店頭でスタッフに土下座を迫ったり、恐喝まがいの要求をしたりして逮捕者が出るなど、年々エスカレートしているクレーマー事件。理不尽な怒りを爆発させる彼らを前にパニックに陥り、適切な判断ができなくなってしまうお店も後を絶ちません。そこで、元刑事にして、日々悪質なクレーマーと戦うエンゴシステム代表・援川聡さんに撃退法を伺いました。ぜひ店舗のスタッフと一緒に実践してください。

普通の人が悪質なクレーマーと化す時代

第30回 スタッフを守る! 元刑事が教える悪質クレーマー対処法
サービス業を営んでいると、日々さまざまなクレームに接するものです。例えば、買ったものに不具合があって、交換や返金を求めるもの。これは、消費者側の正当な権利ですね。しかし、そこで「迷惑料」や「特別待遇」、「度を超えた謝罪」まで要求するのは悪質です。

 こうした犯罪まがいの過大要求は、かつては犯罪者や暴力団組員といった見るからに“ブラックな人間”が金品目的で行うのが一般的でした。しかし、最近はビジネスマンや主婦といった普通の人、いわば一見“ホワイトな人たち”が悪質なクレーマーと化すケースが増えています。過去の事件で、店舗で土下座を強要して逮捕されたのも、ごく普通の主婦でした。

 ホワイトな人たちがクレーマー化する理由としては、ストレス社会で鬱憤が溜まっていた、便利なサービスに慣れきって我慢耐性が低くなっていた、一度クレームを入れて得をしたことで味をしめた……など、さまざまな状況が考えられます。つまり、現代は誰もが悪質なクレーマーになり得る時代。だからこそ、その対処法を知り、スタッフにも教えておくことが非常に重要なのです。

覚えておきたいクレーム対処時の3ステップ

悪質なクレーマーが見た目で判断できない以上、相手の主張が正当かそうでないかは、慎重に見極める必要があります。その目安となるプロセスがこちらです。
第30回 スタッフを守る! 元刑事が教える悪質クレーマー対処法
以上が大まかなクレーム対処の流れです。ここからは、それぞれのステップにおける注意点を詳しく見ていきましょう。

STEP1:真摯にお客様の主張を聞き、内容を絞ってお詫びをする

STEP1では、お客様の言い分が正当であることを前提に、しっかりと話を聞きましょう。この時、「安易に謝ってはならない」と指導する会社もあるようです。理由は「全面的に非を認めたことになってしまうから」ですが、怒っている相手に対して、一言のお詫びもせずに話を聞くのは困難です。そんな時は、内容を限定して謝るとよいでしょう。
第30回 スタッフを守る! 元刑事が教える悪質クレーマー対処法
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もし、相手が「非を認めたな!」と詰め寄ってきても、「いいえ、お客様が被られたご不快な思いに、おかけしたご迷惑に、とらせたお手間にお詫びをしました」と説明できます。

 また、正当な要求をしていたはずのお客様が、スタッフの対応の悪さゆえに悪質クレーマーと化すこともあります。クレーム対処の現場では、上から目線の発言や言い逃れに聞こえてしまう「D言葉」は封印してください。代わりに「S言葉」を使えば、相手の気持ちを逆なですることなく対処できます。
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STEP2:焦りは禁物 時間をかけて相手の要求を見極める!

STEP2は、相手の要求に対して「できること」と「できないこと」を明確にして、お互いの妥協点を見つける段階です。きちんと話し合い、よく観察して相手の要求を見極めてください。

 正当な要求をしているお客様なら多少の時間がかかってもきちんと対応してもらえることを望みますし、金銭目的の悪質なクレーマーは、長期的な対応を嫌います。なぜなら、交渉期間が長引くと、通報されるリスクが高まるためです。

 「今すぐ結論を出せ!」と詰め寄ってくる人もいますが、決して結論を急いではいけません。次のような「ギブアップトーク」を実践して、対応策を検討する時間を確保するようにしましょう。
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STEP3:4つの応答例で、悪質クレーマーを撃退する

第30回 スタッフを守る! 元刑事が教える悪質クレーマー対処法
STEP3では、お客様用ではなく、悪質クレーマー用の対応に切り替えます。一度でも言いなりになれば、彼らは味をしめて何度でもやってきます。クレーマーたちがよく使うセリフをもとに、撃退に効果的な応答例をご紹介しましょう。
第30回 スタッフを守る! 元刑事が教える悪質クレーマー対処法
うかつに金品を要求すると恐喝にあたることを知っている悪質クレーマーは、「誠意を見せろ」「責任を取れ」という言葉で内容でぼかします。「いくらお支払いすればいいのですか?」など、先走った対応をせずに、何が目的なのかを具体的に聞き出しましょう。
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「やめてください」と言うのではなく、自分ではどうにもならないことを示す「ギブアップトーク」を駆使して、さっさと土俵から降りるのが得策です。それでネットに流された場合は、法的手段も視野に入れます。
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こちらも、ギブアップトークが効果的です。詫び状や念書はのちのち脅迫の材料になることもあるため、書く場合は弁護士などの専門家と相談して作成するのが鉄則です。詫び状に限らず、クレーマーに書面を提出する時は細心の注意を払ってください。
第30回 スタッフを守る! 元刑事が教える悪質クレーマー対処法
社会通念上、いき過ぎた要求はきっぱり拒否して何も問題ありません。一度「できない」という意思表示をしたにもかかわらず、再び要求されたら、強要罪で被害届を出すこともできます。

 ほかにも、「責任者のくせに、そんなことも決められないのか!」「タダで済むと思うなよ!」といった言葉を浴びせられることもありますが、無視して問題ありません。「裁判にしてやる!」との脅し文句もよく耳にしますが、万が一裁判になって賠償金を払うことになったとしても、怖いからといってどこの誰かもわからない人にお金を渡すことと、裁判で法に照らして命じられたお金を支払うのとでは、まったく意味が異なります。

悪質クレーマーには、チームで立ち向かおう!

第30回 スタッフを守る! 元刑事が教える悪質クレーマー対処法
さて、こうした恫喝は、いざ目の前にするとやはり恐ろしいものです。早く終わらせたい一心で、言いなりになってしまう人がいるのも無理はありません。

 しかし、一度でも屈すれば、繰り返し悪質なクレーマーに狙われることになりかねません。要求がエスカレートすれば心に傷を負って辞めていくスタッフがいたり、結果的に店舗や会社の評判を落としたりして、運営に大きな支障が出てしまいます。

 サービス業を営む以上は、いつ悪質なクレーマーの標的になるとも限りません。そこで、事前に次のような対策を講じておきましょう。
第30回 スタッフを守る! 元刑事が教える悪質クレーマー対処法
クレーム対応は、チームワークが命です。一人ではパニックになることも、二人なら冷静に対処できますし、お店全体で団結してクレームに対峙できれば、怖いものなどありません。ぜひ、チームで戦うためのガイドライン作りから始めてみてください。
提供:インテリジェンス「an report」
http://weban.jp/contents/an_report/
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