近年、「給与計算担当者の退職」や「労務部門のリソース見直し」をきっかけに、給与計算業務をアウトソーシングする企業が増えてきました。しかし、給与計算を外部に委託する際は、事前に十分な検討を行う必要があります。今回は、給与計算業務をアウトソーシングすることのメリット・デメリットおよび、アウトソーシングを検討する際に押さえておくべき事項について解説します。
給与計算をアウトソーシングする際に押さえておくべき事項とは? 委託のメリット・デメリットも解説

給与計算業務のアウトソーシングとは?

給与計算業務のアウトソーシングとは、自社で行っている給与計算業務を、外部の給与計算代行会社や税理士、あるいは社会保険労務士等に委託することです。

委託先によって、それぞれ特色があります。給与計算代行会社の場合は、比較的人数の多い大企業に対応していることが多く、給与計算以外にも、住民税の年度更新や年末調整業務、従業員の窓口対応もサポートするなど、幅広いサービスを展開しています。

一方、税理士や社会保険労務士は、比較的小規模の企業を中心とし、顧問契約に付随して給与計算を行っているケースが多く、細やかな対応が受けられるのが特徴です。

給与計算業務をアウトソーシングするメリットは?

給与計算業務をアウトソーシングには、主に次の3つのメリットがあります。

(1)自社の給与計算業務にかかる負担が減らせる

これまで給与計算業務を行ってきた担当者の業務の負担が、アウトソーシングにより減り、時間外労働も短縮できます。人件費が削減でき、また給与計算システムの契約料や保守料などが不要になるなど、コストダウンにつながります。

(2)給与情報を従業員に見られる心配がない

中小企業には、社長自身や社長のご家族が給与計算を行っており、従業員に給与情報を開示していないケースも多くみられます。給与計算そのものを外部委託すれば、社内で給与情報を取り扱う必要がなくなり、従業員への情報漏えいの心配がなくなります。

(3)給与計算業務の合理化、効率化ができる

委託先への業務移行時に、これまでの計算ルールや情報収集のあり方、業務フローを見直すことで、給与計算業務の合理化と効率化を実現できます。そうなれば、将来再び内製化することになっても、最小限のリソースで対応できるでしょう。

給与計算業務のアウトソーシングにはデメリットも

給与計算業務をアウトソーシングすることには、次のようなデメリットもあります。

(1)コストの発生は避けられない

外部の代行会社等に委託する場合、業務委託料が発生します。委託する業務内容やその範囲によっては、現在の人件費以上のコストがかかることもあります。

(2)情報共有のハードルが上がる

社内で給与計算業務を行う場合、必要な情報はすべて社内にあるため、やり取りが容易で、不備があってもすぐに対応できます。一方で、外部に委託する場合は、必要な資料をすべて期限までに提出しなければなりません。また、追加の情報共有についても委託先のルールに従う必要があるため、スムーズに進まない恐れがあります。

給与計算業務のアウトソーシングを検討する際に押さえておきたい事項

給与計算業務のアウトソーシングを検討する際には、委託先のサービスについて次の点をチェックしておきましょう。

(1)委託可能なサービスの範囲

給与計算業務のみ請け負う業者もあれば、勤怠チェックや勤怠集計、従業員対応、振込対応、住民税年度更新、年末調整や有給管理まで可能なところもあります。委託可能業務の具体的な範囲を確認しましょう。仮に給与計算業務のみ可能な場合、勤怠管理や振込業務などは、引き続き社内で対応しなければなりません。

(2)使用する給与計算システムの種類

委託先によって、給与計算業務に使用するシステムは異なります。システムが変われば、他のシステムとの連携に不具合が出る可能性があるので注意が必要です。たとえば、給与計算と会計処理を同じシステムで行っている場合、給与計算システムを変更することで、会計システムにデータを連携できなくなる恐れがあります。

また、将来的な内製化の可能性を考えると、自社でも取り扱い可能な給与計算システムを選定すると安心です。

(3)情報セキュリティへの取り組み

近年、サイバー攻撃により給与計算システムがダウンするような事態も発生しています。非常時のバックアップ体制や情報漏えい防止の対策など、委託先のセキュリティが万全かどうかを確認する必要があります。

(4)給与計算の業務設計の可否

給与計算のルールは会社ごとに異なるため、委託時には確実な引き継ぎが必須です。必要な情報をまとめ、計算方法や手順をマニュアル化するなど、業務設計を確実に行ってくれるかどうかを確認しましょう。

(5)委託先の業務体制

給与計算は期限厳守であり、ミスも許されません。安定して稼働できる体制かどうかを確認しましょう。具体的には、「複数担当制か」、「情報連携がスムーズにできるか」がポイントです。



給与計算のアウトソーシングを考えるなら、事前にしっかりと比較検討を行い、自社に合う業者、あるいは専門家を選んでください。
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