「アイスブレイク」の意味
「アイスブレイク」とは、初対面の人との会議、商談の場など、緊張感のある場を和ませるためのコミュニケーション方法のことである。堅い雰囲気をアイスに例え、それを壊すということで「アイスブレイク」と名付けられている。「アイスブレイク」は、具体的には身近な話題での会話、簡単なゲームなどが用いられることが多い。その場の緊張をほぐし、メンバー同士の交流がスムーズになるため、通常のパフォーマンスを発揮しやすくしたり、参加者との信頼関係を築くきっかけになったりといった効果が期待できる。
ビジネスで「アイスブレイク」が役立つ場面
実際に「アイスブレイク」がどのような場面で役に立つのか見ていこう。●面接
受験者の緊張をほぐすために実施すると効果的である。緊張がほぐれると、受験者から本音が出てくることも期待できる。●ミーティング
意見がなかなか出ないミーティングでも、「アイスブレイク」を実施することで話しやすい雰囲気作りができる。●研修
研修が始まる前に「アイスブレイク」を実施すると、参加者と講師側の距離が縮まることが期待できる。また、新入社員研修など、初対面の参加者が集まる場合、「アイスブレイク」で参加者同士が親しくなることもできる。●セミナー
場の雰囲気を盛り上げるために活用するとよい。また、活発な意見交換をしてもらいたいセミナーでは、話しやすい空気を作ることができる。●商談
堅い雰囲気を和らげるために「アイスブレイク」を利用することが多い。会話を通じ、商談相手の人柄を知ることもできる。「アイスブレイク」の効果
つぎに、「アイスブレイク」の効果について詳しく説明する。●緊張感がほぐれ、パフォーマンスを高められる
初対面の参加者同士の研修や会議、初めての商談などでは、緊張で会話が進まない、積極的に意見が出てこない、といった事態が想定される。そういった場合に「アイスブレイク」を実施すると、参加者の緊張がほぐれ、活発な意見交換もしやすくなる。●互いの理解が深まりコミュニケーションが円滑になる
「アイスブレイク」を行うことにより、相手がどのような人物かを知ることができる。昨今はリモートワーク・リモート会議の普及で、直接会ったことがない人と仕事を共に行うことも増えているが、リモート会議の初めに「アイスブレイク」の時間を挿入することで、互いの人柄を知れるだけではなく、コミュニケーションの円滑化も図ることができる。●参加者が主体的になる
研修や会議などでは、「聞いているだけ」、「その場にいるだけ」という人も生まれがちだ。メンバーに積極的に参加してもらいたいのであれば、「アイスブレイク」を実施することでコミュニケーションを取ることもでき、自分も参加者の一人だという意識付けができる。「アイスブレイク」に使えるネタやゲームの例
「アイスブレイク」を実施する場合、具体的には何を行えばいいのだろうか。ここでは、トークの例やゲームについて紹介する。●使いやすい「アイスブレイク」トークのネタ例
「アイスブレイク」では、使いやすいテーマの頭文字をつなげた「木戸に立てかけし衣食住」を心がけてトークを行うとスムーズだ。その内容は以下となる。キ:季節・気候
ド:道楽・趣味
ニ:ニュース(時事ネタ、業界のトレンドなど)
タ:旅
テ:テレビ
カ:家族
ケ:健康
シ:仕事
衣:衣類(相手の衣服を褒める)
食:食事(好きな食べ物・おすすめの店など)
住:住居(出身地・居住地など)
それぞれ具体的に見ていこう。
・キ:季節・気候
季節の話は誰にでも使えるテーマである。季節の話から、気候や相手の話にまでつなげることも可能だ。緊張した雰囲気も和み、相手の趣味や人柄を知ることもできる。
「暑くなりましたね。夏休みはどこかに行きますか?」
・ド:道楽・趣味
趣味や好きなことについての話題も、「アイスブレイク」での会話で利用できる。相手の趣味を知るだけでなく、自身との共通点探しにも役立つ。
「Aさん、フットサルをされているそうですね。うちの会社でもチームを作ろうかという話になっていまして……」
