「健康経営」の取り組みは企業にどんな効果をもたらすのか
「健康経営」とは、「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」を指します(※経済産業省HPより引用)。正確な内容とするために、以下でも経済産業省のホームページを引用して詳しく説明します。健康経営は、日本再興戦略、未来投資戦略に位置づけられた「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つです。
従業員の健康は、「生産性の向上」と「安定した雇用の継続」に必要な要素です。近年、「長時間労働の改善」、「過重労働対策」、「生活習慣病の予防」、「がん・その他の疾病と仕事の両立支援」、「ストレスチェック」、「メンタルヘルス対策」などに積極的に取り組む企業が増えてきました。企業による健康経営の取り組みとして、定期的な面談で従業員の健康状態を把握し、疾病や負傷の予防措置を講じるほか、福利厚生面でも健康診断のサポートや産業ヘルスケアを導入する傾向が高くなっています。
こうした取り組みの結果、あらゆる企業で「従業員のモチベーションアップ」、「心身の健康増進」、「業務の生産性の向上」、「離職率や休職率の低下」などが認められています。
例えば、筆者の把握しているものとして、スポーツジムの会費を支援する制度を導入した企業の事例があります。制度導入の結果、従業員からは「援助があることでジムに通いやすくなり、運動の機会が以前より多く得られている」、「コロナ禍で様々なストレスが蓄積されているが、体を動かす機会が増えることでリフレッシュ出来ている」、「体力の増進を実感している」など、前向きな感想が多かったようです。
こうした事例に加え、そのほかの企業でも、「心身の不調を訴える従業員の減少」、「従業員のモチベーションの向上」、「コミュニケーションの活性化」、「従業員の家族も使用可能な福利厚生システムを導入した結果、労使関係が更に良好な関係性に発展」などの効果が生じており、非常に良好な結果に繋がっています。
ただし、健康経営の取り組みや制度導入をしていく上で、企業側には「費用負担のクリア」という大きな課題があります。取り組みや制度の内容によっては大きな金額となり得ますので、トライアル的に少しずつ導入したり、従業員の感想・意見や実際の利用状況を参考に契約内容を見直しながら運用したりなど、計画的な導入が望まれます。
優良法人認定制度「ホワイト企業」と、中小企業にも広がる健康経営の取り組み
健康経営には、優良法人認定制度である「ホワイト企業」というものがあります。以下に、経済産業省ホームページの引用を元に解説します。健康経営に取り組む優良な法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的に評価を受けることができる環境を整備することを目標としています。
「健康経営優良法人」に認定されると、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的な評価を受けられます。
(※経済産業省HPより引用)
健康経営優良法人認定制度に関しては、以前は“大企業向け”というイメージがありました。しかし現在では、「中小規模法人部門」に上位500法人が「ブライト500」として認定されています。
各種顕彰制度を通じて、健康経営に取り組む法人を“見える化”していくことで、「企業が社会的な評価を受けることができる環境の構築」という目的とともに、取り組む企業と従業員双方の「モチベーションの向上」や「健康増進効果」に繋がっていることが分かります。
コロナ禍をきっかけに、中小企業では以前にも増して「従業員の健康や生活、人生のサポートを積極的に行おう」という取り組みへの関心が高まっています。その一例として、今の時期であれば、「インフルエンザの予防接種の費用を企業側が援助すること」が挙げられます。そのほかにも、「業務時間内に使用するマスクの費用援助」、「人間ドックの費用援助」なども取り組みやすい事例でしょう。
筆者は、“企業の経営資源”の中で一番重要かつ大切にしなければならないものは「人」であると考えています。“生涯現役社会”を構築するには、疾病の予防や日々の健康管理、健康増進、早期発見、適切な治療など、多様な取り組みが必要不可欠です。従業員が心身ともに健康であることは「従業員の幸せ」や「従業員を支える家族の幸せ」につながり、「従業員の健康と幸せ」は「企業の幸せ」にもなります。つまり、「健康経営」は企業の発展に不可欠な要素だと言えます。
企業も従業員も「お互いが健やかで幸せである様に」と願い、「健康経営」という視点から労務管理を検討・実施していくことが非常に大切だと、筆者は考えています。
※ 健康経営®は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
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