9割が「103万円の壁」解消を肯定。一方、産業別で顕著な回答差も
令和7年度の税制改正大綱に向け、2024年12月は「年収の壁」をめぐる議論が活発化した。では、議論の発端となった「103万の壁」の引き上げについて、雇用者側の企業はどのような意識をもっているのだろうか。まず、東京商工リサーチが「所得税非課税の上限年収である“103万円の壁解消”に向けた動きの賛否」を問うと、91.3%の企業が「賛成」と回答。企業規模別で内訳を見ると、大企業が95.5%、中小企業が91%と、ともに高い支持率を示した。
反対に、低かったのは「建設業」(89.3%/845社中755社)、「小売業」(87.2%/297社中259社)で、どちらも9割を切った。なお、これらの業種は中小企業の構成比が他より高くなっていたという。同社はこの結果について「中小企業は価格転嫁によるコスト吸収が難しく、103万円の壁解消による短時間労働者の人手確保だけでは、経営課題の解決に足りないと考えているのではないか」との見解を示した。
賛成の理由は「人手不足の緩和」が7割超。反対の理由とは?
同社は、さらに「賛成の理由」と「反対の理由」についても聞いた。その結果、「賛成」の理由として最も多かったのは「働き控えが解消され、人手不足が緩和される」で、74.4%と他の選択肢に比べてダントツとなっていた。以降は、「自社従業員の年収増加によるモチベーションアップが期待できる」(34.2%)、「世帯年収増加による販売(サービス提供)の増加に期待できる」(30.11%)がともに3割以上で続いている。続く第2位は、「自治体の税収減少につながり、公共サービスや補助が削減される恐れがある」の42.6%(206社)だった。他方、「その他」の自由回答でも「他の増税に繋がる」との回答が見られ、「国や自治体の税収減が、企業に跳ね返る懸念を拭えない」と考える企業は一定数いることがうかがえる。
社会保険の扶養に関わる「130万円の壁」見直しへの期待
次に、同社は「103万円の壁(所得税非課税の上限)を含め、他の年収の壁の変更を望むか」を尋ねた。すると、最も多くの票を集めたのは「130万円の壁(社会保険の扶養対象から外れる)」の57.4%(5,883社中3,382社)で、約6割が選択。次いで、「103万円の壁」が48.2%(2,837社)と続いた。約半数の企業担当者が“税金と社会保険の両面”の条件緩和を望んでいるようだ。また、第3位は「106万円の壁(主に従業員51人以上の企業で社会保険の加入義務が発生)」で、31.3%(1,846社)だった。回答結果を規模別に見ると、「大企業」(40.2%/487社中196社)に対して、「中小企業」(30.5%/5,396社中1,650社)と、大企業の方が9.7ポイント高かった。中小企業は、社会保険料の企業負担増への懸念が強いと推察できる。