パーソルダイバース株式会社は、2024年8月に「企業の障害者雇用方針の変化と展望に関する調査結果」を発表した。本結果は、全国の企業を対象に2024年7月3日~7月11日に実施された調査における、調査時点で障がい者を雇用する企業の人事担当者178名の回答をまとめたものとなる。これにより、2024年時点の法定雇用率の状況や2026年の引き上げに向けた企業の考えが明らかとなった。
2026年7月【法定雇用率2.7%】引き上げへ。6割が“達成困難”とするも「障がい者人材の戦力化」を見据える動きは活発化

障がい者を雇用する企業の5割が「法定雇用率2.5%」を達成

常用労働者に占める障がい者の雇用割合を定めた基準「法定雇用率」は、2024年4月に2.5%(事業区分:民間企業の場合)に引き上げられた。そして2026年7月には、2.7%(同)に引き上げられる予定だ。厚生労働省が民間企業に求める基準を達成するには、持続可能な方針立てや人材戦略が必要だが、どのような準備が進められているのだろうか?

本調査における「障がい者雇用率(法定雇用率)の調査時の達成状況結果」を見ると、「(2.5%以上を)達成している」と答えたのは計52.2%と、半数をやや上回っていた。
障がい者雇用率(法定雇用率)の調査時の達成状況
さらに、現在の達成状態を問わず全員に「今後の引き上げ予定である、法定雇用率2.7%への対応見込み」を尋ねると、57.9%が「達成は困難」と答えた。

今後の引き上げ予定である、法定雇用率2.7%への対応見込み

今後の方針として4社に1社が“障がい者人材の戦力化=収益貢献”を見据えている

次に、同社は“障がい者を採用する際に重視する方針”について、現在と今後に分けて尋ねた。すると、「現在最も重視している方針」のトップに挙げられたのは「法令遵守の範囲内で雇用する」で、70.8%と突出。次点以降は「自社やグループ会社のユーティリティ業務で貢献して貰う」(12.9%)、「自社の収益業務に貢献して貰う」(11.8%)で、大きく数字を下げて続いた。一方、「今後重視したい方針」を問うと、第1位は「法令遵守の範囲内で雇用する」で“現在”と同内容だが、その割合は50.6%と20ポイント以上数値を下げた。また、次点の「自社の収益業務に貢献して貰うため」は25.3%で、“現在”の11.8%と比べ2倍以上多い回答を集めた。将来的に、4社に1社(25.3%)は「障がい者の収益貢献(人材戦力化)」を見据えた方針に転換していく意向であることがうかがえる。
障がい者を採用する際に重視する方針

障がい者雇用企業の6割が「DEI施策」と連動させている

2割強が将来の方針転換を考えているという結果をさらに掘り下げるべく、同社は「DEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)施策と障がい者雇用方針の関連性」についても質問している。「DEI施策と障がい者雇用施策が連動しているか」を尋ねると、「連動している」が38.2%、「一部連動している」が20.8%で、あわせて過半数の6割が「両者が連動している」と答えた。一方で、「障害者雇用施策はあるが、DEI施策はない」は18.5%と、2割程度だとわかる。
DEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)施策と障がい者雇用方針の関連性
今回の調査結果によると、障がい者を雇用する企業の半数が「法定雇用率2.5%」を達成しているが、「2026年の引き上げ予定」への即時対応は約6割が困難だと感じていることが明らかになった。しかし、将来の障がい者雇用方針(意向)については、一定数が人材戦略を変化させることを視野に入れている様子が垣間見えた。この兆しについて、調査主体のパーソルダイバース社は「単なる法定雇用率達成から、企業成長に寄与する人材確保として捉え直す視点の転換が進んでいるのではないか」との見解を述べている。多様性を受容した企業経営が問われるようになった今、障がい者雇用を含めた人材戦略を検討する手がかりとして本調査結果はおおいに参考になるだろう。


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