緩やかに変化しつつあった日本の働き方や企業のあり方は、コロナ禍を経て変化が加速した。従業員の価値観は多様化し、個人と組織の関係性も変容している。今回、大正大学准教授 大橋氏が上梓した本書は、個人の組織に対する「心理的距離」に注目。
組織の変化がその成員である“従業員”の心理や行動に変化を与えることは一般的だ。一方、そこまで大きな影響は受けていないように振る舞える人もいる。著者がそう気づくきっかけとなったのは、企業に勤務し、M&Aなど組織の変革時期に直面したときだったという。その後、特に「距離をとる行動」に焦点を当てた研究を開始、質的調査や定量分析を用いて多角的な検証を重ね、本書では、その特性や影響、規定要因などの研究成果が明らかにされている。
その内容は、企業人事担当者が現場で肌感と持つ知見:「従業員の心理や行動の理解」と照らし合わせることでより確かなものになるといえる。今後の人材マネジメントをより効果的なものにするための、貴重な裏付けを得られることだろう。

【こんな人にオススメ】
●企業の人事担当者・リーダー: 個人が働く上での心理的距離について学び、組織活性化に活かしたいと考える人
●キャリアを自律的に考え・将来に向けて行動したいと考えるビジネスパーソン

【書籍基本情報】
書籍名:個人と組織の心理的距離 距離をとる行動のバリエーションと影響
発売出版社:中央経済グループパブリッシング
書籍発売日:2024年11月28日
『個人と組織の心理的距離 距離をとる行動のバリエーションと影響』 大橋 重子 (著)(中央経済社)

▼内容紹介

あなたにとって職場は、身近な存在? 遠い存在?
望ましい働き方を実現するための職場と個人のベストな「心理的距離」を探る



個人が組織に対して抱く「心理的距離」をキーワードに、個人と組織の関係性の変化について、組織の成員である個人の心理的な変容と行動に着目して探究した研究書。
(出版社ホームページより)

▼目次

序章 個人と組織の心理的距離
1 本書の目的とEOR研究の課題
2 雇用環境の変化
3 個人が知覚する組織の存在
4 本書の構成

第1章 先行研究レビュー
1 EORの既存概念で描かれる個人と組織の関係性
2 心理的距離のバリエーション
3 研究課題
4 小括

第2章 質的調査
1 インタビュー調査の概要
2 インタビュー内容
3 分析方法
4 分析テーマと分析焦点者
5 概念及びカテゴリー生成
6 分析プロセスの検討
7 分析結果
8 発見事実と結果の考察

第3章 定量分析モデルと調査デザイン
1 分析モデル
2 調査概要
3 小括

第4章 距離をとる行動の探究
1 心理的距離の行動レベル
2 心理的距離の潜在因子
3 距離をとる行動の特性
4 距離をとる行動の影響
5 ポジティブな影響
6 EOR概念との弁別性
7 小括

第5章 距離をとる行動の規定要因
1 調査の目的
2 個人属性の影響
3 距離をとる行動に影響を与える要素
4 結果の考察

結章 結論と今後の課題
1 要約と結論
2 理論的含意
3 実践的含意
4 課題と今後の展開
5 結語

▼著者プロフィール

【大橋 重子(おおはし しげこ) 】
大正大学地域創生学部准教授
横浜国立大学大学院国際社会科学府経営学研究科博士後期課程修了,博士(経営学)
株式会社トーメン,ライフサイエンス系企業での勤務を経て現在に至る

[主な著作]
『コロナ禍の生活とジェンダー』(分担執筆,お茶の水書房,2023)
『女性リーダー育成への挑戦』(分担執筆,お茶の水書房,2021)
『ダイバーシティと女性』(分担執筆,お茶の水書房,2019)
  • 1

この記事にリアクションをお願いします!