東アフリカが注目されている理由:
・GDP成長率が比較的高い(実質GDP成長率は2013年で5.3%、2014年で5.8%)
・経済に好ましい人口動態の推移
・急速に拡大する中間層及び高まる市場への期待並びに、銀行から提供される個人向ファイナンスが、旺盛な内需をけん引
・活発な都市開発
・民主主義の成熟化によるさらなる政治的安定
・豊富な天然資源
・税金等による金融的な支援
・巨大なインフラプロジェクト
・東アフリカ共同体の創出により、巨大な資本、労働力、商品の地域共通のマーケットの出現
この地域は著しい経済発展の可能性を秘めています。いまだ市場には大きな参入余地があり、中産階級が拡大するにつれてあらゆる商品、サービスの需要が伸びているため、日本からの参入企業の事業拡大の機会は著しく大きく、海外からの投資をこの地域に呼び寄せる要因となっています。特に中国からの投資は盛んに行われています。
日本の政府レベルでは、安倍首相がアフリカを訪問した際にアフリカの強力なパートナーとなることを熱望していると表明しています。2016年にアフリカ開発会議(TICAD)がアフリカ(ケニア)で初めて開催されます。JICA(独立行政法人 国際協力機構)等の日本の公的な機関は、アフリカ全土にわたり複数の重要なプロジェクトについて財政的に支援しています。特にインフラの分野での開発に注力しています。
日本企業の注目の的は1.5億人の東アフリカ・ケニア経済圏
多くの日本の企業がアフリカ、特に東アフリカに注目しています。東アフリカはケニア、ウガンダ、タンザニア、ルワンダで構成されています。これらの国々の人口の合計は約1億5千万人です。日本の大手商社は長年この地域の天然資源やインフラに投資をしてきました。その他の企業も現地のディストリビューターやエ-ジェントと提携し市場に参入しています。日本企業は、現地に自らの活動の拠点を持とうとしており、現地企業への出資や業務提携、場合によっては買収により、以前に比べて活発に東アフリカ市場へ参入しようとしています。これら日本企業は、以前は南アフリカを活動拠点の中心として現地本社を設置していましたが、近年は現地本社を設置する国としてケニアを選んでいます。このトレンドは日本だけではなく多くのグローバル企業に共通です。例えば、GEはアフリカ本社を南アフリカからケニアに移しました。その他のグローバル企業では、IBM、グーグル、シスコシステムズ、コカ・コーラ、メルク、インドの電気通信事業者であるバーティ・エアテル、ギネスビールで有名なディアジオ等が本社をケニアに設置しています。また。世界銀行、IMFや国連などの国際的な機関もケニアに拠点を設置しています。現地の日本大使館と弊社のディスカッションではより多くの日本企業がケニアにアフリカの本社を設置することを検討しています。
近年のケニアの人気は、地理的にアフリカ全土をカバーするのに便利であること、エアラインのネットワークが良いこと、良質の人材が豊富なこと、起業家気質が旺盛なこと、東アフリカ共同体へのアクセスが容易なこと、外国からの投資に対する規制が少ないこと、港湾が整備されており、インフラが整備されていることが挙げられます。
東アフリカに参入する際には、以下を考慮することが重要です:
・市場は潜在的に非常に魅力的であるが、チャレンジングでもあります。通常は現地の事情に精通し、現地で十分なリレーションシップをもつ現地のパートナーを活用することが、現地市場に早くかつ確実に参入するためには重要です。
・文化の多様性:東アフリカの国々の文化は均質ではなく、多様であり、この点に注意を払うことが重要です。各国の文化に適したテーラーメイドな戦略をとることが重要です。
・言語:英語が東アフリカで共通な言語です。市場へ参入するには英語で十分コミュニケーションが取れることが重要です。
・現地人の雇用機会:法的に要求されているものではないですが、現地に資本を投下し、経営陣を雇用し、現地で雇用を促進することは重要です。
・市場のニーズ:各国の市場をよく理解し、各市場に適合した製品の開発・販売を行うことは、海外からの新規参入者にとって非常に重要です。
東アフリカに参入するための成功の鍵は、現地のニーズをよく理解し、それらに即した製品やサービスを提供する現地に密着した企業として、自らをプロモートすることです。
