株式会社給与アップ研究所は2024年12月9日、「賃上げと業務改善に関する実態調査」の結果を発表した。調査期間は2024年12月3日~6日で、年間1,000万円以上の採用費をかけている中小企業(従業員数300名未満)の経営者113人から回答を得ている。調査結果から、経営者における大幅な賃上げへのためらいやその理由、基本給の昇給実施状況などが明らかになった。
約7割の経営者が“大幅な賃上げ”にためらい…「業績」や「生産性」への懸念から、定期昇給の実施もおよそ半数に

7割に迫る経営者が「大幅な賃上げ」にためらいを感じている

時流に沿って、大手を中心に賃上げに踏み切る企業が散見された2024年。資本力において大手に及ばない中小企業にとって、賃上げの実施は容易に踏み切れるものではないだろう。そうした中小企業の経営者は、賃上げに対してどのような認識を持っているのだろうか。

はじめに給与アップ研究所は、経営者に対し「社員の大幅な賃上げを行うことにためらいや躊躇を感じるか」と尋ねた。その結果、「非常に感じている」が25.6%、「やや感じている」が42.5%となり、合計で68.1%と7割に迫る経営者が“大幅な賃上げへのためらい”を感じていることが分かった。
社員の大幅な賃上げを行うことにためらいや躊躇を感じるか

大幅な賃上げをためらう理由は「業績が安定しない」、「生産性に不安」など

そこで同社は、前問で「非常に感じている」もしくは「やや感じている」とした人に対し、「その理由」を尋ねた。すると、最多となったのは「業績が安定せず、固定費増加に踏み切れないから」で44.2%、以下は「社員の生産性に不安があるから」が37.7%、「業務効率化が進まず、人件費の余裕がないから」が36.4%で続いた。
大幅な賃上げをためらう理由

52.2%が「全社員の定期昇給実施」も、約2割は昇給を実施せず

続いて、「直近2年間での基本給の昇給実施状況」を尋ねたところ、「全社員対象に実施した(定期昇給)」が52.2%となり、半数以上が全社員を対象とした定期昇給を実施したことが分かった。また、「一部社員対象に実施した(査定昇給)」は25.7%となり、昇給を実施した企業は合計で77.9%と8割に迫った。一方、「実施していない」との回答も22.1%と2割を超えていた。
直近2年間での基本給の昇給実施状況

基本給の昇給をできない要因も「業績」や「生産性」、「業務効率化」など

最後に同社は、前問で「一部社員対象に実施した」もしくは「実施していない」とした人に対し、「基本給の定期昇給をできない理由」を尋ねた。その結果、「社員の生産性が上がらないため」が27.8%で最多となり、以下は「業績が安定しないため」が24.1%、「業務効率化が進まないため」が24.1%と続いた。

なお、先の質問での“大幅な賃上げへのためらい”の理由と照らし合わせると、同じく「業績」や「生産性」、「業務効率化」といった点での懸念が強い様子がうかがえる結果となった。

出典:https://www.salary-up.com/
基本給の定期昇給をできない理由
本調査から、7割に迫る経営者が“大幅な賃上げへのためらい”を感じていることが分かった。業績の不安定さや固定費増加への懸念が強いようだ。また、「定期昇給」については半数以上が実施していたものの、約2割は昇給自体を未実施であることが明らかになった。賃上げにおいても定期昇給においても、「業績」や「生産性」、「業務効率化」などの懸念から踏み切れない企業が多そうだ。今後も賃上げの必要性は高まっていくことが予測される中、2025年はどれだけの中小企業が賃上げに踏み切れるのだろうか。

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