ネガティブ思考の社員から新入社員を守るフレーズとは
中途入社の社員はまだ社会人経験があるので、おかしいなと思えば自分で距離をとることもできますが、新入社員の場合はそれができません。そのため、このようなことで人間関係に悩んでしまう新入社員もいます。特に在宅勤務など、一部リモートでコミュニケーションを行っているような場合は、出社している時と違い、社員の全てのコミュニケーションを見守ることが物理的にできなくなります。総務人事部が把握しないうちに、新入社員が人知れずそのような悩みを抱えてしまう可能性もあるのです。
このようなことを防ぐためには、コミュニケーションを監視するのではなく、新入社員や中途入社の社員に、自ら判断し、防御すべきものは防御してもらう以外にはありません。もし新入社員などが他の社員から会社に対してネガティブなことを話しかけられたり、それに対して同意を求められたりした場合に、どのようにかわせばよいか、そして対処をすればいいか、ということを事前に教えておくということも大切です。
たとえばネガティブ発言に巻き込まれないように、次のようなフレーズをすぐ出せるように練習しておくように新入社員に伝えるのも一考です。
・「わかりました。参考にします」
・「どうでしょう……。ちょっと考えてみます」
・「なるほどぉ……」、「そうなんですか……」(うんうん、と一人の世界に入るように斜め上を見る感じで)
・「あぁ……」、「うーん……」(黙り込む)
・「あ、そういえば……」(全く違う話に変える)
ネガティブ社員の話を聞いている時に、一番してはいけない反応は「肯定」、「同意」の言葉を自分が言ってしまうことです。
「うちの会社って、給料安すぎじゃない?役員がもらってる分を少し減らして新入社員にまわすべきだと自分は思うけど、そう思わない?」
このように聞かれて、「本当ですね」、「給料安いですよね」などと言ったら最後、その発言を利用されてしまいます。
ネガティブ社員が経営者や上司などに不平不満を言う時に「皆もそう言っています」、「皆もそう思っています」とよく言います。「具体的に誰?」と聞き返すと、そのような人はいないことがほとんどですが、実際にそそのかされて口にしてしまうと、「新入社員の○○さんも、そう思うと言っていました。若い人は皆そう思っているんですよ」などと自分の知らないところで勝手に発言を利用されてしまうのです。
しかし、新入社員が年長者の社員の発言に「それは違うと思います」、「先輩が気にされ過ぎじゃないですか」など、否定的な反応をすると、ネガティブ社員の怒りの矛先は、今度は新入社員に向かっていきます。「あ、そう。わかった」と、それ以降、一切声もかけてくれなくなり、新入社員は傷つきショックを受けます。
ネガティブ社員のマネジメントの難しいところは、その人なりの「正義」があり、理論上はつじつまも合っていることが多い点です。ただ現実の会社経営というものは、理論上その通りにいかないことが多いので、しばしば「あるべき論」と「現実の経営」の乖離でこのようなコミュニケーション齟齬が起きます。そしてネガティブ発言を職場でする人は、ご自身が置かれている立場や評価に満足していない場合もあります。そのため、短期間で説得してネガティブ思考を変えてもらうということは現実には難しく、誤解を解いて関係改善をするにはある程度の時間が必要になります。そのため、こうした職場のネガティブ発言に対しては、「受け手側が上手にかわす」ことも必要になるのです。
ポジティブな社員と会社の利益を守るための具体的なアクション
たとえば、「わかりました。参考にします」と言えば、相手はそれ以上話をしませんし、「自分の言ったことは通じた」と思い、解放してくれます。そして後から上司や経営者から、「会社への批判に同意していたの?」と聞かれても、「いえ、『わかりました。参考にします』と言っただけです」と言えば、誤解を受けずに済みます。また、「社長の考え方間違ってるよね。どう思う?」というような、返答を求められるようなケースは、「どうでしょう……ちょっと考えてみます」と伝えることでその場での返答は一旦逃れられます。ほとんどの場合はその後「それで答えが出た?」などとは聞いてきませんが、もししつこく聞いてきたら「ちょっと自分には難しい問題です」と言い切ってしまいましょう。
そして、聞くに堪えない悪口レベルの内容を言われて同意を求められた場合は、「そうなんですね……」、「なるほどぉ……」、「ああ……」、「うーん……」など、少し天井を見上げたり、自問自答するような演技をしたりして、それ以上は何も発話せず、意図的に沈黙を作ります。それで相手が沈黙に耐えられなくて話を終わらせるか、別の話になるまでじっと待ち続けます。
攻めの対処法として、いやな話の流れになってきたなと思ったら「あ、そういえば」と、話を自分から突然切り替えて喋り倒してしまう、という方法もあります。相手の趣味なども事前に確認できれば「あ、そういえば昨日の大リーグの試合すごかったですね、あの○○選手などは……」など、ネガティブ社員がポジティブになる話に変えてしまいます。
このようなことは、若かりし頃を忘れてしまった世代からすると、実にくだらないことのように思えるかもしれませんが、これは会社においても大切なことです。
ネガティブな人は、コロナ禍で「新業態を試してみよう!」と会社が士気を上げて試行錯誤をしている時にも「どうせうまくいくわけがない」、「もう手遅れ」と斜に構えて冷水を浴びせてしまいます。仮に皆そうかもしれないと思っても可能性を求めてやるのが「仕事」であり、「会社」です。その先にしか利益はないからです。ある経営者の方が「コロナ禍ではご意見番は必要ない」とおっしゃっていましたが、批評家やご意見番より、ポジティブ思考のプレーヤー、コーチ、監督、そして応援してくれるサポーターがコロナ禍を乗り切るには必要です。
「悪貨は良貨を駆逐する」という言葉がありますが、「ネガティブ社員はポジティブ社員と利益を駆逐する」ということが当てはまります。総務人事部の方達は、「ネガティブ事象からの身の守り方」を、社員研修などを通じて社員一人ひとりが自分の力で防御できるようにサポートしていただきたいと思います。そしてネガティブ社員にも「そんなこと言わないで」と取り込んで、全員がポジティブ思考になるように、バックヤードのメンバーはできるだけポジティブな状態を維持していきたいものです。
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