・ニ:ニュース(時事ネタ、業界のトレンドなど)
ニュースに関する話題はどの年代の人にも通じる。自身や相手の仕事に関するニュースにも敏感になっておきたい。
「御社の新商品、評判がいいようですね。新聞で見ましたよ」
・タ:旅
旅行に関する話題も「アイスブレイク」で広がりやすい。自分が話すだけでなく、相手の話も聞き出せるとなお良い。
「正月にAさんのご出身の〇県に旅行に行こうかと考えているのですが、おすすめの食べ物はありますか?」
・テ:テレビ
テレビに関するネタも会話の糸口にしやすい。
「最近、○○というドラマが人気みたいですね。私はまだ見たことがないのですが、Aさんはご覧になったことありますか?」
・カ:家族
家族構成が似ている者同士であれば、家族ネタは親しくなるきっかけにもなる。ただ、人によっては家族の話をしたくない、という場合もあるため、話題にする際は相手や状況を十分に考慮しよう。
「Aさんのお子さん、小学校1年生でしたよね? うちも同じ学年です」
・ケ:健康
特に年齢が高い人が興味を持ちやすい話題といえる。ただし、体調が万全ではない人に「健康自慢」をすると角が立つため、見極めながら話を進めていきたい。
「健康診断で引っかかっちゃいまして……。Aさんは健康診断をもう済まされましたか?」
・シ:仕事
会議、商談の場であれば、仕事の話はしやすいだろう。「アイスブレイク」として活用する場合は、話を長引かせないためにも、本格的な議論にしないよう気を付けたい。
「弊社では『冬のオフィスカジュアル』を導入するという話も出ているみたいですよ。御社ではどうですか?」
・衣:衣類
相手の衣服・持ち物を褒めると好感を持たれやすいため、ぜひチェックしておきたい。
「そのかばん使いやすそうですね。私も探しているのですが、なかなかいい物に出会えなくて……」
・食:食事
好きな食べ物やおすすめの店の話は相手との距離を縮めやすい。会話ネタとしても非常に使いやすいといえる。
「最近カレーにはまっているのですが、おいしい店をご存じないですか?」
・住:住居(出身地・居住地など)
出身地や住まいの話も出しやすい話題といえる。相手との共通点も見つけやすい。
「Aさん、〇〇地方出身だそうですね。私も同じです」
●「アイスブレイク」に役立つゲーム
「アイスブレイク」は会話だけでなく、ゲームを行う場合もある。雰囲気を和ませ、相手との距離を縮めるのにおすすめのゲームを紹介する。・つみき式自己紹介
参加者を並べ、一人ずつ自己紹介をしてもらう。一人の自己紹介が終わると、次の人は「〇〇出身のAさんの隣の、Bと申します」というように、「前の人の自己紹介にコメントしてから自己紹介」を行う。他の人の特徴を覚えやすく、参加者同士が打ち解けるきっかけにもなる。
・くじ引き式自己紹介
くじにテーマを書いておき、参加者に引いてもらう。参加者は書かれたテーマに沿って自己紹介を行うというものだ。定型的な自己紹介にならず、参加者の人柄が分かるため、場の雰囲気が盛り上がりやすい。
・他己紹介
他己紹介とは、ペアになった相手の紹介を皆の前で行うというゲームである。ペアの人の名前・部署・趣味等を聞き出すことで、自然と親しくなるきっかけにもなる。
・GOOD&NEW
皆の前で24時間以内に起きた「良かったこと」、「新しい発見」を短い時間で発表するというゲームである。前向きな雰囲気や連帯感が生まれやすい。
・共通点探し
ペアを作り、相手と自分の共通点を探すというゲームである。勝敗を決めるのであれば、「共通点を多く見つけたペアの勝ち」などルールを決めておくとよい。インタビューを通じて、仲を深めることができる。
・流れ星
参加者に紙を配り「流れ星」「山」「月」など、同じテーマで絵を描いてもらう。最後に皆で見せ合い、その違いを楽しむというゲームである。お互いの違いや共通点を認識できるという効果がある。
・心理テスト
