そもそも「フリーランス法」とはどんな経緯でできたの?
コロナ禍のあたりから“働き方の多様化”が加速して「フリーランス」という言葉をよく聞くようになりましたが、2021(令和3)年の内閣官房等による実態調査によると、フリーランスの約4割が「報酬不払」、「支払遅延」等のトラブルを経験しており、「発注書に不備があった」、「そもそも発注書を受け取っていない」、という経験をしているという結果も出ています。その要因として、「個人」であるフリーランスと「企業」である発注事業者では、対等に取引を行うことが難しいケースがあることが考えられます。そのため、双方の取引を適正に行う法律が整備されるに至りました。
このフリーランス法では「取引の適正化」と「就業環境の整備」が軸になっていますが、どのようなことが企業側に求められているのでしょうか。
「フリーランス法」で企業側に課せられる義務や禁止行為を知ろう
まず、フリーランス法で定義している「フリーランス」とは、●個人であって従業員を使用しないないもの
●法人の場合でも代表以外に役員もおらず、従業員を使用していないもの
のどちらかに該当するものを言います(「特定受託事業者」と呼ばれます)。
一方、発注事業者は、フリーランスに業務委託をする側で、
●個人であって従業員を使用するもの
●法人で2人以上役員がいるか、従業員を使用するもの
のどちらかに該当するものを指します(「特定業務委託事業者」と呼ばれます)。
つまり、「一人(フリーランス)」・「組織(発注事業者)」という図式になります。
「フリーランス法」ではフリーランス同士の取引についての規定もありますが、本稿では、「特定業務委託事業者」と「特定受託事業者」との規定についてお話させていただきます。
先ほど、フリーランス法は、「取引の適正化」と「就業環境の整備」が軸になっていると述べましたが、まずは「取引の適正化」からご説明します。
フリーランス法における「取引の適正化」とは?
「フリーランス法」で対象となる業務委託の内容は、●物品の製造・加工委託
●ソフトウェアやデザインなどの情報成果物の作成委託
●運送やコンサルタントなどの役務の提供委託
のことを指しますが、発注側がフリーランスに業務委託をする場合、「取引条件の明示」や「期日通りに報酬を支払う」ことなどが義務付けられています。
取引条件で明示しなければならない事項とは、
●発注事業者とフリーランスの名称
●業務委託をした日
●委託する業務の内容
●委託した業務の期日や役務の提供を受ける日
●委託した業務や役務の提供を受ける場所
●業務の内容について検査があるときは検査完了日
●報酬の額や支払日
●現金以外で報酬を払うときは支払方法
です。
これらの明示事項は、「書面」か「電磁的方法」で伝えなければならず、電話など口頭で伝えるのはNGです。「電磁的方法」は、電子メールやSNSなどのメッセージ、ファックスやUSBメモリ等でも大丈夫ですが、フリーランスから書面での交付を求められたときは原則として書面で交付しなければなりません。
「報酬の支払日」については、原則として “発注した物品等を受け取った日から60日以内のできるだけ短い期間”で支払日を特定し、その日までに報酬を支払う必要があります。支払日は、「12月20日支払」、「毎月20日締、翌月末日支払」というように具体的に示す必要があり、「12月20日までに支払」や「受領日から30日以内」といった支払日を特定できないものは認められません。
また、フリーランスへ1ヵ月以上の業務委託した場合に、「物品等の受領を不当に拒否したり返品したりすること」や、「フリーランスに責任がないにも関わらず報酬を減額したり、市場価格を大幅に下回る報酬で業務を強制したりすること」などは禁止行為となっており、違法であることの認識がなくても「フリーランス法」に違反しますので、発注担当者が適正にフリーランスと取引をしているか点検をするようにしましょう。
では2つ目の軸である「就業環境の整備」についてお話しましょう。
フリーランス法で求められる「就業環境の整備」を解説
発注企業は、取引をするフリーランスが「育児介護などと業務を両立できるような配慮」や「ハラスメント対策についての体制を整備すること」を求められています。育児介護等と業務の両立については、フリーランスに6ヵ月以上の業務委託をする場合、フリーランスが育児・介護を両立できるように打ち合わせの日時を調整する、オンラインでの業務に切り替える、といったことなどにより、フリーランスに対して配慮を行う義務があります(やむを得ず配慮ができない場合は、その理由を説明することが求められます)。
ハラスメント対策においては、「労働施策総合推進法」などにより、すでにハラスメント窓口を設置されていることと思いますが、フリーランスからのハラスメント相談にも対応できるようにする必要があります。
いかがでしょうか、「フリーランス法」で企業側に求められる事項は、まだ一部しかご紹介できていませんが、フリーランスの方と良好な関係を維持して取引を行うことは、貴社の業務の生産性にも大きく影響を及ぼします。「フリーランス法」についてもっと詳しく知りたい、ということでしたら、お近くの社会保険労務士にご相談されることをお勧めします。
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