インターワイヤード株式会社は、2024年10月31日に「カスタマーハラスメント」に関するアンケートの結果を発表した。調査は2024年8月に、全国の労働者1,293人を対象に行われたもので、調査結果から職場におけるカスハラ実態と企業の対応状況が明らかとなった。
【カスハラ】被害経験者はおよそ3割、“一人で対応”せざるを得ないケースも…。企業に望む対策のトップは「基本方針の公表」に

カスハラ被害は「若い男性」や「金融・保険業」で多い傾向。20代は約4割が経験あり

近年、サービス業を中心に「カスタマーハラスメント(カスハラ)」問題が深刻化している。東京都は2024年10月に「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」(以下、東京都カスハラ防止条例)を、全国で初めて可決・成立。2025年4月1日から施行される。また、厚生労働省も「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」の策定からさらに踏み込んで、企業が従業員を保護することを義務づける法改正案を2025年に向けて整備中だ。そうした中、カスハラの実態や、それに対する企業の対応はどの程度進んでいるのだろうか。

まず、インターワイヤードが「過去1年以内にカスハラを受けた経験があるか」と質問すると、「受けたことがある」との回答は全体の3割近くに上った。カスハラの内容として最も多いのは「大声での恫喝や暴言を吐かれる」(12.3%)で、以降は「当初のクレームとは関係のない対応者のミスを執拗に責める。揚げ足取り」(9.3%)、「長時間にわたる拘束・居座りや、電話を切ってもらえない」(7%)と続いた。

また、「カスハラを受けたことがある(被害者)」とした人の割合を属性別に見てみると、性差では「男性」が32.9%、「女性」が25%だった。年代別では、「20代」が42%で最も多く、「30代」が37.5%と続いた。さらに、所属する組織の業種別では、1位が「金融・保険業」の38.2%、次いで「卸売り・小売業」(37.1%)が続いた。
カスハラ被害の有無

カスハラ対応「上司と協力」は3割にとどまる。「一人で対応」も同等の割合に

次に、カスハラを受けたことがある人に「初期対応として行ったこと」を尋ねた。すると、全体では「上司に相談し、一緒に対応してもらった」が31.4%と最多となり、僅差で「自分一人で対応した」(31.1%)が続いた。また、同質問では年代別で結果に違いが見られ、20代は「カスハラに気づいた上司が一緒に対応した」が31%でトップ、30代は「先輩や同僚に相談し、一緒に対応してもらった」が39.2%でトップとなっていた。他方、50代は「自分一人で対応した」が52.1%と半数を上回って最も多かった。

さらに、全体2位の「自分一人で対応した」を選択した人に理由を聞くと、39.8%が「自分一人で対応できたため、誰にも相談しなかった」と回答。以降は「そもそも一人勤務(ワンオペ)だったため」が22%、「上司に相談したが、対応してもらえなかった」が16.9%となっており、一人で対応せざるを得ない職場も一定数あることがうかがえた。
カスハラへの対応実態

2割が「カスハラに対する基本方針の社内外への公表」を望む

最後に同社は、「カスハラ対策として、会社に強化してほしい取り組みは何か」を尋ねた。その結果、1位は「カスハラに対する基本方針の社内外への公表」の20.8%で、飲食・宿泊業、金融・保険業、建設業、製造業ほか、多くの業種でトップとなった。以下、2位は「カスハラ対応のルールやマニュアルの整備」(18.4%)、3位は「カスハラに関する一般社員教育」(17%)、4位は「カスハラに対応する管理職教育」(22.6%)、5位は「各部門の実態に合わせたカスハラの定義づけ」(14.2%)となっている。カスハラ被害経験のある割合が高い「金融・保険業」では、これらの上位項目はいずれも高割合となっており、対策が強く求められているようだ。
会社に強化してほしいカスハラ対応
今回の調査から、カスハラを受けたことがある人は全体の3割で、特に若い男性や、金融・保険業で多いことが明らかとなった。また、カスハラに対して「一人で対応せざるをえなかった」という人も3割いることから、組織としての施策が浸透していない様子も垣間見えた。職場内でカスハラの定義や判断基準が明確ではなく、組織としての取り組みが十分ではないとも考えられそうだ。カスハラ対策は従業員の安全と健全な企業運営における重要課題であり、人材定着にも影響を及ぼしかねない。従業員の安全確保と企業価値の向上のためにも、法改正を見据えた準備に着手しておきたい。

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