ハラスメント「被害者」への適正な配慮の措置のポイント
厚生労働省指針では事案の内容や状況に応じ、以下のような取組例を示しています。●被害者と行為者を引き離すための配置転換
●行為者の謝罪
●被害者の労働条件上の不利益の回復
●管理監督者又は事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応
●調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置 など
ポイント(1)「被害者の気持ち」に寄り添う
ハラスメントの被害状況に応じた、会社の行為者への指導・懲戒処分などが、必ずしも被害者にとって納得いくものになるとは限りません。事実関係を正確に確認した結果であっても、被害者が「行為者への処分が軽すぎる」などと思うことがあるかもしれません。だからといって、会社が一度下した判断を容易に変更するわけにもいかないでしょう。しかし、被害者がモヤモヤした気持ちを抱え、仕事へのモチベーションが低下すれば、会社の生産性にも大きな影響を及ぼすことになります。被害者は、ハラスメント被害を相談するために勇気を振り絞り、解決の過程においても不安な気持ちを抱えるものです。被害者自身が新たに前へ進むためには、職場の同僚やハラスメントの処分決定に直接関与していない相談窓口担当者などが被害者の気持ちに寄り添い、サポートすることが大切になります。
ポイント(2)「被害者の職場環境」を注視する
行為者が被害者に対してのみハラスメントをしていたのであれば、他の従業員にはまったく関係がないこともあります。その場合、他の従業員にとってみれば「行為者はとても良い人だったのに」、「被害者にも問題があるはず」などの思いを抱くことも考えられ、新たな問題に発展する可能性もあります。被害者と行為者を引き離す配置転換などの措置により「一件落着!」などと楽観視せず、解決後も被害者の職場環境を注意深く見守っていきましょう。新たな問題に発展するか否かを含め、被害者が所属する部署のマネジメントは、管理者にとって大きな負担となります。所属部署管理者にすべてを任せるのではなく、総務人事部署などと連携をとり、会社として常に現状を把握しておきましょう。
ハラスメント「行為者」への適正な措置のポイント
こちらも厚生労働省指針で示す取組例を確認します。●事案の内容や状況に応じ「被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助」、「被害者と行為者を引き離すための配置転換」、「行為者の謝罪」等の措置を講ずる
●調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置 など
ポイント(3)「行為者の仕事へのモチベーション」を高める
ハラスメントの事実があれば、行為者は会社の懲戒処分などを受け、深く反省をしなければなりません。一方で、必要な処分を受けたのであれば、それをいつまでも引きずることでモチベーションを低下させるのでなく、1人の従業員として全力で仕事へ取り組む責任があります。行為者がハラスメントを二度と起こさないよう最大限に留意する中で、どのような仕事・配置であればその能力を発揮することができるのかも併せて検討していきましょう。ポイント(4)「行為者自身が問題解決すること」を支える
行為者の中には、下記のようにハラスメント行為をなかなか克服できないケースも考えられるでしょう。●全力で仕事に取り組むことでストレスが溜まり、それを解消するための方法が身についていないため、無意識に周りの従業員へ強く当たってしまう。
●何が悪かったのかを行為者が十分に理解できないまま、また同じハラスメントを繰り返してしまう。
行為者なので全面的に援助をする対象ではありませんが、当事者でもある行為者がこれを克服できないのであれば、会社としても大きな不利益になります。行為者自身が新たに前へ進むためにも、産業保健スタッフなど専門家の協力を得ながら、会社として「行為者自身が問題解決すること」を支えましょう。
ポイント(5)「行為者とともに働く従業員」をフォローする
ポイント(3)(4)の内容は、行為者のためだけではなく、何より「行為者とともに働く従業員」のためでもあります。会社が必要な配慮をしなければ、一緒に働く従業員は大きな不安を感じ、行為者も周りの従業員の目を過剰に気にするといった悪循環が生まれる可能性もあるでしょう。行為者が所属する部署の管理者は、行為者への指導だけでなく、面談などの場面を通じて他の従業員の不安な気持ちにも寄り添うことで、「一人ひとりが働きやすい職場環境」をつくっていくことが大切です。総務人事などのハラスメント担当部署は、被害者・行為者への措置だけではなく「従業員の誰もが働きやすい職場環境」をつくるために必要な取り組みを考える必要があります。
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