【2024(令和6)年度版:法改正一覧】労働基準法ほか人事労務関連13項目の要点を解説<社労士監修>
「障害者雇用率の引き上げ」は具体的にどうなる?
「障害者の雇用の促進等に関する法律」施行令等の改正により、4月から障がい者の法定雇用率が段階的に引き上げられ、2024(令和6)年4月からは2.5%,2026(令和8)年4月からは2.7%となる。(2)障がい者の雇用の促進と継続を図るための「障がい者雇用推進者」の選任(努力義務)
(1)については、「障害者雇用状況報告書」及び記入要領が事業所に届くので、提出期限である7月15日までに、主たる事業所の所在地を管轄する公共職業安定所長に報告することになる。
作成において、障害者手帳等の確認により「障がい者の把握(人数、障がい種別、障がい程度等)」が必要である。これらの情報については、「個人情報保護法」をはじめとする法令等に十分留意しながら、適正な取得、利用等を行うことが求められており、利用目的の説明や、報告に必要な個人情報の内容についての説明が必要となる。厚生労働省が策定した「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」があるので、事前に確認しておきたい。
なお、報告をしない場合又は虚偽の報告をした場合は、「障害者雇用促進法」第86条第1号の規定により、罰則(30 万円以下の罰金)の対象となるので適正な報告をしなければならない。
「障害者雇用率の引き上げ」以外にも改正項目が
なお、4月から以下の改正もあるので確認をしておきたい。1)週所定労働時間10時間以上20時間未満で働く重度の身体・知的障がい者、精神障がい者の算定特例
障がい特性により長時間の勤務が困難な障がい者の方の雇用機会の拡大を図る観点から、特に短い時間で働く重度身体障がい者等の方を雇用した場合、特例的な取扱いとして、実雇用率上、1人をもって0.5人と算定することになる。※「週10時間以上20時間未満」で働く障がい者を雇用する事業主に対して支給していた特例給付金は、2024(令和6)年4月1日をもって廃止となる。
2)障害者雇用調整金・報奨金の支給方法の見直し
事業主間の障がい者雇用に伴う経済的負担の調整を図るとともに、障がい者を雇用する事業主に対して助成、援助を行うことにより、障がい者の雇用の促進と職業の安定を図るため、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき、障害者雇用納付金制度が設けられている。(2)障害者雇用調整金の支給:1人当たり月額29,000円(常時雇用する労働者が100人を超える企業で法定雇用率が達成の場合)
(3)報奨金の支給:1人当たり月額21,000円(常時雇用する労働者が100人以下の企業で障がい者数が一定数を超えている場合)
4月からは、(2)の支給対象人数が10人を超える場合には、当該超過人数分への支給額が1人当たり月額23,000円(6,000円を調整)に減額され、(3)の支給対象人数が35人を超える場合には、当該超過人数分への支給額が1人当たり月額16,000円(5,000円を調整)に減額される。
「障害者雇用における国の支援」を把握しよう
障がい者雇用の経験やノウハウがない場合や、一時的な経済的負担の発生により、漠然とした不安を抱えている企業もあるかもしれない。障がい者を雇い入れた場合などに、次のような助成金が受給できる場合があるので確認しておきたい。1)特定求職者雇用開発助成金
(1)特定就職困難者コース:障がい者をハローワークや民間の職業紹介事業者などの職業紹介により継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に対して、助成金が支給される。(2)発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース:発達障がい者をハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に対して、助成金が支給される。
2)トライアル雇用助成金
障がい者を試行的に雇い入れた事業主、または、週20時間以上の勤務が難しい精神障がい者・発達障がい者を、20時間以上の勤務を目指して試行雇用を行う事業主に対して、助成金が支給される。3)障害者介助等助成金、職場適応援助者助成金
雇用する障がい者の職場定着のための措置を行う事業主や、職場適応援助者による障がい者の職場適応の援助を行う事業主に対して、経費や賃金の一部が助成される。法改正に伴い、様々な対応が必要になってくるが、整備を進めて行くと、「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)」の取り組みが推進され、障がい者だけではなく、誰にとっても働きやすく活躍できる職場環境の実現につながるメリットがある。
企業としてはこうした意義を理解し、障がい者雇用を積極的に推進し、「多様性のある組織づくり」に取り組んでいけたらと思う。
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