経営者が課題視するポイントが偏っている場合、経営課題が慢性的に改善されないということがあります。特にワントップの経営者に多いのですが、自分が関心のある部署・業務・分野ばかりを見てしまっています。そこに課題解決の答えがあると信じて、見つけ出そうとしているのですが、その行動自体が誤りであることには気がついていません。
経営層が掲げるミッション・ビジョンと「現実」のギャップを埋めるためにも、経営課題を検知しやすい組織づくりを

「経営課題」を見つけ出したつもりになっていませんか?

経営課題の答えは、経営者が関心のないところに堂々と鎮座している

経営課題の答えは、経営者が関心のないところに堂々と鎮座している
経営者レベルの方が目を皿のようにして課題を探れば、すぐに何らかの課題は見つかり、解消されます。そして、もう組織の課題はないと早計し安心してしまうのです。しかし、実際のところはどうでしょうか?

実は、経営者が関心のないところ、興味のないところ、軽視しているところに、その会社の「根本的な課題」は残っています。経営者の多くは現場出身の方が多いので、現場の課題に目を向けるのは好きですが、管理系の課題には関心が薄いことが多いです。つまり、経営課題の多くは、「実は管理側にある」ということがほとんどなのです。

たとえば、営業出身の経営者が独立して、営業代行の会社を経営している場合を考えてみます。組織がまとまらない、業績も安定しないという経営課題の原因が、営業部門にあるということは私には考えにくいです。なぜなら社長は営業のプロなのですから、そこに粗があるわけがないのです。むしろ、「こんなところに原因が潜んでいるはずがない」というところにこそ経営課題はあるというのが筋です。予算管理がいい加減だったり、従業員が健康診断さえ受けさせてもらえない労働環境だったり……。管理が行き届いていない場所にこそ、深刻な課題が潜んでいるということは往々にしてあります。

経営に直結する「組織の問題」を明らかにするための2つの方法

一つめの簡単な方法は、「全部署、偏見なく、一通り全てチェックする」ことです。そうすれば課題は1回で見つかります。しかし、経営者に偏見があると、特定の部署ばかりを見てしまい、いつまでも解決の糸口に気づかないのです。まず、やるべきは「まさかこんなところに原因があるわけないでしょう」と軽視しているポイントを順番に書き出すことです。そして、軽視していたと思うところから担当者と一緒にチェックをしていけば、早晩、答えは見つかることでしょう。

二つめの方法は、体制をワントップ制ではなく、ツートップ制にするということです。例えば、「現場系の社長に管理系の副社長」や「管理系の社長に現場系の副社長」といった組み合わせが最適です。多くの会社を見てきて思うのは、ツートップ体制の会社は、組織課題に対応する仕組みが上手く網羅されているケースが多いということです。ただし、「現場系同士の社長と副社長」、「管理系同士の社長と副社長」というフォーメーションでは、良くありません。それは考えや視点が同じ人が何人集まったとしても、興味がないところも同じになってしまい、「抜け」がカバーできないことがあるからです。現場が「外」なら管理は「内」、現場が「売上・原価」なら管理は「販管費や資金繰り」、といったように、“現場系と管理系が一対”になることが重要です。

人間不信になるような組織にしないために

また、組織のトップに現場系と管理系がそれぞれいることで生まれる利点があります。それは、社員にとって「逃げ道」があるということです。現場系の経営者がワントップで営む会社で、経営者と現場のエース社員が仕事上の衝突をした場合、経営者が会社を去ることはできませんから、おのずと現場のエースが会社を去らざるを得ません。そもそもトラブルの間に入って二人を仲裁する人がいない組織だからです。もしその会社がツートップ体制で管理系のトップがもう一人いたら、「しがらみがない」分、仲裁に入ることができますし、双方の面子がつぶれないように和解できる段取りを組んでくれるはずです。

また、現場系の経営者に管理系の社員が悩みの相談をしたり、仕事上の提案をしたりした際に、軽くあしらわれてしまったり、管理系の仕事そのものを軽視されるような発言をされたりしてしまうこともあります。二度と相談したくないという気持ちになり、それをきっかけに転職した、というような話もよく聞きます。しかし、管理系のトップがいれば、実務自体がわかっていますので、そのような相談や提案にも的確に対応ができます。

「課題は見つかったときに解決すればいい」と机上では思うかもしれません。しかし、実際に社員の不正が発覚した組織などでは、お互いが人間不信になるなど、解決した後でも長らく尾を引いてしまうのが組織の現実です。課題は、早々に見つけて摘んでしまうことに越したことはありません。組織のためを思えば、「自分は何でも知っている」と過信しないことです。そして、「自分でも知らないこと、偏見、見落としがあるかもしれない」という考えや視点がこの厳しい時代を生き抜いていくためには必要です。
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