株式会社PE-BANKは2024年10月24日、ITフリーランスエンジニアを対象に実施した「フリーランス新法に関する実態調査」の結果を発表した。調査は、2024年10月10日~18日に実施され、計360名から回答を得ている。調査結果から、フリーランス新法の認知度や理解度、取引先とのトラブル経験などが明らかになった。

2024年11月1日施行「フリーランス新法」を約7割のフリーランスエンジニアが未認知。公正な取引のために企業ができることは?

約6割が「取引先とのトラブル」を経験。契約書を取り交わしていない人も

フリーランス人材を保護する「フリーランス新法」が、2024年11月1日から施行される。この新法は、フリーランスに対する取引条件の明示義務などを定めるもので、金銭報酬やハラスメントなどのトラブルを未然に防ぐことを目的としており、フリーランスに仕事を発注する企業側も対応を迫られる。

総務省が2022年に実施した基幹統計調査では、フリーランス人口は257万人(副業含む)いるとされているが、実際に企業とフリーランス人材の取引におけるトラブルはどの程度あるのだろうか。本記事では、株式会社PE-BANKがITエンジニアを対象に実施した最新調査の結果を紹介する。

まず、同社が「取引先が原因でトラブルが起きた経験があるか」を尋ねると、「よくある」が11.7%、「たまにある」が47.2%となり、合計すると58.9%の人がトラブルの経験を持っていることが明らかとなった。
取引先とのトラブルの有無
さらに、同社が「取引先と契約書を取り交わしているか」を質問したところ、「必ず取り交わしている」は28.1%と、全体のわずか3割未満であることが判明した。
取引先と契約書を取り交わしているか

報酬の支払い遅延や不払いなど“金銭的なトラブル”が多い傾向

次に、同社は「取引先が原因でトラブルが起きた経験がある」と回答した人を対象に、「どのようなトラブルを経験したか」を尋ねた。すると、最多となったのが「報酬の支払い遅延や不払い」(49.1%)で半数近くとなった。また、上位には「不当な減額交渉」(40.4%)、「追加修正の無償対応」(31.6%)が続き、全体的に金銭的なトラブルが多い傾向がうかがえた。
どのようなトラブルを経験したか

約7割が「フリーランス新法」を認知せず

次に、全体に対して「フリーランス新法について知っているか」と質問したところ、「あまり知らない」が32.8%、「全く知らない」が36.9%となり、フリーランス新法について認知していない人は合計69.7%と7割近くになった。新法の施行目前の調査ながら、依然としてフリーランスで働く人の周知が不十分であることが見て取れる結果となっていた。
フリーランス新法の認知度

3人に1人が「新法が施行されても改善は期待できない」と感じている

さらに、同社は「フリーランス新法について知っている」と回答した人に、「フリーランス新法施行により、発注者とトラブルなくより円滑な取引ができるようになると思うか」と聞いた。その結果は、「あまりそう思わない」が28.4%、「全く思わない」が6.4%と、回答者のうち3人に1人(34.8%)は“新法が施行されても、取引は改善されないと思う”と感じていることがあきらかとなった。
新法施行への期待度

「新法が施行されても処遇が改善されない」と感じている理由は?

最後に「何故改善されないと思うのか」を尋ねている。その結果、理由のトップ2にあげられたのは、「新法で定められても立場が弱く、不当性を感じても取引先に打診できるか不安」(57.9%)と「企業側が新法について理解浸透するのかが不安」(47.4%)だった。
改善されないと思う理由
今回の調査結果では、「フリーランス人材と企業間の取引では金銭トラブルが多い」という課題とともに、フリーランス自身が現時点では新法施行に十分な期待を持っていないことが明らかとなった。また、中にはずさんな対応をしている企業もあることがうかがえる結果となっていた。今回のフリーランス新法の施行を機に、改めて企業側も現状の取引慣行を見直す機会を持つなど、公正で透明性の高い関係を構築できているかチェックしておきたい。

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