ビジネス・ブレークスルー大学大学院で「管理者コーチングの効果性」を研究する永田正樹氏(経営学,博士)が上梓した新書。本書は、著者が20数年前に、マネジャーとして悩んだ経験からはじまる。その経験を踏まえた気づきのステップはこうだ。

1.マネジャーに任命され張り切る
2.チームで成果を出したい
3.自分が全部できてしまう(と思い込んでいる)
4.部下が成長するまで待てない
5.成果を出すために自分でやってしまう
6.部下が仕事経験を積めない
7.部下が成果を出せない
8.チームの成果が出ない

おそらく、どんな組織にもある共通の問題ではないだろうか?
▶【この状態を筆者は「優秀さの罠」と定義する】

今、マネジャーを取り巻く環境はかつてないほど多様・多忙で、複雑だ。その中で、彼らはチームの中で起こる出来事に自らが答えを出そうと奮闘している。しかし、熱心になるほど、部下達は自分の頭で、自律的に物事を考えなくなる(マネジャーの頭の中からだけ、その答えを探そうする)。
かつて“いちプレイヤー”として優秀であったマネジャーは、機能不全のループにはまっていることに気がつけない……。
本書はそういった、「組織課題」を人事側から解決しようとしている方にぜひ読んでいただきたい一冊だ。先行研究からの学びと、経験学習・リフレクション支援の分析、さらに成功事例・失敗事例が紹介されている。ここから、解決の糸口を探すエッセンスを得るだけでなく、その後に組織が陥りやすい状態まで、俯瞰して理解できる内容となっている。

【書籍基本情報】
書籍名:管理職コーチング論: 上司と部下の幸せな関係づくりのために
発売出版社:東京大学出版会
書籍発売日:2025年2月1日
『管理職コーチング論 上司と部下の幸せな関係づくりのために』永田 正樹(著)

▼内容紹介

管理職はいかにひとを育てればよいのか? 唯一無二の学術的解説【中原淳氏(立教大学経営学部教授)推薦】


管理職によるコーチングの実態解明
部下の能力をどうすれば伸ばせるのか。職場において管理職やマネジャーが部下の職務遂行をサポートする活動である管理職コーチングのプロセスを実証調査の定性的・定量的な分析から明らかにすることで、上司と部下のより良い関係構築のための方策を浮かび上がらせる。(出版社ホームページより)

▼目次

はじめに:上司と部下の幸せな関係づくりのために

●序章 管理職コーチング研究の課題と枠組み

●第Ⅰ部 管理職コーチング、経験学習・リフレクションに関する先行研究
第1章 管理職コーチングに関する先行研究
第2章 経験学習・リフレクションに関する理論

●第II部 経験学習・リフレクション支援に関する分析
第3章 経験学習・リフレクション支援の成功事例・失敗事例:定性分析1
第4章 部下育成能力の高いマネジャーの育成行動:定性分析2
第5章 管理職コーチングの効果:定量分析1
第6章 部下の性別による管理職コーチングの効果:定量分析2
第7章 結論:成果を生み出す管理職コーチング

おわりに

【永田 正樹(ながた まさき) 】

ビジネス・ブレークスルー大学大学院助教/立教大学経営学研究科リーダーシップ開発コース兼任講師/ダイヤモンド社HRソリューション事業室顧問。1962 年生まれ。1990 年ダイヤモンド社入社。2005年同社人材開発事業部部長。2015 年ダイヤモンド・ヒューマンリソース取締役兼任。2021 年北海道大学大学院経済学院現代経済経営専攻・博士課程修了。2022 年より現職。博士(経営学)。専門は人的資源管理。日本労務学会賞(研究奨励賞)受賞。主な論文に「部下育成のためのリフレクション支援:成功事例失敗事例の質的分析」(『人材育成研究』第16 巻1 号)、「リフレクションを中心とした経験学習支援:マネジャーによる部下育成行動の質的分析」(『日本労務学会誌』第21 巻6 号)ほか。
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