業務改善は圧倒的に社歴の若い会社のほうが有利です。なぜなら業務改善によって不利益を被る人が少ないからです。社歴のある会社の場合、「改善」によって、不利益を被る社員が一定数出てきて、“個人的な感情”で協力が得られにくいという点がネックになることが往々にしてあります。
若い会社のほうが「業務改善」がしやすい理由
業務改善と社歴の相関関係
反対に、社歴の若い会社を見ると、すんなり改善が進む傾向にあります。その理由は、そもそも業務内容や業務フローも流動的、発展段階です。そのため、組織の中でアンタッチャブルな「開かずの扉」のような部署や人はそれほどありません。
利権や利得というのは、組織の中で「固定したポジションを獲得する」と、発生してくるものです。そのため、社歴の若い会社では、社長が「明日から今までのやり方を反転します」と突然言っても、従来の方法で利権や利得を持っている人自体が多くありません。なぜ変更するのかについて納得できる理由や説明があれば、皆「わかりました」と、次の日からでもやり方を変えていけます。
若い会社は、創業時からクラウドサービスなどの安価でデジタル化されたツールを導入している会社も多く、業務改善といってもアナログからデジタルのような劇的な業務改善とはなりません。例えば、A社のクラウドソフトからもっと便利なB社のクラウドソフトに変える、といったレベルの改善が中心です。業務改善でフローが大きく変わって「特定の社員の仕事が奪われ、存在価値が失われる」ということも少ないでしょう。
思うように進まないのは「業務改善の目的」が伝わっていないから
一方で、社歴のある会社は、「特定の社員がずっと手書きで管理していた帳簿作業を、クラウドソフトに変えましょう」というような大きな改善になる場合など、改善しようとしても、その社員が「そうですか、わかりました」とはいかないこともあります。自分が逆に言われる立場になればわかりますが、いきなりそう言われたら、当人は「今の作業がなくなる、簡素化される、ということは、自分はクビになるかもしれない」と直感的に感じます。中には「自分のことをクビにしたいからそんな意地悪をしようと会社はしている」と思い込んでしまう人もいるかもしれません。そのため、業務改善をするとき、特に社歴のある会社では、「まず、皆さんがこの業務改善によってリストラなど、人員削減されることはありません」とはっきり宣言することが重要です。「業務が簡便化した分は、別の仕事をやってもらいます」と最初に伝えておけば、スムーズに進むでしょう。言われた方は、「クビを切られるわけじゃないんだ」、「よかった、また新しい仕事を進めていく効率化の一貫なのか」と、業務改善への理解が進みます。こういった前提の説明がないと、いくら業務改善の意義を伝えても頭の中は自分の進退のことで頭がいっぱいで、「とにかく反対」となることは非常に多く見られます。
ファミリー企業などで代替えした若い年齢の経営者や、中途入社した若い年齢の管理職が、社歴の長い社員や年上の社員の業務改善に着手するときにコミュニケーションがうまくいかないケースは多くあります。それはいきなり業務改善の内容だけを宣言してしまうからです。業務改善後のこともワンセットで伝えると、グッと聞き入れてもらいやすくなります。
お互いにストレスなく進めるために、目的を社内に浸透させる工夫を
新しい仕事を「先に」お願いして、やりこなすために現状の業務を改善をしましょうと伝えるのも良い方法だと思います。次のように、お互いのコミュニケーションを深めることで、業務改善の実行そのものは拒否されないはずです。上司:「新しい仕事をお願いしたいのですが」
部下:「いや、今の仕事で手一杯なので無理です」
上司:「そうですよね。良いソフトウェアを見つけたので導入して、手書きの仕事をデジタル化しませんか!?」
部下:「ITに詳しくないのですが、どなたかが手伝ってくれるのですか」
上司:「はい。一緒に進めていきましょう」
部下:「いや、今の仕事で手一杯なので無理です」
上司:「そうですよね。良いソフトウェアを見つけたので導入して、手書きの仕事をデジタル化しませんか!?」
部下:「ITに詳しくないのですが、どなたかが手伝ってくれるのですか」
上司:「はい。一緒に進めていきましょう」
業務改善をしたい側は、やる気に満ちている分、勇み足にもなりがちです。誰がどう見ても良いことしかないような「業務改善案」をベテラン社員に反対、拒絶されたときなど……。思わず、「あなたたちみたいな人がいるから業務改善ができないのですよ」と、必要のない言葉をつい口走って、余計にこじれてしまうようなことは避けたいものです。
そのためにも、必ず円滑に進むプロセスを築くようにしましょう。業務改善で果たしたい目的を伝える場合には、相手側の気持ちに立って、「改善で地位が危うくなることはない旨」と「新たな仕事をお願いしたい旨」をワンセットで伝えることを意識すると良いと思います。
- 1