そこで今回は、当時現場で指揮をとられた現・サントリーフィールドエキスパート株式会社の富永氏と、サントリー食品インターナショナル株式会社の藤巻氏、角谷氏、そして株式会社人的資産研究所の進藤氏にお集まりいただき、取り組みに至った経緯や取り組み内容、成果などをインタビュー形式で語っていただきました。(敬称略)
【出演者】
■富永 孝司氏
清涼飲料の販売を行うサントリーフーズ株式会社の営業としてキャリアを重ね、営業マネージャー、東北支社長/中国・四国支社長を歴任。その後、サントリー製品の店頭での販売促進活動を担うサントリーフィールドエキスパート株式会社に移り、専務取締役に就任。現在に至る。
サントリーフィールドエキスパート株式会社
専務取締役
■藤巻 恒氏
新卒で三和銀行に入行。その後、2004年にサントリーフーズ株式会社に転職。入社後は、グループ会社の経営管理や経営企画、事業企画を経験。2023年に人事部門に異動後は経営課題となっているシニア活躍の推進、ダイバーシティの対応といったミッションに挑んでいる。
サントリー食品インターナショナル株式会社
SBFジャパン 人財開発室
■角谷 悠氏
2021年にサントリーホールディングス株式会社に入社。入社後は自動販売機事業の営業職(首都圏エリア担当)を経験。その後、2022年に人事部門に異動し、組織開発領域を担当、現在は人的資本経営開示やダイバーシティを担当している。
サントリー食品インターナショナル株式会社
SBFジャパン 人財開発室
■進藤 竜也氏
2011年、株式会社セプテーニ・ホールディングスに新卒入社。採用・育成・配置の分野にアナリティクスの技術支援を行う。グループ内研究機関である人的資産研究所の所長を経て、2021年よりHRテクノロジー事業を開始。一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 上席研究員/個人情報保護士。
株式会社人的資産研究所
代表取締役
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組織風土を変革していくためには
メンバー同士の相互理解が不可欠だった
――本題に入る前に、サントリー様と人的資産研究所様との関わりについて、お聞かせいただけますでしょうか。進藤 サントリー様とは弊社が創業した4年前からお付き合いさせていただいておりますが、当初はシステムをご提供する立場だったところから、現在はさらに一歩踏み込んで、データの活用を通じた組織改革プログラムをご一緒にさせていただいております。
――それでは改めて、皆様にここまでの取り組みの状況や成果などをお伺いできればと思います。まずは取り組みに至った背景や経緯からお聞かせいただけないでしょうか。
富永 私がサントリーフーズの中国・四国支社長に就任した当時、中国・四国エリアは、全国的な営業戦略や施策を導入しても、なかなか成果が出ない状況に陥っていました。その結果、社員は徐々に自信を失っていき、組織全体に停滞した雰囲気が漂っていたんです。このままではどんなに頑張っても成果につながっていかない、組織風土から変えていく必要があるのではないか。そんな風に考え始めたのが、そもそもの始まりでした。
そこで、まずは良い意味で環境を変えてあげるために、当時長期滞留していたメンバーを東京や大阪に異動させ新しい経験を積んでもらい、中国・四国支社には別エリアからのメンバーを迎え入れ、組織の血を入れ替えました。
しかし、年齢も経験も価値観も異なる人たちが集まれば、組織運営やコミュニケーションの面で一時的に課題が生じるのは言うまでもありません。いかにお互いに理解し合えるかが喫緊の課題となっていました。そんな折、人事から「こんなプログラムがあるのですが、やってみませんか?」と紹介いただいたのがきっかけです。
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当時、すでに人的資産研究所さんとお取引があったので、進藤さんにご相談したところ、「今までやってきたものを組み合わせたらより良いものになると思いますよ」とご提案いただき、それならぜひやってみようと。そういうことから、現場の組織風土改革に適したプログラムを一緒に作っていただいたという流れです。
進藤 それまではお一人おひとりの個性を診断し、そのデータをお渡ししてマネジメントにお役立ていただいていたのですが、それだけでは当時の中国・四国支社のような環境下では高い効果は得られないのではないかと感じたんですね。まずは組織風土が変わっていくきっかけとなるような強力なコンテンツを作って、それをワークショップで実践していただいた上で、そこからデータをご覧になられたり、社内で共通言語化していただいたり、さまざまな施策につなげていかれたほうが効果的だと思いました。そうしたことから、導入のワークショップ作りの部分から参画させていただいた次第です。
富永 データを提供いただいたら終わりではなく、組織改革のための一つのパッケージのようなものを作っていただいたイメージですよね。そうした中でも、やはり多様な属性や価値観を超えて相手を知りたいという問題意識がありましたので、データを活用した自己理解や相互理解のためのワークショップはとても意義があると感じました。
進藤 ワークショップに関しては、自分のデータを見るだけではなく相手のデータも見て、お互いを知る機会になるよう設計しました。このグループワークを通じて、お互いの個性を理解するのがいかに大事なことか体感いただけたと思います。
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全員参加型のプログラムで
“自分事”にできたことが成功の鍵
――この取り組みを通じて、どのような成果や変化があったのかお聞かせください。富永 支社全体の会話量が明らかに増えました。またマネージャーが部下を指導する際のアプローチの引き出しも増えたと感じます。これまではマネージャー自身の経験値だけで指導する傾向が見られましたが、組織内の相互理解が促進されたことで、「Aさんはこういうタイプだから、こういうアプローチをしよう」「Bさんはこういうタイプだから、こういうアドバイスがいいよね」と、一人ひとりの個性を踏まえた上で、指導ができるようになりました。
それと、最近の若い人たちは価値観が大きく変わってきているので、我々が当たり前だと思っていることを言っても、どこか芯を食わないと言いますか、その場では変わるのですが、すぐに元に戻ってしまうようなところがあるんですね。それがデータを活用することで、相互理解の精度が高まり、価値観を擦り合わせする時間もだいぶ短縮され、無駄なく効率的にわかり合えるようになったと思います。「あの人にこういうことを言うとすごく燃えるんだな」とか「こういうことを言うと逆にやる気が落ちるんだな」といったことを全員で共有することによって、ある意味、チーム力も上がったと感じます。
――かつては停滞感のあったチームの雰囲気もだいぶ変わってきたのでしょうか?
富永 そうですね。ただそれはみんなが頑張ってくれたお陰で業績が上がってきたことも大きかったと思うんです。組織風土改革の取り組みと業績アップを両立できたこと。それが停滞感を消し去った原動力になったと思いますね。
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協力:株式会社人的資産研究所
この後、下記のトピックが続きます。
続きは、記事をダウンロードしてご覧ください。
●組織風土改革の取り組みが成功したポイント
●データの活用に悩む人事がやるべきこと、意識すべきこととは?
●お互いを理解し合うことが、多様な人材が集まる組織の成長に欠かせない
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