「地域別最低賃金」の改定状況を整理
2023年度の「地域別最低賃金額」は、下表のとおりとなっています。改定額の全国加重平均額は1,004円(昨年度961円)となり、43円の引上げとなりました。これは1978年度に現在の目安制度が始まって以降で最高額となります。なお、最低賃金の地域間格差も課題とされていますが、最高額(1,113円)に対する最低額(893円)の比率は80.2%(昨年度79.6%)となり、9年連続の改善となりました(昨年度は79.6%)。
従業員に支払っている賃金が「最低賃金額以上かどうか」を確認する方法は?
最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金です。具体的には、実際に支払われる賃金から次の賃金を除外したものが最低賃金の対象となります。(2)1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
(3)所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
(4)所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
(5)午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
(6)精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
●「最低賃金額以上」かどうかを確認する方法
「従業員に支払う賃金が最低賃金額以上となっているかどうか」を調べるには、「最低賃金の対象となる賃金額」と「適用される最低賃金額」を以下の方法で比較します。(1)時間給制の場合
時間給≧最低賃金額(時間額)
(2)日給制の場合
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
※ただし、日額が定められている特定最低賃金が適用される場合には、「日給≧最低賃金額(日額)」となります
(3)月給制の場合
月給÷1ヵ月の平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
(4)出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合
「出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額」を、「当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数」で除して時間当たりの金額に換算し、最低賃金額(時間額)と比較します。
(5)上記(1)、(2)、(3)、(4)の組み合わせの場合
例えば、基本給が日給制で、各手当(職務手当など)が月給制などの場合は、それぞれ上記(2)、(3)の式により時間額に換算し、それを合計したものと最低賃金額(時間額)を比較します。
各企業の「賃上げの実施状況」や「賃上げ予定」は?
現在は、「賃上げをどのようにしようか」と検討されている経営者の方が増えてきています。そこで、産労総合研究所の「2023年 春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査」の結果をご紹介いたします。●賃上げを実施するとした企業は8割
2023年の自社の賃上げ予定●「賃上げ(定期昇給を含む、以下同じ)を実施する予定」76.8%(前回調査70.3%)
●「賃上げは実施せず、据え置く予定」1.7%(同2.6%)
●「賃下げや賃金カットを考えている」0.4%(同0.5%)
●「現時点ではわからない」20.2%(同25.6%)
●物価上昇分を賃金改定で考慮する企業は38.6%
昨年から資源高や円安傾向を背景とした物価の上昇が続いています。「40年ぶりともいわれる物価上昇を、2023年の賃金改定で考慮するかどうか」をたずねたところ、「考慮する」は38.6%、「考慮しない」16.7%、「わからない」44.2%でした。現時点では態度を決めかねている企業も多いようです。●コスト上昇分を価格等に転嫁できている企業は1割
賃上げを可能とするためには、「原材料などの仕入れコストを、商品やサービス価格に転嫁できているかどうか」が重要な意味を持っています。調査結果では、「ほぼ(7~10割)転嫁できている」と答えたのはわずか14.6%に過ぎず、「半分程度(5~7割)転嫁できている」が23.6%となりました。では、企業は賃上げに伴う環境を整えるために、どうすればいいのでしょうか。「同じことを繰り返す業務」については、業務改善やシステムの導入など、環境の整備を検討していくことが必要でしょう。
最低賃金が上がるということは、一方で労働者は「最低賃金以上に見合った仕事ができなければ、採用されなくなり、仕事がなくなる」ということです。また、賃上げが不可能な企業は、人が集まらずに事業継続が困難になる可能性がありますので、コスト上昇分を価格等に転嫁できるように、業務改善したり、付加価値のある業務を増やすなどの検討をしていきましょう。
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