司会者が問題を出し、参加者に答えてもらう。その回答から人の本音が分かるというゲームである。ただ、本当に人の性格や本音を診断するのではなく、遊びの範囲で行うことが重要である。
・子ども時代の写真クイズ
参加者に子どもの頃の写真を持ってきてもらい、司会者が提示する写真が誰のものかを当てるゲームである。子どもの頃の写真から思い出話などにつなげることもできるため、参加者同士が親しくなるチャンスを作ることができる。
「アイスブレイク」の注意点や避けたいテーマ
「アイスブレイク」の実施は、会議や研修の良い雰囲気作りに役立つが、注意点や避けたいテーマもあるため押さえておきたい。●「アイスブレイク」を行う際の注意点
・目的を明確にする「アイスブレイク」は、漫然と実施するのはなく、「参加者同士の自己紹介のため」、「活発な意見交換を促すため」など、目的を明確にして行うべきである。「アイスブレイク」自体が盛り上がり、会議など本来の目的がゲームの延長線上になってしまうことを避けるべきだろう。「アイスブレイク」実施前に参加者に目的を説明しておくと、スムーズに進行しやすい。
・時間を決める
「アイスブレイク」が長引き、場の空気が間延びしてしまうことのないよう、短時間で行い、本来の目的へと意識を切り替えることが重要である。終了時間を決め、事前にアナウンスしておくとよい。中には「アイスブレイク」が不要と考える参加者がいることも予想されるため、そのような人たちへの配慮も忘れず、あくまで雰囲気づくりのきっかけであることに留意しよう。
・相手や場面を見極める
重いテーマの会議、短時間の会議の場合など、「アイスブレイク」が本題の妨げになる場合もある。実施する際は、相手や場面を見極める必要がある。
・全員が参加できるテーマを選ぶ
良い雰囲気づくりのためには、特定の人にしかわからないテーマではなく、全員が参加できるものを選ぶことも重要だ。「アイスブレイク」の効果を高めるためには、人数に合ったゲームを選択するべきだろう。
●「アイスブレイク」で避けたいトークテーマ
あくまで、雰囲気をよくするための「アイスブレイク」。当然、人を選ぶような避けたいテーマもある。こちらも押さえておこう。・政治
支持政党、苦手な政党がある人も多い。できれば話題にするのは避ける方がよい。
・宗教
政治の話題と同様、個人の信条が関わるテーマのため、避ける方がよい。
・学歴
「出身校について他人に知られたくない」と考える人も多い。こちらからは話題に出さない方がよいだろう。
・愚痴
相手が返答に困るような愚痴、不快になるような愚痴も話題にしない方がよいといえる。
・スポーツ、芸能
応援するチーム・タレントが違うことで、対立の原因ともなりかねない。また、相手がそのスポーツやタレントに興味がない場合、話題が広がりにくいといった弊害もある。
まとめ
「アイスブレイク」は、簡単なトークやゲームを用いることで、会議や研修の場の雰囲気を良くするために使われる手法のことである。いくつか実践しやすいテーマを紹介したが、参加者の顔ぶれや人数を確認し、どの方法が最適なのかを考えたい。なお、すぐにでも本題に入りたい会議や重いテーマの会議などの場合は避けるなど、実施する際は、相手や場面を見極める必要がある。効果的に実施すれば、心理的安全性を高め、意見を交わしやすくする効果も期待でき、チームビルディングにも役立つだろう。よくある質問
●「アイスブレイク」の効果は?
会議、商談の場で「アイスブレイク」のコミュニケーション法を取り入れることで、「緊張感がほぐれ、パフォーマンスを高められる」、「互いの理解が深まりコミュニケーションが円滑になる」、「参加者が主体的になる」などの効果が得られる。●「アイスブレイク」の注意点は?
「アイスブレイク」をする際には、「目的を明確にする」、「時間を決める」、「相手や場面を見極める」、「全員が参加できるテーマを選ぶ」などのことに注意が必要だ。また、政治や宗教、学歴、愚痴、スポーツ、芸能などの人を選ぶような話題も雰囲気を悪くする恐れがあるため避けたい。- 1