東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)は2025年2月4日、鉄道分野で就労する特定技能人材の育成方針について公表した。同社は今後、海外鉄道技術協力協会(JARTS)をはじめとする様々な機関と協力・連携しつつ、2024年に新設された鉄道分野の特定技能人材を積極的に育成していくという。
JR東日本、“外国人特定技能人材”育成のための研修を実施。「特定技能制度」を活用した人材確保で鉄道業界をサステナブルに

特定技能人材の育成により、鉄道業界全体の事業運営をサステナブルに

社会全体で人手不足が深刻化する中、鉄道業界においても、特に車両・軌道・電気設備といったメンテナンス業務に携わる人材の確保が厳しくなっているという。今後も長気にわたって鉄道の安全運行を継続するためには、メンテナンス技術の革新に加えて、業界全体でこれまでにない形の人材確保に踏み出す必要性があるとのことだ。

そこで同社は今般、2024年に鉄道分野が追加された特定技能制度によって、海外から人材を招聘し、鉄道技術の基礎知識習得および特定技能評価試験合格に重点を置いた研修を新たに実施すると発表した。なお、この評価試験に合格した海外人材については、在留資格「特定技能」を取得後、JR東日本を含む日本の鉄道関連企業で就労してもらうことにより、鉄道事業者やグループ会社・協力会社等で車両・軌道・電気設備のメンテナンス業務に就業する人材を安定的に確保していくという。同社はこれにより、鉄道業界全体の事業運営をサステナブルなものにしていく構えだ。

「特定技能人材育成研修」の概要

JR東日本が実施する「特定技能人材育成研修」(仮称)の実施概要は下記のとおり。

(1)実施場所
JR東日本総合研修センター(福島県白河市)

(2)実施スキーム
2025年度より、JR東日本が実施主体となり、研修全体のコーディネートや研修生の受入れ、研修生の日本滞在中のサポート、研修生の受験手続支援等を担う一般社団法人海外鉄道技術協力協会(JARTS)、研修講師等を担う株式会社JR東日本パーソネルサービス(JEPS)、そのほか研修生の母集団形成を担う送り出し機関や登録支援機関など、様々な機関と協力・連携して研修を運営。
また、JR東日本以外の鉄道事業者も参画できるオープンな教育プラットフォームを目指す。
特定技能人材育成研修の実施スキーム
(3)2025年2月~3月の研修試行実施
2025年3月に初めて実施される予定の鉄道分野特定技能評価試験に合わせ、2月~3月にJR東日本総合研修センター(福島県白河市)において、まずJR東日本、グループ会社、パートナー会社、協力会社で、インドネシア及びベトナムからの研修生25名に対し、約4週間の規模で研修を試行実施。

研修を修了し、特定技能評価試験に合格した人は、在留資格「特定技能」取得後、2025年夏頃からJR東日本またはそのパートナー会社・協力会社において就労する見込み。

▼対象区分・人数(国籍別内訳)
【車両整備区分】
5名(インドネシア5名)

【軌道整備区分】
12名(ベトナム8名・インドネシア4名)

【電気設備整備区分】
8名(ベトナム4名・インドネシア4名)

▼スケジュール(予定)
【車両整備区分】
研修:2月19日~3月14日
評価試験:3月中旬頃

【軌道整備区分】
研修:3月2日~3月25日
評価試験:3月下旬頃

【電気設備整備区分】
研修:2月20日~3月16日
評価試験:3月中旬頃

技能実習制度を活用した人材育成の今後

JR東日本はこれまで、アジアの鉄道会社社員等に対する国際貢献として、技能実習「JR東日本 Technical Intern Training」を2019年から3ヵ国・38名に対し行ってきたという。同社は今後も、技能実習および、その後継制度である育成就労を活用した人材育成を実施していくとしている。
国内の人手不足が加速する中、事業運営に必要な労働力を十分に確保するためには、海外人材を積極的に受け入れていく姿勢も必要になるだろう。特に高い技術を要する業種においては、その採用~研修プロセスも慎重に見極めていかなければならない。本事例は、外国人特定技能人材の受入れを検討する企業にとって、参考になる先行事例と言えそうだ。

出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001051.000017557.html

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