一般的な事務作業では「300ルクス以上の照度」が必要
「ルクス(lx)」とは、「その場所(面)に到達している光の量(照度)の単位」を言います。照明の明るさを示す単位で、光源によって照らされている面(机上面や床面など)に、どれだけに光が到達しているかを表す数値です。この数値が、「高いほど明るい状態」であることを表します。今回の照度基準の改正では、事務所で労働者が常時就業する室における作業面の照度基準が、「従来の3区分から2区分に変更」となっています。具体的には、「一般的な事務作業」については 300 ルクス以上、「付随的な事務作業」については 150 ルクス以上であることが求められるようになりました。
オフィス全体の部屋は明るくても、労働者のそれぞれの机の上や、オフィス家具・パーテーションなどで区切られているスペース、来客用の部屋、一時的に違う作業を行う部屋(例えば、コピー専用の部屋)など、実際に作業を行う面(手元)が暗くなっている場合は、基準を満たしていない可能性があります。現状の照度基準の数値を正確に把握して、整備しましょう。
再雇用制度の普及や、定年年齢の延長、定年制度の廃止などによる高年齢労働者の増加や、障がいのある方、外国人労働者の就労数の増加など、今回の改正には「多様な働き方」や「多様な労働者の増加」が背景にあると考えられます。これらの現状を把握すると、今回の改正で必要となった照度基準や職場環境の整備は、とても重要な取り組みだと言えるでしょう。
業務効率低下の原因に! 疲労の蓄積が軽視できない「眼精疲労」
パソコンやスマートフォン、タブレット端末が普及している現代社会では、眼精疲労を経験したことがある人が大半で、オフィスワークや事務作業に従事するほとんどの皆さんに心当たりがあると思います。労働者に対して、眼鏡やコンタクトレンズなどで視力を適正に矯正することを促した上で、職場の照度を適切な基準で整備することは大変重要です。適切な照度については、「一般的な事務作業」の 300 ルクス以上、「付随的な事務作業」の150 ルクス以上という基準を満たした上で、日本産業規格「JIS Z 9110」に規定する各種作業における推奨照度等を参照し、健康障害を防止するための照度基準を事業場ごとに検討の上、定めるようにしましょう。また、「眼を使う環境として適切でない場合」には、根本的な状況を改善する取り組みが必要です。下記に掲載していますが、「労働安全衛生法」、「事務所衛生基準規則」により、作業の場所や内容についての照度基準が決められています。
●ひどい頭痛や肩凝りに悩んでいる
●パソコン使用中に目の奥に痛みを感じる
●目がかすむ
●ドライアイが辛くなってきた
「単なる目の疲れ」の域を超えて、上記のような症状が顕著な場合は注意が必要です。労働者自身がメガネやコンタクトレンズなどで個別の視力の調整を図り、必要であれば専門医の受診をするほかに、企業側が「照度基準が適切な環境」、「作業時間や休憩の取り入れ方」といったことに注意して状況改善に努めましょう。
眼精疲労は、眼の症状だけではなく、頭痛、頸椎の痛み、吐き気、めまいなどの体の症状にも現れるため、業務のパフォーマンスも低下します。「パソコンの使い過ぎが原因だろう」などと軽く考えてしまいがちですが、中には白内障や緑内障などの眼の病気が潜んでいるケースがあるかもしれません。
また、脳疾患からの頭痛や、メンタル疾患などの心理的な要因が原因となる体調不良の重症な事例では、「文字を読むために不適切な姿勢を続けることによる上肢障害等」が疑われる場合もあります。眼精疲労の影響により、「なかなか症状が改善しない」、「疲労の蓄積を感じる」という場合には、早めの受診が肝要です。
今回の改正を機に、「職場環境における照度基準」の点検改善だけでなく、眼精疲労という健康管理面への取り組みを行い、より良い労務管理に繋げていきましょう。
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