アメリカのビジネスウィーク誌で「人事界のグル(教祖・指導者)」と称されるミシガン大学教授デイブ・ウルリッチ氏。最近では、『グローバル時代の人事コンピテンシー〜世界の人事状況と「アウトサイド・イン」の人材戦略』を上梓し、グローバルビジネスを成功させるための人事の役割について考察している。 そんな人事研究の世界的権威であるウルリッチ氏のビデオ講演が、HRサミット2014(6月)にて行われる。ここでは講演に先駆けて、インタビューの模様をダイジェストでお伝えしよう。
インタビュアー: グラマシー・エンゲージメントグループ株式会社代表取締役 ブライアン・シャーマン
翻訳/執筆: HRプロ・ライター / EEG代表 丸島美奈子
企業がいかにしてビジネスにより価値を創出し、顧客や投資家、コミュニティといった外部に提供していくか。そして企業の内部で、いかにして従業員にさまざまなことを提供していくか、ということを研究しています。このアイデアの中心にくるのが人事業務です。人を採用し、昇進させ、トレーニングし、給料を払い、コミュニケートし、組織を構成する。人事業務は社員の幸福度に影響を与えるだけなく、顧客や投資家やコミュニティに影響を与えるからです。この考え方について、いろんな角度から考えるのが好きなのです。
顧客は従業員から印象を受けるものです。たとえばホテルでは、従業員がフロントで挨拶し、礼儀正しく、親切に対応します。私はゲストとして、ホテルの従業員の影響を受けます。ですから企業は顧客に対応し、同時に従業員に対応しなければならない。
人事の仕組みを考えるにはまず、「どんなビジネスなのか、どうしたら勝てるのか」から始めることです。ホテル業なら、ゲストを獲得し、ゲストが素晴らしい体験をすれば勝ちます。ではゲストの経験に影響するのは何なのか? ロケーションや美しいインテリアもあるでしょうが、カスタマー・エクスペリエンス(顧客経験価値)を動かし、利益をもたらすのは従業員なのです。態度はどうだったか?どのような業務上のスキルを持っているか?ということです。
たとえばディズニーワールドでは、大人より子供達に焦点を当てています。ですから、大人より子供を扱うのがうまい人を採用して、子供達に信じられないほど素晴らしい体験をさせます。それが、ディズニーワールドが成功している秘訣の一つなのです。
選び難いですが、著書全体を通して、いくつかテーマがあります。
第1は“アウトサイド・イン”です。何をするかではなく、したことが相手にどのように認識されるか。ビジネスリーダーのコーチングやリーダーシップの育成において、信頼される人になりなさいとよく言われますが、それだけでなく、あなたがそうなることで他者から認識される価値を作り出さなければならない、ということです。
第2は、ビジネスは人がいればできるのではなく、組織が重要だということ。人は組織と関係づけて見るべきです。組織が人の考えや行動に影響を与えるからです。今日、人事部門はタレントマネジメント、ヒューマンキャピタルなど「人のプロ」だと思われていて、タレントの面だけにフォーカスしすぎです。それは偏った見方で、人事が創った組織、企業文化、労働環境などが、人の働き方を形成するのです。
インタビューはまだ続きます。
「人事の仕事は、長期的なビジネス成功の指標となるエキサイティングなものだ」について、気になる内容の続きはこちらよりダウンロードください。
提供:日本オラクル株式会社
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ミシガン大学 教授
D.ウルリッチ氏ミシガン大学ビジネススクールの教授であり、アメリカで人事コンサルティング、組織開発などを手掛けるRBLグループの共同創業者でもある。世界の経営思想家のベスト50を選ぶ「Thinker50」(2年に1度)の常連であり、2013年度は30位で、人事研究の領域では常にトップである。 英語圏の人事の世界では、グル(教祖、指導者)と呼ばれている。 フォーチュン200(フォーチュン誌が発表する総収入の全米ベスト200)の半数を超える企業で企業調査やコンサルティングに従事している。 25冊以上の書籍、200を超える論文を出している。 邦訳されているものとしては「MBAの人材戦略」「人事コンピテンシー」 「個人と組織を充実させるリーダーシップ」「グローバル時代の人事コンピテンシー」などがある。