※今回の取り組みは、2023年8月時点のものです。
第8回 HRテクノロジー大賞『採用部門優秀賞』
株式会社荏原製作所
自社のピープルアナリティクスAIから新しいジョブを定義し、実際の採用活動に取り入れwell-beingを向上
多様な人材を惹きつけ、求める人材を採用することを目的に”アンバサダー”という専門のジョブを新たに設置。独自開発のピープルアナリティクスAIを用いてビッグデータより経営状態を見極め、将来に必要なジョブをデータドリブンに一から設計しました。心理的安全性がある空間をデザインできるアンバサダーを面接やオンボーディングに取り入れた結果、従来と比較して候補者がwell-beingを感じられただけでなく、企業ブランディングにもつながりました。新たなジョブの定義とデータ活用により、多様な人材の獲得と活躍促進に資する優れた取り組みであると高く評価されました。プロフィール
三隅 光 氏
株式会社荏原製作所
データストラテジーチーム データストラテジー&アナリシス ディレクター(インタビュー当時)
言語統計の研究、海外事業経営・新規事業開発、ビジネスコンサルティング、位置情報サービス開発、AI開発等に関するアルゴリズム解析、法律専門職等を経て、2019年11月株式会社荏原製作所に入社。研究部門でデータサイエンスを担当したのち、2020年5月にHRtechプロジェクトを立上げ。メタバース、AI、ブランディングなどさまざまな領域を組み合わせデータ分析・アナリティクスの観点から経営戦略を立案・推進している。
西尾 舞 氏
株式会社荏原製作所
データストラテジーチーム アンバサダーセクション チーフアンバサダー(インタビュー当時)
株式会社荏原製作所入社後、人材開発部にて新卒採用を担当。2020年よりHRtechプロジェクトに参画し、ピープルアナリティクスを活用したデータドリブンな採用改革を推進。2022年よりダイバーシティプロジェクト、ブランディング戦略プロジェクトに参画。多様な人材が心理的安全性を保ち、ワクワクしながら活躍できる環境構築をミッションとして、メタバースなど新たな手法を掛け合わせたアンバサダーブランディングを推進している。
「目に見えない多様性(タスクダイバーシティ)」の実現に向けて
――まずは、今回の取り組みを開始した背景について教えてください。三隅氏:以前から、面接による選考や入社後の配属に課題があると感じていました。本当はポテンシャルや能力がある人はたくさんいるはずなのに、そういう人が選考に残らなかったり、適さない場に配属されてしまったりしている事例は、世の中にたくさんあります。なぜそういうことが起こってしまうのか、疑問でした。
その疑問をきっかけに色々と考えてみると、それは見る側に問題があるのではないかという仮説に行き当たりました。表面上はいくら「客観的にその人の適性を見て判断している」といっても、数値化してデータを見てみると、偏りが出てきてしまうことが明白です。人は自分と似ている人が好きですから、無意識のうちにそういう人を好んで採用します。すると組織はどんどん同質化してしまいます。当社にも、そういった傾向がみられました。昔はそれでもよかったのかもしれません。ですが、今の世の中では新しいものをどんどん生み出しイノベーションを創出していく必要があります。そのためには、これまでとは異なる多様な人材の力が不可欠です。そこで、採用活動の抜本的な見直しが必要だと考えました。
――具体的に、どのような抜本的な見直しのもと採用活動を行われたのでしょうか。
三隅氏:多様な人材を採用するために、独自の「ピープルアナリティクスAI」を開発・導入しました。適性検査やエントリーシート、面接での言葉や表情など生体信号も解析して人材タイプを分類するものです。これにより、人材の多様性を可視化できるようになりました。ここでいう多様性とは、性別や国籍・年齢などの「表層的なダイバーシティ(デモグラフィックダイバーシティ)」ではありません。能力やバックグラウンド、経験や職歴といった「目に見えない多様性(タスクダイバーシティ)」です。組織のイノベーションを促進するには、このタスクダイバーシティこそが重要なのです。それを、ピープルアナリティクスAIによって分類していくのです。
ただ、そうした人材を見つけるだけではなく、当社に惹きつけることが必要です。そこで「アンバサダー」という新たなジョブを自社で設定して、当社が求める目に見えない多様な人材やイノベーション創出につながるチャレンジ精神を備えた人材の採用に取り組みました。
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