
ポストオフ後に減るのは「賃金と重圧」。一方で「自由や心身の余裕」は増加
「人生100年時代」と言われ、一人ひとりの就業期間が長くなっている。そのなかで、ポストオフ後のシニア層の活躍の場は、どのように整備されるとよいのだろうか。はじめに、「ポストオフ前後での仕事の変化」について、「下がった・減った」、「変わらない」、「上がった・増えた」の3択で尋ねた。すると、「下がった・減った」が最も多かったのは「賃金」で82.8%だった。以下、「周囲からの期待の大きさ」(56.1%)、「仕事量・労働時間」(52.9%)が続いた。
他方で「変わらない」が多かったのは、「仕事の成果の見えやすさ」(54.6%)や「顧客満足や組織業績の向上への影響力」(54.2%)、「自分で判断し、主体的に進める度合い」(50.4%)で、いずれも半数以上が回答。ポストオフ経験者は、給与や期待などが減る一方で、影響力や実行力は変わらず求められていると感じているようだ。

約4割は、ポストオフ後に「やる気が下がったまま」現在に至る
続いて、「ポストオフ後の仕事に対する意欲・やる気の推移」について、自分自身にあてはまるものを尋ねた。“部長および課長職”をポストオフした人の回答を見ると、意欲・やる気が「変わらない」人は、それぞれ26.8%(部長職)、28%(課長職)で3割弱となった。一方で、「(一時的なものも含めて)下がった」人の割合は、合わせると6割に迫る。その内訳は、「下がったまま」が部長職では36%、課長職では44.6%、「一度上がって下がった」が部長職では8%、課長職では5.4%だった。「一度下がって上がった」人は、部長職では20.4%、課長職では14.4%となった。

ポストオフ好適応群が意識していたことは「学び続ける」姿勢と「権力を振りかざさない」配慮
続いて、ポストオフ後の適応が“良好”な人たちについて、「ポストオフ前の準備」を調査した。該当者に「具体的にどのような準備や意識をしたか」を尋ねると、「最新知識・スキルや専門性を身につける」、「権威を振りかざさない」、「社内で人脈を広げる」に多くの回答が集まった。現場での業務遂行に関する知識の更新や、フラットな協働関係性の構築が、ポストオフ後の適応に役立つと示唆された。
ポストオフ経験者の適応力を左右する「組織風土」とは?
さらに、「現在の仕事への適応感(成果実感・居場所感・成長感など)を高める要因」について、複数要因からの影響を、重回帰分析で探った。その結果、「環境要因」においては、「上司からの尊重や高い期待」と「インクルーシブな風土(誰の発言も真摯に受け止められ、独自の才能が生かされ、年齢に関わらずよい仕事が評価される)」でプラスとなり、ポストオフ後の適応を促すことが判明した。「個人要因」においては、「強みや関心を生かしたり同僚と共感し助け合ったりする」といった行動が、適応感を高めていることがわかった。
「尊重と高い期待」や「率直なフィードバック」、「伴走」がマネジメントのポイント
また、本調査で用いたマネジメント行動のリストを分類すると、ポストオフ経験者が受けているマネジメントスタイルは、大きく「放任型」、「伴走型」、「放置型」の3つのタイプに分かれることがわかった。それぞれの上司の比率は、「放任型」が26.5%(「尊重と高い期待」、「伴走」、「放置」がいずれも高い)、「伴走型」が47.4%(「尊重と期待」と「伴走」が高く、「放置」が低い)、「放置型」は26.1%(「尊重と期待」と「伴走」が低く、「放置」が高い)だった。
