「つながらない権利」とは? 海外で進む法整備
「つながらない権利」とは、「従業員が勤務時間外に、仕事上の電話・メールなど一切の連絡を拒否できる権利」のことをいいます。「つながらない権利」については、海外で先行して議論されていますが、日本でも同様のことが“労使トラブルの原因”として注目を集めています。各国の「つながらない権利」に関する動きは以下のような例があげられます。この「つながらない権利」は、企業に対して勤務時間外の従業員へのメールの送信などを禁止するものではなく、あくまで「従業員がその対応を拒否すること」を保障するものです。法律の施行時点では、罰則規定などは設けられていないものの、「つながらない権利」を侵害された場合、従業員は訴訟を起こすこともできます。働き方の変化によって、仕事のオンとオフの境界線が曖昧になってしまうことへの懸念から、このような法律が制定されたという背景があります。
勤務時間外に「業務に関する連絡」があったときの対応は
株式会社NTTデータ経営研究所が2021年3月に行った調査では、従業員10名以上の企業における経営者・役員を含む雇用者に対して「就業時間外の緊急性のない業務連絡への対応」について尋ねた結果、「対応したいと思う」が18.6%、「対応するのはやむを得ないと思う」が46.7%でした。就業時間外の業務連絡に対する考え方(引用元:株式会社NTTデータ経営研究所「新型コロナウイルス感染症と働き方改革に関する調査」)
「つながらない権利」を侵害するのは、上司の立場にある人や取引先の人である場合が多いです。上司の立場にある人が、部下に対して勤務時間外に連絡をしなければ、「つながらない権利」の侵害は起きづらくなりますので、管理職への教育・研修を行うのがよいでしょう。取引先からの勤務時間外の連絡については、取引の契約内容を明確にしておくことや、勤務時間外につながる必要のない体制を作ることが求められるでしょう。
仮に企業側が、「勤務時間外も電話に出ること」、「勤務時間外もチャット・メールに1時間以内に返信すること」などのルールを定め、つながり続けることを求めた場合、その時間がすべて「労働時間」となる可能性があります。「労働時間」とは、「企業の指揮命令下にある時間」であるとされます。つながり続けた場合に従業員に発生する“労働から解放されていない待機時間”を「手待ち時間」といい、これが「労働時間」と判断されるのです。
「労働時間」が「1日8時間、1週間に40時間」を超えると、企業は従業員に対して残業代を支払わなければなりません。明確な社内ルールや指示によって「つながる」ことを強要していなくても、「つながり続けている」ことを企業側が理解していながら放置した場合も、「黙認」したものとして「手待ち時間」は「労働時間」と判断されます。
このように、労働時間が長くなることで「安全配慮義務違反」にもなりますので、企業としては「つながらない権利」を尊重する方針を明確に表明し、勤務時間外は業務端末を強制的にシャットダウンするなど、つながらない環境を整備することが有効です。
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