「ハイブリッドワーク」(ハイブリッド勤務、ハイブリッド型勤務)とは、“テレワークか出社か”の二者択一ではなく、どちらの働き方も取り入れる勤務形態のことです。新型コロナウイルス感染症拡大下でのテレワークの広がりにより、テレワークと出社それぞれのメリット・デメリットが浮かび上がってきたことで、両者の良いところだけを取り入れた「ハイブリッドワーク」を選択する企業が増えてきています。そこで今回は、ハイブリッドワークのメリットや、デメリット・注意点を解説していきます。
「ハイブリッドワーク」を実施する企業が増加。テレワークと出社の“良いとこ取り”する働き方のために

ハイブリッドワークの背景とそのメリット

コロナ禍での外出自粛要請により、この数年で「テレワーク」という働き方が急激に広がりました。しかし、緊急事態宣言の終了とともに、「テレワークをそのまま導入し続けている企業」と「そうでない企業」とで、二分されているように感じます。

そんな中、株式会社ジーンの「社会人1000人に聞いたコロナ禍での働き方に関するアンケート調査」によると、“週何日のテレワークが適当か”との質問に、8割以上の人が「1日以上」と回答しています。一方で、「フルリモート」と回答した人は1割強と、テレワークのメリットと同時に、デメリットが健在化していることが見て取れます。中には、「テレワーク疲れ」という用語を頻繁に目にするようになった方もいるのではないでしょうか。このように、企業側も従業員側も、「出社」と「テレワーク」のいずれの働き方にも一長一短あることがわかってきました。

そのため、「出社だけ」あるいは「テレワークだけ」という二者択一ではない、ハイブリッドな、いわば“良いとこ取り”の働き方に注目が集まっています。

テレワークは、新型コロナ等の感染症対策として取り上げられることも多いですが、これからの季節は、「豪雨」や「台風」、「酷暑」といった気象警報・注意報による不要不急の外出自粛要請も考えられます。日常的にハイブリッドワークとせずとも、いざというときに「テレワークという選択肢」があれば、従業員の安全や安心を確保したまま、企業活動を継続することが可能です。

また、近年は出世や昇格などよりも、「ワークライフバランス」を重視する方が多い傾向にあります。そのため、ハイブリッドワークは、柔軟な働き方を求める優秀な人材の確保や、離職防止にも繋がります。

さらに、“テレワークと出社のどちらが集中できるか”は、個人の性格や家庭環境により異なります。「テレワークと出社のどちらにするか」を個人で柔軟に選択できるようにすれば、「会議の多い日は出社」、「1人で集中したい業務を行う日はテレワーク」というように、ハイブリッドワークにより各個人の生産性向上を見込むこともできます。

ハイブリッドワークのデメリット・注意点も把握しておく

ハイブリッドワークでは、“出社とテレワークの割合”をどうするかも、企業によって考え方が様々です。業務の内容や、実際にテレワークをした際に出てきた課題等から、自社に合った運用を決めていくのが良いでしょう。以下で一例を紹介します。

●「毎週水曜日は出社」、「毎月最終営業日は出社」のように、曜日や日付で出社日を決めておく
●個人の仕事や家庭の事情により、従業員がどちらかを日々好きに決められる
●テレワーク可能な日数の上限を週や月で設け、その中で従業員がどちらかを決められる
●育児、介護、治療などの理由がある場合にのみ、申請により認める
●大幅な電車遅延、気象警報・注意報、感染症対策などの不可抗力の場合のみ認める


また、「働きやすさ」に繋がるハイブリッドワークですが、企業として気をつけたい点もあります。

1)ルールの明文化と周知

どのような出社割合にするにせよ、「申請が必要なのか」、「当日でも柔軟に変更できるのか」、「通勤手当などをどうするのか」等、明文化したルールを全従業員に周知することは必須です。

業務内容や個人の事情により、部門間で出社割合を変えることも可能ですが、例えば「パート社員はテレワーク不可」、「有期契約社員はテレワーク不可」というように、正社員と業務内容が同一であるにも関わらず、雇用形態の違いだけで働き方に差をつけることは、「同一労働同一賃金」の観点からも適切ではありませんので注意が必要です。

2)ハイブリッドワークに対応した勤怠管理

出社でもテレワークでも、どちらでも使える勤怠管理の仕組みも必要です。例えば、紙のタイムカードでは、テレワーク時には別の方法にて打刻しなければいけないため、管理が煩雑になります。ただでさえ「テレワークは勤怠管理が難しい」という声も多く聞きます。web打刻ができる勤怠システムの導入等、どちらのケースでも同じように利用できる勤怠管理の仕組みは検討すべきでしょう。

3)コミュニケーションの円滑化

テレワークが広がった際に、多くの企業で課題となったのが、「コミュニケーションが取りにくくなった」という点です。全員がテレワークであれば、意識的に“全員向けの情報共有の場”を作りやすいですが、「一部の従業員が出社、一部の従業員がテレワーク」という環境では、出社している従業員に情報が集中しがちです。働き方に関わらず、毎日15分程度でも良いので「全員が参加して情報共有の時間を設ける」、「各自の業務を見える化し共有する」等、ハイブリッドワーク下では“全員でのコミュニケーション”がより求められます。


ハイブリッドワークは、「個人の生産性が上がる勤務場所を選べる」、「働き方に制限のある方の雇用機会を確保できる」等の点で、働き方改革の一環にもなり得ます。これからの働き方として、ぜひ検討してみてください。

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