東アフリカ参入の成功事例と失敗事例
東アフリカで成功している顕著な例としてはボーダフォンがあります。同社はSafaricomを買収し、東アフリカで最大の通信業者となり、大きな収益を上げています。同社の成功は現地の人々の習慣や嗜好を理解することによります。同社は現地の市場のニーズに合致したモバイルペイメント(携帯電話による支払)事業を手掛けており、これにより金融取引が大変容易になりました。現地企業であるSafaricomのイメージを活用し、現地の市場に適合したサービスを提供しているのです。
ディアジオもまた東アフリカで最大の現地のビール会社のM&Aを行い成功している企業です。これらの成功は、現地で事業を確立している企業の買収の成功が鍵となっています。これらの買収によって自らを「地場の企業」としてポジショニングし、地場のブランド、製品、流通、人脈等を得て、リスクを軽減し市場への浸透を加速させています。しかしながら、多国籍企業においても東アフリカでの事業で、しばしば失敗が見受けられます。他のアフリカの地域で成功している、South African Breweries, Shoprite, Stuttaford、Metroなどの南アフリカの企業であっても、ケニアでは現地の文化への適合を誤り、失敗しています。Barclays、Standard Chartered 、Ecobankのような国際的な金融機関であっても、グローバルに標準化された製品やサービスをそのまま現地に投入し、現地の金融機関との競争において困難を経験しています。
トヨタグループは文化的融合戦略により東アフリカで成功
日系企業は、東アフリカと長期のつながりを築いています。東アフリカの文化を重んじ、日本の文化と融合させるような戦略をとっているトヨタグループのトヨタ自動車、豊田通商は成功例の一つで、優れたサービスと信頼性の高い製品により強力なブランドを構築しています。同社は現地で大変評判が高い人物を東アフリカにおける取締役会のチェアマンに据えています。また、アフリカで最大の自動車の販売企業であるCFAO Automotiveを買収したことも、現地の自動車業界での確固たる地位を構築した要因です。これらは、市場におけるトヨタグループの信用を高め、現地の政府、企業、消費者との良好な関係をサポートしています。同社は、現地のスタッフや現地政府と協力し、製品とサービスをどのようにアフリカの各々の市場で提供するかを決めています。東アフリカで事業をするには、現地の文化・風習を理解することが重要です。東アフリカでは海外から来た人々を歓迎しますが、現地とより結びつき、サポートされた形を好みます。この現地との結びつきは、資本及び事業の両方においてです。例えば、シニアエグゼキュティブのポジションに就く人物が自国民以外の場合もあまり抵抗がないアメリカの文化とは違い、企業の顔たるポジションに就く人物は現地の人間が好まれます。現地の人間は、より信頼され近づきやすい存在であり、現地の人間が代表を務める企業の製品はより信頼されます。したがって、現地人の代表、取締役、株主を持つことは現地で事業をするにおいて大変役に立ちます。
東アフリカは、集団を重んじる文化であり、家族が社会の構造においても重要です。家族や、目上の人間を重んじることはアジアの文化との共通点です。現地で実際に事業行うには、これらの文化的特徴を考慮に入れることが重要ですが、日本の文化と相性が良い文化です。
周囲との関係性や信頼は現地では重要です。信用できる人や企業の紹介が無い場合、現地の企業は外国企業に対して慎重で懐疑的になります。信用を得て、取引をするためには長い期間がかかります。したがって、現地で信用があるアドバイザーが非常に重要な役割を果たします。
東アフリカでは、時間の感覚と物事の優先順位が他の地域とは異なります。時間的なコミットメントはしばしばプライオリティが低いことがありますが、失礼とも異常なことであるとも捉えられていません。しかしながら、現地では約束を破ることは受け入れられません。
多様な文化への理解と世界での競争の知識が必須
