利用できる復職支援制度は3種類
復職支援制度といっても、実施機関によって実は様々な種類があります。ここでは3つの支援制度を紹介します。1)医療リワーク
例えば、骨折をした場合、前と同様の動きができるよう病院のリハビリに通います。そのリハビリの中で、同じ部位を骨折しないよう、周辺の筋肉の使い方等を指導されることもあると思います。医療リワークは、これのメンタル不調版と思っていただくとイメージしやすいでしょう。病状を回復することはもちろん、「再発しないためには何に気を付ければ良いか」等を、医療機関にて、医療スタッフによる、医学的リハビリ(治療)として実施します。医療専門職によるリハビリのため、健康保険や自立支援医療の制度を利用できますので、費用は患者(従業員)の一部負担となります。
2)職リハリワーク
職リハリワークは、地域障害者職業センターが実施する復職支援です。地域障害者職業センターとは、各都道府県に設置されている独立行政法人により運営されている施設です。この施設では、休職中の従業員・企業担当者・主治医の3者と合意形成をしながら、職場復帰のための活動やスケジュールをコーディネートしてくれます。大きなポイントは、費用が無料である点です。ただし、支援対象者は、雇用保険適用事業所に雇用されている休職中の方です。
3)職場リワーク
職場リワークとは、企業が、自社の従業員のために行う復職支援です。企業が主体となり、独自の復職支援のプログラムを策定・実施します。企業独自での実施が難しければ、外部のEAPサービス(従業員支援プログラム)を契約し、利用するケースもあります。主治医の診断書をもって自動的に復職させるのではなく、本当に復職させても問題ないか、安定就労が可能かの見極めの意味合いも強くあります。企業主体ですので、費用は企業負担です。
企業が独自に定める職場リワークの一例
前述の職場リワークでは、企業が独自に復職支援プログラムを検討します。この内容を休職・復職規程等に定める企業も少なくありません。以下では、制度の一例を紹介します。なお、名称は企業によって様々ですので、企業内で名称の定義を明確にしておくと認識違いを防ぐことができます。●通勤訓練
自宅から職場付近まで、復職時に想定される方法で移動し、職場付近で一定時間過ごした後に帰宅するものです。名称の通り、通勤に特化した訓練です。●試し出勤
職場に出勤し、座席等で過ごすだけの訓練です。業務は行いません。●模擬出勤
通常の勤務日・勤務時間に、リワーク施設や図書館等で過ごしてもらう訓練です。これらの職場リワークは、非常に簡単なもののように思えるかもしれませんが、メンタル不調の従業員は、通勤中に不調になる、職場に行くと不調になる、というケースが多いです。そのため、このような復職支援制度を企業で定め、復職可否の判断の一部として利用することがあります。
復職支援で注意したい点
今回紹介したような制度を利用する場合には、いくつか注意したいことがあります。まずは、復職支援制度を利用する期間が休職中なのか復職後なのか、を明確にすることです。企業は制度利用状況により復職可否を判断するつもりでも、従業員が制度利用の開始を復職と認識しているとトラブルになりかねません。復職までのフロー、復職支援制度の位置づけ、復職支援制度の期間等のスケジュールをきちんと明示しましょう。
また、企業リワークは、休職中であれば業務を行わないことを前提とします。たとえ休職中だったとしても、業務を行わせると当然賃金支払い義務があります。例えば、前述の試し出勤で座席等で過ごしているときに、上司や同僚が「席に座っているだけならこの業務をお願い」のように指示を出し、対象従業員がその指示に従ってしまうと、その時間は賃金支払いが求められます。賃金支払いがあると、傷病手当金の支給申請にも影響してきますので、担当者・本人・職場(上司や同僚)にも、復職支援制度の内容は徹底して周知おきましょう。
これらに加え、復職支援制度利用中の通勤手当の支給や労災の対象可否も、従業員には説明しておきます。原則、休職中は労働者は労働を免除されており、賃金の支払いもありません。そのため、試し出勤の通勤途中や、職場やリワーク施設で過ごしている時間にケガ等をしても、業務に従事していなければ、原則、労災が適用されません。
また通勤手当は法律で定められた手当ではありませんので、休職中の扱いも特段定められていません。自社ではどのような位置づけで、復職支援制度利用中に支払うべき手当なのかどうか、明確にしておきましょう。
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