株式会社オリィ研究所と障害者雇用ドットコムが2024年10月17日、東京・中央区の「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」で「障害者雇用の今と未来:分身ロボットカフェで学ぶ実践事例と最前線」と銘打ったイベントを開催した。同イベントでは、テクノロジーを活用した画期的なテレワークの事例が紹介され、障がい者雇用の新たな可能性が示された。
“分身ロボット”が切り拓く障がい者雇用の未来――テレワークの新たな選択肢に

障がい者雇用に新たな選択肢を示す分身ロボット「OriHime」とは

「人類の孤独の解消」を理念に掲げる株式会社オリィ研究所は、障がい者や外出困難な方々が社会参加するための分身ロボットの開発・提供を手掛けている。「OriHime」と名付けられたその分身ロボットは、どこにいてもスマホやPCからインターネットを通して遠隔操作できる。同社の代表取締役社長CEO 笹山 正浩 氏は「障害を持った方、移動や外出が困難な方々の選択肢を豊かにしていきたい」とポリシーとOriHime開発の想いを語っている。
株式会社オリィ研究所の代表取締役社長CEO 笹山 正浩 氏

株式会社オリィ研究所の代表取締役社長CEO 笹山正浩氏

この日のイベントが開催された会場である「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」もオリィ研究所が運営しているもので、全国各地100名近くのパイロットと呼ばれる従業員がロボットを遠隔操作し、注文をとったり、商品を運んだりして働いている。
“分身ロボット”が切り拓く障がい者雇用の未来――テレワークの新たな選択肢に

資料:株式会社オリィ研究所

分身ロボットの”最大の役割”

そうした分身ロボットの”最大の役割”と言えるのが、移動や外出が困難な障がい者の就労ハードルを格段に下げることだ。

分身ロボットカフェ DAWN ver.βのパイロットの方が接客として働いたことをきっかけに仕事に対するモチベーションを高め、OriHimeを活用する他の事業所(薬局やレストラン、病院の受付など)で就労したり、テレワークを導入する企業に就職したりと、活躍の幅を徐々に広げているのだそうだ。
“分身ロボット”が切り拓く障がい者雇用の未来――テレワークの新たな選択肢に

資料:株式会社オリィ研究所

オリィ研究所 人材事業部の中島 瑛美 氏によれば、同社が手掛ける障害者人材紹介サービス「FLEMEE」では実際にOriHimeのパイロットを経て活躍している従業員がいるという。「障がい当事者として働き方への課題感を強く持っていたところから、人材紹介の運営側に回り、他の方のキャリアを作っていくために、営業やキャリアアドバイザーとして支えてくれている」のだそうだ。

同社のマネージャー 高垣内 文也氏は「障がいのある方々が新規に働き始める、あるいは後天的に障害を負ってしまった方々がリワークしていくためのハードルを下げる製品だと思っている。OriHimeで働くことによって経験や自信をつけて、小さな成功体験の積み重ねをしていただいて、より長時間の就労やOriHime以外の仕事をしていくためのきっかけになる事例が多く見られている」という。
“分身ロボット”が切り拓く障がい者雇用の未来――テレワークの新たな選択肢に

(左)株式会社オリィ研究所 マネージャー 高垣内文也氏、(右)株式会社オリィ研究所 人材事業部の中島瑛美氏

障がい者の法定雇用率が上がり続ける中で大事な考え方

今年4月に2.5%となった障がい者の法定雇用率は、令和8年7月からは2.7%にまで引き上げられる。さらに、障がい者雇用の対象は従業員37.5人以上の事業所へと拡大する。そこで、障害者雇用ドットコムの松井 優子 氏は「障害者雇用率が上がり続ける中で、障がい者の業務を“できる仕事”という視点からは新しく創出することができない」と強調。「単に法定雇用率達成を重視するのではなく、障がい者の方を人材としてどう位置付けるか、“できる仕事”を切り出すのではなく、自社の強みと照らし合わせて、どんな業務で活躍してもらえるのかを考えていく必要がある」と話した。
“分身ロボット”が切り拓く障がい者雇用の未来――テレワークの新たな選択肢に

障害者雇用ドットコム 松井優子氏

また、松井氏は「障がい者雇用がうまくいっていないのであれば、何を変えていかなければいけない。“障がい者雇用とはこうあるべき”という思い込みを一度置いて、新しい取り組みを考えることが大事」と語る。その意味で、分身ロボットの活用は新たな選択肢を示すものになるだろう。
“分身ロボット”が切り拓く障がい者雇用の未来――テレワークの新たな選択肢に

資料:障害者雇用ドットコム


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