多くの事業において、詳細な情報やソフィスティケイトされた情報を得られる機会は限られており、デューディリジェンスはチャレンジングです。意思決定は全ての情報がそろう前にしなければならない場合があります。東アフリカの各国は、その成り立ちや国境、植民地時代など多くの共通点がありますが、文化は様々です。各々の国は異なる経験をし、これらはビジネスに対するアプローチや、海外からの投資家や事業パートナーに対する対応に影響を与えています。例えば、タンザニアは資本主義国であると考えられていますが、社会主義的なルールも考慮して参入することが重要です。過去のウガンダの独裁政権、ケニアやルワンダの民族的対立これらは全て現地の人々の現在の習慣に影響を与えています。アフリカを統一された文化を共有している地域であるとみなすことは過ちです。
東アフリカの人々は、世界のトレンドや地域を取り巻く環境について非常に多くの知識を持っています。東アフリカ及び世界での競争についての知識は、現地では必須です。
海外企業の共通の過ちは現地の市場に、現地のパートナーなしで独力で参入しようとすることです。適切なパートナーを持つことは市場参入のスピードを速め、何より重要なことはリスクを大幅に減らすことです。多くの適切なパートナーは現地で同族経営をしています。散見される過ちとしては現地の同族企業との関係構築のために、適切な紹介者なしで連絡を入れることです。たいていの場合、反応がないか、反応があっても意味のある有効な関係を築くことは困難です。現地の企業から信頼されているアドバイザーを使うことが重要であり、単独での現地企業との接触は、最初から相手を懐疑的にさせ、推奨できません。
日本企業から派遣される人材の要件とは
不慣れな文化圏での事業をすることは、一つのチャレンジです。日本の企業はスタッフを現地に送る場合、言語の問題も含め多くの考慮すべき点があります。東アフリカでは英語のスキルが大変重要です。アフリカに派遣される人材は文化の違いに敏感で、文化に興味を持っている人物が理想的です。現地の文化を重んじ、理解することで事業を成功させることができます。また、起業家精神を理解することも重要です。現地では多くのビジネスは創業者一族によって支配されている同族企業です。創業者一族の思考を十分理解することは、彼らとうまく付き合うためには不可欠です。
現地の会社との良好な関係を築くために必要な能力は以下です。
1.接触すべき適切な企業を見分ける能力
2.それらの企業から信用を得られる接触手段をもつ能力
3.それらの企業の属する文化を理解し習慣に則ったコミュニケ―ションをとる能力
これらの重要さを認識し、良いアドバイザーを見つけることが非常に重要です。
成功の鍵は現地化とコミュニケーション
東アフリカで成功している海外の企業は現地化を優先している企業です。現地化は経営陣、株主、製品及びサービス、現地の事業執行チームの組成等において行われます。国外の本社で策定した戦略を単に現地で遂行させるのではなく、現地のチームに現地での戦略策定に参加させることが重要です。現地の人間を戦略策定や意思決定に参加させることにより、海外企業は東アフリカでの信用を得ることができます。コミュニケーションが東アフリカでの成功の鍵です。また、現地の人々は現地の市場に精通しており、彼ら自身で課題の解決策を見つけることにこだわります。東アフリカで事業をする上での関係性を築くためには、現地の人々と個人的関係を築き、適切な呼称を使用すること、挨拶で握手を欠かさないこと、最初のコンタクトでは形式的ではあるが儀礼を重んじることなど現地の習慣を理解し実行することが重要です。東アフリカは共存社会であり、お互いの幸福に気遣いをする社会です。したがって、挨拶の時にお互いの幸福を気遣う社交辞令を交わすことは重要です。また、いくつかの現地の言葉を習得することも役に立つと思います。ほとんどの東アフリカの国の文化では、愛国心、信頼、相手に対する忠義は高く評価されます。批判など、否定的なことは、人目につかないように個人的に行われ、公に非難することは良くないことです。これらのことは基本的なことですが、個人、会社、さらには政府との関係でも適用されます。
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