少子高齢化による人手不足が深刻化していることから、企業においては高齢者の雇用が進んでいる。疾病の有病率は年齢が上がるほど高くなる傾向にあり、企業において従業員の高齢化が進むと、疾病を抱えた従業員の「治療と仕事の両立」への対応が必要となる機会が増えることが予想される。近年では、「健康経営」や「ワーク・ライフ・バランス」、「ダイバーシティ&インクルージョン」といった観点からも、治療と仕事の両立支援について取り組む企業も増えてきている。今回は、企業として従業員の治療と仕事の両立支援にどう向き合うべきか解説する。
人材不足でミドルシニアの雇用が進む中、企業として「治療と仕事の両立支援」にどう取り組むか

企業における「治療と仕事の両立支援」の意義とは

「労働安全衛生法」では、健康診断の実施等、労働者の健康の保持増進のため企業が取り組む措置が定められている。また、同法第62条では、中高齢者等、就業に当たって特に配慮を必要とする者については、心身の条件に応じて適正な配置を行うよう努めなければならないとされている。

これらのことから、企業においては、治療と仕事の両立のために必要となる「就業上の措置」や「治療に対する配慮」を行う必要があるといえる。

また、治療に関わる費用や収入の変化等も、従業員にとっては治療時の悩みとなる。会社が支援し、治療を受けながら就労を継続することができれば、従業員は経済的な安定を保ちつつ、健康状態の改善に専念できる。これは、従業員のモチベーション維持や職場への安心感を高めることにもつながるといえる。

そして、治療が必要な従業員が退職せずに継続して働くことができる環境をつくることは、「労働者の健康確保」という意義とともに、「継続的な人材の確保」、「生産性の向上」、「多様な人材の活用による組織の活性化」、「社会的責任の実現」等、企業にとっては様々な意義があると考えられる。

企業における「治療と仕事の両立支援」の進め方について

企業として治療と仕事の両立支援に取り組むにあたっては、基本方針を表明し、両立支援に関する制度や体制を整える必要がある。治療の際は、就業時間に一定の制限が必要な場合や、身体的な負担を軽減する必要がある。

両立支援に際しては、以下のような制度を取り入れる場合が多い。
会社で導入できる制度一覧
また、実際の支援の際は、本人に状況等を確認するだけではなく、産業医等の産業保健スタッフや主治医と連携し、「両立支援プラン」を策定しておきたい。「両立支援プラン」策定時には、今後の治療等の状況やスケジュールを確認し、具体的な就業上の措置や配慮等をプランに盛り込んでおく。そして、治療においては金銭的な不安も出ることから、利用できる制度について従業員に案内することも考えられる。
会社で導入できる制度一覧
治療と仕事の両立支援を実施する際、疾病により対応も異なることから、担当者は、疾病への正しい理解も必要である。

また、治療と仕事の両立支援の際に取り扱う情報はセンシティブな個人情報であることから、本人の同意の上取得するのはもちろんのこと、現場の管理監督者や同僚等への情報開示についても十分気を付ける必要がある。そして、現場においては、支援する側に業務の負担がかかることもあることから、十分配慮をした上で対応していきたい。



企業における治療と仕事の両立支援は、「従業員の健康」と「企業の持続可能な成長」のためにも欠かせない取り組みだといえる。企業としては、治療と仕事の両立支援の意義を理解した上で取り組んでいきたい。
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