VUCA時代のキャリアアップや企業の持続的な成長を図るために不可欠なスキルの一つ、「問題解決能力」。「問題解決能力」とは、問題が発生した際にその原因を抽出・分析するとともに、本質を見極めた上で最適な解決策を見つけ出し、実行していけるスキルを意味する。個人はもちろんのこと、組織でそのようなスキルを身につけられれば、企業としての生産性も大いに高められるだろう。そこで今回は、「問題解決能力」の定義や必要性のほか、育成にも活かせる当該スキルの高い人や低い人の特徴などを解説していく。
「問題解決能力」の高い人や低い人の特徴とは? 育成や仕事に活かすうえでなぜ必要なのかも解説

「問題解決能力」はなぜ必要なのか

ここでは、「問題解決能力」の必要性やメリットについて説明したい。

そもそも「問題解決能力」とは、問題が発生した際にその原因を抽出・分析するとともに、本質を見極めた上で最適な解決策を見つけ出し、実行していけるスキルを指す。ただ単に問題を解決すれば良いのではなく、一連のプロセス全体を遂行するための能力を表わしている。なぜ、プロセスが重視されるのかと言えば、次に同じような問題が起きた時に、前回のプロセスを応用することで、より迅速、効率的に解決できるからである。

「問題解決能力」は「問題を認識する力」「解決策を考える力」「解決策を実行する力」の3つに大別される。いずれも問題を解き明かし、迅速に解決するためには必要なスキルと言える。当然ながら、そうしたスキルを身につけている人は、周囲からの評価も高く信頼も得やすい。いわゆる、「仕事ができる人」と位置づけられ、市場価値も高い。

●「問題解決能力」が必要な理由

・成長に向けて
ビジネスは問題解決の連続であると言われている。常に何かしらの問題が起こり得る。ただ、毎回似たような問題ばかりではない。初めてチャレンジするようなケースもあるだろう。それらにたじろいでいては、問題は解決されず何の成果も得られない。ビジネスパーソンとしての成長も止まってしまう。そうならないためにも、「問題解決能力」を常日頃から鍛えておかないといけない。PCのオペレーションシステムのようなものだからである。

・仕事の価値向上
「問題解決能力」が必要な理由が、もう一つある。それは、仕事の価値が向上することだ。問題は自分だけ、自分たちの組織だけが有しているわけではない。お客様もさまざまな問題を抱えている。そうしたお客様のお困りごと、成功を阻む要因を的確に把握し、代わって解決へと導いてあげると「これからも是非サポートしてほしい」と感じてもらえ、社外からの信頼度が一気に高まるだろう。このように、「問題解決能力」は自分たちの仕事の価値を高めてくれる能力でもあるわけだ。

●「問題解決能力」を身につけるメリット

・思考力の向上
まず、「問題解決能力」を身につけると思考力が向上する。そもそも、問題が発生する原因は一つとは限らない。さまざまな原因が複雑に絡み合っている。それだけに、論理的思考や仮説思考などの思考法も用いながら、つながりを含めて紐解いていかなければならない。付け焼刃のスキルではとても太刀打ちできなくなる。常日頃から問題意識を持って、何をどうするかというトレーニングをしておく必要があると言って良い。その結果として、問題が客観的に捉えられるようになり、一つと言わず複数の解決策を考えることができる。

・物事に対する柔軟な対応
「問題解決能力」が身につくと、物事に柔軟に対応できるようになる。日頃から論理的に思考する習慣がつけられているので、予想外の出来事に遭遇したとしても状況を客観的に分析・把握して、沈着かつ冷静に対処していけるからである。逆に、「問題解決能力」が低ければ、そうした突発的なケースではただ単にあたふたしてしまい、問題の本質がどこにあるかわからなくなってしまう。当然ながら、何か手を打ったとしても的外れになりがちだ。

・業務の質や効率の向上
「問題解決能力」がアップすると、業務の質や効率も確実に向上する。スピーディーに問題を把握し、解決していけるので無駄が少ないからだ。また、一人ひとりの「問題解決能力」が高まれば、そのノウハウをシェアしていくことで周囲にも良い影響が広がっていく。結果的に、組織全体の成果も上がっていくことになる。

・筋道を立てた問題解決
「問題解決能力」が身につくと、筋道を立てた問題解決が可能となる。例えば、納期に遅れがちな部下がいたとする。この場合、納期前は残業時間を大幅に増やすことで一時的にクリアできるかもしれない。しかし、納期の度にそのような方法を取るだけでは、心身ともに疲労が増す上に仕事の品質もあまり期待できない。こうしたケースで、「問題解決能力」を活用することによって、「納期を守れない理由はどこにあるのか」という根本的な原因を分析し、それを克服できる施策を筋道立てて考え、実行できるようになる。

・適切な振り返り
適切な振り返りができるようになるのも、「問題解決能力」を身につけるメリットである。万が一、上手くいかなかった、成果が出なかったとしても、プロセスをしっかりと踏んでさえいたのであれば、どこにミスがあったのかを確認しやすい。それを行ってさえおけば、次に類するケースが起きた際にはしっかりとした対策を施すことができる。

・予想外の出来事に対する対処
ビジネスでは、何もかもが計画通り・想定通りに進むことはレアと言って良い。特に、昨今はVUCAの時代と言われている。要は予測不可能な時代に突入しているわけだ。しかし、こうした状況であっても、「問題解決能力」が高ければ不測な事態になっても何が問題であるのかを冷静沈着に受け止め、原因を解明し解決へと導いていくことができる。

