株式会社マイナビは2025年2月13日に、「花粉症と仕事に関する調査」の結果を発表した。これは同年1月に実施されたインターネット調査で、企業を対象とした調査では849件、働く人(正社員)を対象にした個人調査では1368件の回答を集めた。調査結果から、日本では春と秋に症状が出ることで知られる「花粉症」が、労働生産性に与える深刻な影響が明らかになった。
花粉症による「生産性低下」に要注意…従業員が求める“花粉症対策”は? 企業の対策の遅れも浮き彫りに

「花粉症の有病率」は20代の7割。“若年層“ほど深刻な傾向に

環境省の「花粉症環境保健マニュアル2022(2022年3月改訂版)」によると、全国調査における花粉症の有病率は1998年が19.6%、2008年が29.8%、2019年には42.5%と、10年ごとにおよそ10%増加しているという。花粉症は「アレルギー疾患対策基本法(平成26年法律第98号)」においてアレルギー疾患の1つに定められており、厚生労働省でも予防行動に関する普及啓発を呼びかけている。

今回、株式会社マイナビが発表した調査結果によると、「花粉症である」と回答した人は全体の56.3%となった。この値を年代別に見ると、「20代」が68.1%、「30代」が59.6%、「40代」が51.3%、「50代」が49.9%となり、特に20代では約7割と高い割合を示した。
花粉症の有病率
続いて、「花粉症である」と回答した771人を対象に「花粉症がつらい時期」を質問すると、回答が最も多かったのが「4月」で73.3%、次いで「3月」が68.9%となった。春の花粉症は、3月~4月が最もつらい時期であることがうかがえる。他方、9月~11月にも小さなピークが見られ、秋にも一定数の人が花粉症の影響を受けていることが見て取れた。
花粉症がつらい時期

「仕事に支障が出る」は6割。“生産性低下”が顕著に

さらに、同社が「花粉症が仕事に与える影響」についても聞いたところ、「業務に支障が出る」と回答したのは、“花粉症である”とした正社員の約6割(59.7%)となった。

また、7割以上が「花粉症で仕事の生産性が下がる」(71.1%)と回答。特に20代では「生産性が下がる」と答えた人が78.1%と、他の年代より高い割合を示したことから、花粉症が若手社員のパフォーマンスに大きな影響を与えていることがわかった。

なお、「花粉症によって、どのような業務に支障が出ているか」を自由回答で具体的に聞いたところ、“デスクワーク”や“コミュニケーションをとる業務”が目立って多くなったという。集中力や注意力が求められる業務ほど影響が大きいことが伺える。
花粉症が仕事に与える影響

「企業が行う花粉症対策」と「従業員が求める花粉症対策」にギャップ

次に、企業側を対象に「花粉症対策の実施割合と実施内容」を調査したところ、「花粉症対策を実施している」と回答した企業は全体の57.5%と6割未満にとどまった。

具体的な対策内容としては、トップが「空気清浄機の設置など空調の整備」(53.1%)で、オフィス環境の整備が対策の中心となっていた。
企業の花粉症対策
同様に、従業員側にも「企業の花粉症対策として魅力的だと感じる対策」をたずねると、「花粉症手当(花粉症の診察代・薬代・マスク代)を支給している」が38.2%でトップだった。なお、先述の企業調査では「花粉症手当の支給(診察費・薬代・マスク代)」が26.8%と少数派だったことから、従業員のニーズ(希望)と、企業が実際に行う対策にはギャップがあることがわかった。
従業員の花粉症対策ニーズ
今回の調査結果からは、花粉症が労働生産性に与える影響や、企業の花粉症対策と従業員のニーズにズレがあることなどが示された。企業としては、従業員へのアンケート調査などを通じて実態を把握することで、より効果的な対策を行う余地があるといえるだろう。

「健康経営」の一環とも言える花粉症対策は、企業の生産性向上にも繋がるだろう。オフィス環境の改善だけでなく、例えば“柔軟な働き方”の観点で、通勤時の花粉曝露の軽減のためのリモートワーク容認といった対策も有効かもしれない。従業員の負担を軽減し、生産性向上に繋げることができる新たな対策がないか、いまいちど検討してみてはいかがだろうか。

出典:https://www.mynavi.jp/news/2025/02/post_46524.html

参考:花粉症環境保健マニュアル2022(2022年3月改訂版)―環境省(PDF)

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