労働契約の締結時には「労働条件の明示」を
労働基準法第15条によると、労働契約の締結の際には、賃金や労働時間、労働契約の期間などの「労働条件の明示」が必要です。これは、学生アルバイトの場合も同様です。賃金や労働時間などの労働条件の明示は、原則として書面で行う必要がありますが、労働者が希望する場合には電子メールなどの方法で明示することも可能です。ちなみに、労働条件の明示は、「雇用契約書」のように双方の捺印の形式を取る必要はなく、「労働条件通知書」をアルバイトの方に交付する形でも大丈夫です。
いずれにしても、最初に労働条件の明示をしておかないと、後で「言った、言わない」のトラブルになる可能性がありますので、単に法律を守るということだけでなく、トラブル防止の観点からも必要なプロセスと言えるでしょう。
労働時間が「1日8時間、1週間40時間」を超えたら割増賃金が発生
次に、給与にも関わる点として「アルバイトの方の労働時間」を把握しておきましょう。業務が忙しく、アルバイトの方にいつもより多く働いてもらうのは良いとしても、原則として、1日の労働時間が休憩時間を除いて8時間を超えるか、または1週間の労働時間が休憩時間を除いて40時間を超えると、割増賃金を支払う必要が出てきます(所定の要件を満たす事業場では、週44時間までは割増賃金の支払が発生しません)。しかし、タイムカードなどの勤怠管理ツールを導入していない事業場の場合、労働時間の管理が甘くなり、割増賃金の支払が発生していることに気づかないケースもありえます。一方、アルバイトの方は自分がどれだけ働いているのかきっちり管理をしていますから、「残業代はどうなっているんですか?」と言われないよう、きちんと労務管理をしておく必要があります。
アルバイトにも「年次有給休暇」は発生する
労働基準法の第39条に基づき、雇い入れてから6ヵ月が経過した労働者には、勤務日数に応じた年次有給休暇を付与する義務があります。注意が必要なのは、たとえ「週1日1時間」の勤務形態になっているアルバイトの方でも、年次有給休暇が発生するということです。とはいうものの、現実には「うちのアルバイトには有給休暇はないから」とおっしゃる事業主の方がいらっしゃるのも事実です。しかし、労働基準法には「アルバイトには年次有給休暇を与えない」という規定はありません。
法律上は、「労働者」と規定しているだけなので、正社員やパート、アルバイトの区別なく、雇い入れている労働者がいれば、所定の要件を満たすと「年次有給休暇の請求権」が労働者に発生しますので注意しましょう。
間違っても「明日から来なくていいから」は厳禁
雇っているアルバイトの方の勤務態度が芳しくないからといって、いきなり「明日から来なくていいから」などと言って辞めさせることは、労働基準法上の「解雇」に該当する可能性が高くなります。労働基準法第20条によれば、労働者を解雇する場合、少なくとも30日以上前に労働者へ予告するか、もしくは30日分以上の平均賃金を支払う必要があります。これに反すると、解雇された労働者であるアルバイトの方が労働基準監督署に申告した場合、解雇した使用者は行政指導の対象になる可能性があります。
また、上記の規定を守ったとしても、「不当解雇」ということでトラブルになると、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」により、都道府県労働局長による口頭助言やあっせん、労働審判や民事訴訟など、事業主の方にとってはありがたくないことに巻き込まれることになるかもしれませんので、言動には気をつけておいた方が良いでしょう。
いかがでしょうか。事業主の方にとっては、ご自分の事業の経営で頭がいっぱいで、アルバイトの方の労務管理まで手が回らないということがあるかもしれません。ですが、労務トラブルが起こってしまうと、必要以上に労力やお金を割かなければならないことになり、さらには事業の評判にも関わってしまう可能性が出てきます。したがって、普段から社会保険労務士など労務管理のプロにいつでも相談できるようにしておくなど、リスク回避のための準備をしておくことをお勧めします。
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