そもそも仕事上での「問題」にはどのような種類があるのか

次に、問題にはどのような種類があるのかを取り上げたい。実際には、以下にある通り「発生型」「設定型」「潜在型」の3つがある。それぞれの内容を説明したい。

●発生型

まずは、「発生型」だ。これは、特定の環境や条件に起因して自然と起こる問題である。特徴は、既に何がしかの問題が起きていて、どこに問題があるかが明確なことだ。問題が表面化しているだけに、解決策も考えやすい。ただ、すべてがそうだともいえない。表面的に見えている問題の奥に本質や根源が隠れているケースもあるからだ。

●設定型

次に、「設定型」とは自分自身で目標を設定し、それを達成しようとする過程で発生する問題だ。目標は理想であり、あるべき姿と言い換えられる。その目標と現状との間にあるギャップが問題と言って良い。ギャップをどう埋めていくか。そのためのアクションプランを強い意思を持って実行していくことが重要だ。

●潜在型

最後に紹介するのが、「潜在型」だ。これは、まだ表面には現れていないものの、今後発生する可能性がある問題と言える。具体的な例で説明しよう。チームリーダーにもさまざまなタイプがいる。なかには、マイクロマネジメントを貫き、チームメンバーに事細かくダメ出し、指示出しをするリーダーもいする。これでは、そのリーダーがいる間は、チームとして機能するかもしれないが、リーダーが交代した途端にチームの成果を導き出せなくなってしまう。なぜなら、メンバー一人ひとりに自ら考える力や自発的な姿勢が醸成されていないからである。

育成や仕事で活かすうえで知っておきたい「問題解決能力」の高い人や低い人の特徴とは

それでは最後に、育成や仕事で活かすうえで知っておきたい「問題解決能力」が高い人と低い人の特徴について、それぞれ考察してみよう。

【高い人】

●問題点の見極めが上手い
「問題解決能力」が高い人は、問題点の見極めが上手い。そもそも、問題点を見つけるには、原因を洗い出す、分析する、特定するという作業が必要になってくる。「問題解決能力」が高いということは、これらの作業を迅速に行えるということである。

●計画を適切に立てられる
問題解決に向けた計画を適切に立てられるのも、「問題解決能力」が高い人の特徴と言える。計画を立てる際には、さまざまな背景や事情を把握した上で、どのような方法で進めていくか、それぞれの工程にどれだけの時間を割くかも決めなければいけないからだ。

●主体性を持って行動していける
主体性を持って行動していけるのも、「問題解決能力」の高い人の特徴だ。何故なら、問題がどこにあるかを把握・分析した上で、適切な計画を立てていくには問題を自分事化して捉えなければいけないからである。逆に、「何か起きても自分には関係ない」という姿勢では、「問題解決能力」は身につかないと言って良いだろう。

●柔軟に対応ができる
「問題解決能力」の高い人は、柔軟な対応ができる。予期しない事態・状況に陥ったとしても、決して慌てない。必要な情報を組み合わせながら、臨機応変な対応を取っていけるからだ。

●潜在的な問題も解決できる
潜在的な問題を解決できるのも、「問題解決能力」の高い人に共通した特徴だ。すべての問題が表面化しているわけではない。時には、問題の本質が隠れているケースもあり得る。問題の原因分析が浅いと、ついついそうした本質を見逃してしまう。

●適切なリソースが確保できる
「問題解決能力」が高ければ、原因を分析・解明し適切な対策を立てたタイミングで、それを自分やチームとしてやり遂げられるレベルかどうかも判断できる。専門家や他チームのサポートがなければ実現できないとしたら、適切なリソースを確保するためのアクションを取ることができる。

●失敗を繰り返さない
「問題解決能力」の高い人は、同じ失敗を繰り返さない。なぜなら、たとえ失敗しても冷静に振り返り、問題の原因がどこにあったのか、次はどんな対策を考えれば良いかを導き出せるからだ。また、再び同じようなことが起きる可能性も想定しておける。それを踏まえて対策を講じているので、問題自体が発生する可能性が大幅に低くなる。

【低い人】

●同じ失敗をしてしまう
「問題解決能力」の低い人は、表面的な原因解明や対策しかしない傾向が強い。そのため、同じような問題が起きた時に、前回と同じ過ち・ミスを犯してしまいがちだ。当然ながら失敗を繰り返してしまう。

●無理な計画を立てがち
無理な計画を立てがちなのも、「問題解決能力」の低い人の特徴である。なぜなら、問題の原因に対する深掘りが甘く、客観的な判断ができないからだ。ついつい無謀な計画を立ててしまい、結局、的も射ていない、長続きもしないということで、問題は何も解決されないままとなる。

●周りに流されてしまう
「問題解決能力」が低いと、周囲の状況に流されがちだ。そもそも、問題の本質を把握できていないため、解決に向けたアクションプランやスケジュールの詰めが甘くなってしまう。そのために、動くべきタイミングを見誤ってしまいチャンスを逃したり、待つべきタイミングにも関わらず状況が良くなったからと安易に判断したりして、失敗に終わってしまう。結果的に、周囲に振り回されてしまうこともある。
「問題解決能力」はビジネスを進める上で重要なスキルと言える。この能力を磨くことでさまざまなメリットを得られる。それは、個人に限った話ではない。組織全体にも大きな成果をもたらしてくれる。意外と誤解されがちなのが、単に解決策を考えることだけが「問題解決能力」と捉えられていることだ。正しくは、問題を見つけ出す、解決に向けた道筋・方法を考える、解決を目指して実際に行動する。これらのプロセス全体を称して「問題解決能力」と位置つけられる。総合的な能力と呼ばれるのは、そのためだ。「問題解決能力」の重要性が高いだけに、得てして人事担当者は研修のメニューに加えたくなる。だが、「問題解決能力」は1回の研修で身につくものではない。日々の積み重ね、習慣づけが大切であることを認識したうえで、社内の育成を進めていただきたい。
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