです。 女性従業員には、自身のヘルスリテラシーを高めることで、症状が重い場合は治療を受けるという行動につながります。また周囲はこの世代に体調不良があることを理解することが大切です。そして、更年期症状による離職を防ぐために、体調の悪いときに活用できる職場の制度を検討していただければと思います。

※厚生労働省サイト「働く女性の心とからだの応援サイト」より引用
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