第8回 HRテクノロジー大賞『人事マネジメント部門優秀賞』
アフラック生命保険株式会社
人的資本ダッシュボードによるデータドリブン経営の実践
~HRテックを活用したアフラックの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上の実現~
人財マネジメント戦略の一環として、人的資本の可視化とデータドリブンな経営を実現するため、人的資本ダッシュボード及びエンゲージメントサーベイシステムを構築。Microsoft Power BIとQualtrics社のテクノロジーを活用し、人財データの即時参照・取得を可能にしています。これにより役員から現場までのスピーディな意思決定を実現するなど、人財戦略部が全社観点での各部門の支援/コンサルティングを行うことを可能にする優れた取り組みであると高く評価されました。プロフィール
伊藤 道博 氏
アフラック生命保険株式会社
執行役員 人財マネジメント戦略担当
1995年、大学卒業後アフラックに入社。契約サービス、営業支社長、人事、コーポレート部門の管理職など幅広い職務を経験。2019年にアジャイル推進室の初代室長として、アジャイルの全社展開をリード。2020年人事部長として人財マネジメント制度改革をリードし、2022年6月より現職。特例子会社のアフラック・ハートフル・サービス株式会社の代表取締役も兼務。
穴沢 真基 氏
アフラック生命保険株式会社
人財戦略第一部 人財テクノロジー課長
2007年、ソフトウェア開発会社を経てアフラック入社。IT 部門にてシステム導入のプロジェクトマネージャーを経験。2018年、アフラック・インターナショナルに出向(米国駐在)。2020年、人事部人財マネジメント制度改革室配属。2021年からHRテック利活用を推進し、2022年1月より現職。
人的資本データを活用し、人財の力を引き出す。そのために専門部署も新設
――どのような背景のもと、「人的資本ダッシュボードによるデータドリブン経営の実践」の取り組みを進められたのでしょうか。伊藤氏:アフラックは、創業以来「人財を大切にするコアバリュー」を大切にし、人財を軸に据えた経営を行っています。現在の中期経営戦略では、5つの戦略のうち「多様な人財の力を引き出す人財マネジメント戦略」を第一の柱に位置付けています。これは、超VUCAといわれる昨今、生命保険業界も競争が激化しており、ビジネス変革に向けた戦略を策定し実行するのは「人財」に他ならないとの考えからです。そして、人財の力を最大限引き出すために、職務等級制度(ジョブ型)を導入し、より丁寧に社員に向き合っていくためには、人的資本データの活用が必要と考え、推進してきました。
もともと、データドリブンの人財マネジメントを行うことは、20年ほど前から考えていたことです。人事には、全体論と個別論があります。“人” がテーマなだけに、どうしても個別論に注目しがちですし、実践的で経験に基づく判断も大切です。しかし、全体論、つまり制度や施策の設計においては、科学的な見地から検討することも必要です。そんなことを考えているうちに、テクノロジーの発展により様々なデータ分析が容易にできるようになり、現場の社員や感情を大切にしながらも、データを活かし総合的かつ高度な判断ができる時代になってきたことも背景にあります。
――以前はどのように人財に関わるデータを管理していらっしゃったのでしょうか。
伊藤氏:これまでは、人事部門が人的資本データを保有しており、経営や現場ですぐに活用することはできませんでした。そのため、各部門のマネジメント層がデータを確認したい時には、その都度人事に照会するしかありません。人事は、要望に合わせて全社データから該当部門・期間のデータを抽出し、資料を作成して渡していたため、その作業に非常に手間と時間を費やすことになります。そこで今回、BIツールによる人的資本ダッシュボードを構築することで、現場サイドで人的資本データをすぐに確認できるようにするとともに、人事の作業の負担も軽減しました。
――この取り組みを進めるにあたり、人財戦略部内に「人財テクノロジー課」を創設されたそうですね。
伊藤氏:新しい取り組みを始める時に、「誰にリードさせるか」は、重要なテーマです。一般的に人事部は多忙です。人的資本ダッシュボードの導入は、既存業務との兼務で進められるほど小さなプロジェクトではありませんし、スピードも求められます。そこで2022 年に、専担チームとして人財戦略部内に人財テクノロジー課を立ち上げました。実際に組織を新設したことでドライブがかかり、アジャイルで価値創出ができたと感じています。
――人財テクノロジー課は、人事のバックグラウンドがある方々が多く所属されているのでしょうか。
伊藤氏:IT、営業、マーケティングと、バックグラウンドが多様なメンバーで構成されています。実は、この点は、人財テクノロジー課のメンバーをアサインする際に気をつけたところです。新しいことをする際、それまでの人事の知識と経験が、柔軟な発想をかえって阻害する懸念があります。だからこそ、豊富な人事経験よりも、多様な経験や知見を活かしていきたいという狙いがありました。
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